
食事介助中にむせると、「もっと細かくした方が安全かもしれない」と考えたくなります。事故を起こしたくないうえ、結果だけを見て介助者の責任を問われる職場では、刻み食や強いとろみが分かりやすい逃げ道に見えるからです。
ところが、ミキサー食と強いとろみで、飲み込んだことを確かめながら介助しても、むせや痰がらみが続く場面があります。苦労して慎重に介助したほど、「まだ自分のやり方が悪いのか」と迷い、次の食事介助が怖くなることもあります。
こうした経験から見えてくるのは、食形態の名前だけでは答えが出ないということです。全部を見続けるのが難しい日でも、むせた食品と時点、口の中の残り、食事後半の変化を一つずつ残せば、独断の変更ではなく専門職へ渡せる情報になります。
この記事を読むと分かること
- 刻み食の見方
- むせ以外の観察
- 記録に残す項目
- 変更を急がない理由
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
むせたら刻み食で大丈夫?まず食形態名より食べ方を見る

現場では、むせを見た直後ほど「次から刻み食にしよう」と急ぎたくなります。事故を避けたい気持ちが強いほど、何も変えない選択は怖く感じるものです。
むせたからと刻み食へ即変更せず、できあがった物性と食事中の変化を観察し、その記録を専門職へつなぐことが大切です。ここでは、食形態名に頼り切らず、次の一食で何を見るかを整理します。
すでにミキサー食や強いとろみを使い、一口ごとに飲み込みを待っても、むせや痰がらみが続くケースがあります。そこで介助者だけを責めると、怖さから食事量を控えたり、食事介助そのものを避けたくなったりします。必要なのは、正解を一人で背負うことではなく、食事終了時に「何を、いつ、どう食べたか」を事実として残すことです。
刻み食という名前だけで安全とは決めない
刻み食の利用者に重大な事故が起きると、「細かくしてあったのに、なぜ」と立ち尽くすことがあります。事故後は、さらに細かくするしかないように感じますが、そこで一度、呼び方と実物を分けて考える必要があります。
刻み食やミキサー食は、どのように調理したかを表す呼称です。同じ呼び方でも、やわらかさや、あんのとろみ、口の中でのまとまり方は同じとは限りません。細かさだけを安全の目印にせず、できあがった食べ物を利用者がどう処理しているかを見ることが、見直しの出発点です。
出典・根拠を確認
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
12.刻み食にあんかけしたものは,どの段階に入りますか? 十分にやわらかいものを小さく刻んだりほぐしたりしたものに,中間のとろみあるいは濃いとろみ程度のあんをかけたものは,コード3あるいは4に該当します.コード2―2には該当しません.刻んだものが舌と口蓋で押しつぶすことができるものはコード3,上下の歯槽堤間で押しつぶすことができるものはコード4です.なお,刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶすことができないほどかたいものや,あんのとろみの程度が薄すぎるものは,嚥下調整食としては適切ではありません.本来,「刻み」や「ミキサー」という呼称は,調理手技に過ぎません.あくまでも,できあがったものの物性で判断すべきであると考えています.
- むせがあっても、食形態だけで結論を出さず、声や呼吸、食べ方など別の変化も一緒に見ると次の観察点を整理しやすくなります。
- 詳しくは、食事中のむせ判断で迷う介護士へ 見るポイント整理で確認できます。
むせの前後を一つの記録にする

食事開始時は落ち着いていても、後半になると姿勢が崩れ、口の動きが遅くなる場面があります。「むせあり」だけでは、その前に何が変わったのかが次の担当者へ伝わりません。観察項目を増やしすぎず、前後関係を残すことが重要です。
食形態の検討では、むせだけでなく、食事に要した時間、疲労、口腔内残留、湿性嗄声、咀嚼の様子なども観察されています。介護士が診断するのではありません。むせた食品・時点と、その前後で見えた変化を組にして記録すると、専門職が食形態を検討する材料になります。
出典・根拠を確認
厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)研究班嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/R1_Report.pdf
食事形態のレベルアップ(またはダウン)の判断は,推奨食事形態の判断に用いた項目に加え,食事に要する時間,疲労度,口腔内残留,湿性嗄声,咀嚼の様子などにより食形態が適正かを判断していた.また,食への意欲・興味・関心,嗜好,喫食率,総摂取カロリーなど摂食行動全般と栄養に関する評価も高率に行われており,きめ細やかな観察が実施されていた.これらの評価は評価者の主観による判断であり個々の経験に委ねられている部分が大きい.経験によらず推奨食事形態を決定でき,その後の安全性を評価する方法の確立が求められる.
- 何割食べたかだけでなく、むせた時点や姿勢、食品、水分などを絞って残すと、次の食事で比較できる情報になります。
- 詳しくは、ミールラウンドがうまくいかない原因|食事量だけ記録して終わる現場の落とし穴で確認できます。
変更案は観察情報と一緒に専門職へ渡す
むせるたびに「今日の介助者は誰だったか」と聞かれる現場では、記録が責任確認のために感じられます。その空気が強いほど、介護士は失敗を隠したいのではなく、次の一口を入れること自体が怖くなります。
食事観察の実務資料では、食事時間、むせ、口腔内残渣など複数項目を見て、観察内容を記録に残す流れが示されています。「刻みへ変更してください」ではなく、「この食品で、この時点から、この変化があった」と伝えれば、介護士一人の結論ではなく、必要な職種が検討できる情報になります。
出典・根拠を確認
一般社団法人 日本健康・栄養システム学会令和3年度介護報酬改定対応:介護サービスにおける栄養ケア・マネジメントの実務の手引き(初版)
STEP1;「食事形態は適切か」の視点で ① 食事時間30分程度 ② 食事前後のバイタルサイン(脈拍・血圧・呼吸・体温・意識レベル)が安定 ③ 75%以上摂取できる ④ むせがない,飲み込みがスムーズ ⑤ 発熱,痰の増加など呼吸器感染所見がない ⑥ 口腔内に食物残渣がない この6つの項目により,現在の食事形態は適切か,食事形態のレベルを下げた方がよいのか,または段階的に食事形態を上げられるのかを観察します.観察した内容は必ず記録に残すようにします.
- 介護職が見た変化を一人の判断で終わらせず、口腔・嚥下、姿勢、環境など複数の視点から共有すると検討材料をそろえやすくなります。
- 詳しくは、【嚥下評価】ミールラウンドの目的と観察ポイントを整理する(多職種の意見交換)で確認できます。
刻み食という名前を答えにせず、実物の物性と食事中の変化を見ます。次の一食では、むせた食品・時点・前後の変化を一組で記録し、独断で変えずに専門職へ渡しましょう。
むせと刻み食で起こるよくある事例

現場では、むせを目の前にした直後ほど「何か変えなければ」と焦ります。人手が限られ、一人を見続けられない時間帯では、刻み食という名前を安全の目印にしたくなることもあります。
ある利用者にはミキサー食と強いとろみが付き、介助者も一口ごとに飲み込みを待っていました。それでもむせや痰がらみが続くと、原因を探す前に「誰が介助したか」が問われ、職員は食事量を控えるほど追い詰められます。こうした場面ほど、食形態名や介助者一人に答えを集めず、食事中に起きた事実を切り分ける必要があります。
むせた直後に「とりあえず刻み食」となる
普通食を一口食べた直後にむせると、その場の怖さから「次から刻みへ」と決めたくなります。何も対策しないと思われることも不安です。しかし、変更の早さより、むせた食品と実物の状態を残す方が、次の検討につながります。
困りごとは、むせという結果だけで変更を迫られることです。よくある誤解は、刻めば同じ食べ物が一律に飲み込みやすくなるという考え方です。刻みやミキサーは調理手技なので、まず、かたさ、やわらかさ、まとまり、あんの状態を確認します。介護士は食事終了時に、むせた献立名と時点、口の中の残りを記録し、次の提供前に専門職へ伝えます。
出典・根拠を確認
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
12.刻み食にあんかけしたものは,どの段階に入りますか? 十分にやわらかいものを小さく刻んだりほぐしたりしたものに,中間のとろみあるいは濃いとろみ程度のあんをかけたものは,コード3あるいは4に該当します.コード2―2には該当しません.刻んだものが舌と口蓋で押しつぶすことができるものはコード3,上下の歯槽堤間で押しつぶすことができるものはコード4です.なお,刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶすことができないほどかたいものや,あんのとろみの程度が薄すぎるものは,嚥下調整食としては適切ではありません.本来,「刻み」や「ミキサー」という呼称は,調理手技に過ぎません.あくまでも,できあがったものの物性で判断すべきであると考えています.
- 一度のむせだけで食形態を決めず、食べこぼしや口腔内残留など口まわりの変化も合わせて見ると、観察の幅を広げられます。
- 詳しくは、介護で見逃すな「むせ」|オーラルフレイルの危険サインと対応方法で確認できます。
ミキサー食と強いとろみでもむせが続く

食形態を下げ、とろみを強くし、ゆっくり介助しても、痰がらみやむせが続くことがあります。「これ以上何を変えればよいのか」と迷い、また責められる怖さから食事を早めに終えたくなる場面です。
困りごとは、対策を重ねても問題が消えず、介助方法だけに原因があるように見えることです。食形態を下げれば必ず落ち着くという思い込みを外し、食事にかかった時間、疲労、口腔内残留、湿性嗄声、咀嚼の様子を見ます。介護士は一度に全部を評価せず、前半と後半で変わった項目を一つ記録して、必要な職種へ渡します。
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厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)研究班嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/R1_Report.pdf
食事形態のレベルアップ(またはダウン)の判断は,推奨食事形態の判断に用いた項目に加え,食事に要する時間,疲労度,口腔内残留,湿性嗄声,咀嚼の様子などにより食形態が適正かを判断していた.また,食への意欲・興味・関心,嗜好,喫食率,総摂取カロリーなど摂食行動全般と栄養に関する評価も高率に行われており,きめ細やかな観察が実施されていた.これらの評価は評価者の主観による判断であり個々の経験に委ねられている部分が大きい.経験によらず推奨食事形態を決定でき,その後の安全性を評価する方法の確立が求められる.
- 食形態を変えても不安が残るときは、名称だけでなく、実際の硬さやまとまり、食べたときの反応から見直す考え方があります。
- 詳しくは、お茶ゼリーは安全?介護現場で迷う見方と判断のポイントで確認できます。
刻み食なら見守りを減らせると思ってしまう
少人数で複数の利用者を見ながら食事介助をすると、一人の口元をずっと追うのは困難です。刻み食の表示を見ると「この人は大丈夫」と次へ移りたくなりますが、事故後には「もっと早く気づけば」と強い後悔が残ります。
困りごとは、見守りの限界を食形態名で埋めたくなることです。刻み食なら窒息しないという理解は避けます。学会分類では、覚醒度の変動や認知機能、溜め込み、詰め込み、丸のみなどの摂食行動にも配慮する必要が示されています。介護士は、席を離れる前後で口腔内の溜め込みや食べるペースの変化を確認し、見続けられなかった時間も含めて申し送ります。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
窒息を回避する摂食嚥下障害の基準を明確に定めることは難しいと考えます.口腔機能や咽頭機能を評価し,適切な食事形態を選択した上で,窒息のリスクを回避するためには,覚醒度の変動や認知機能にも配慮する必要があります.特に,認知症,精神疾患,高次脳機能障害など摂食行動の異常(ペーシング,溜め込み,詰め込み,咀嚼を必要とする食品の丸のみなど)を認める場合は,いかなる食事形態であっても窒息のリスクは生じうるため,より安全な食事形態の選択を検討するとともに摂食場面の観察を十分に行うことが重要です.
- 事故を避けたい気持ちから「念のため」の対応を積み重ねると、現場負担だけが増えることがあります。安全対策と過剰業務を分けて考える視点も必要です。
- 詳しくは、介護現場の「念のため業務」が職員を疲弊させる理由|安全対策と過剰業務の境界線で確認できます。
「とりあえず刻む」「下げても続く」「刻みなら離れてよい」は、どれも事故への怖さから起きやすい判断です。見守りの限界も含め、食品・時点・食べ方の変化を記録します。
介護の仕事と暮らしを、ちょっと良くする選択肢
働き方を見直したいときや、毎日の負担を減らしたいときに役立つサービス・商品を紹介します。
なぜ「細かい=飲み込みやすい」とは限らないのか

現場では、大きな食べ物は詰まりそうで、細かくすれば安全そうに見えます。事故を避けたい介護士にとって自然な感覚ですが、噛む過程と飲み込む過程を一つにすると、食事中の変化を見落としやすくなります。
刻み食だった利用者の窒息に立ち会うと、「もっと細かければ」「もっと見ていれば」という考えが止まらなくなります。しかし、細かさだけを追うと、口の中でまとまっているか、送り込めているか、後半に疲れていないかが記録から消えます。ここでは、刻み食の名前だけでは答えが出ない理由を分けて確認します。
刻みは調理手技で、できあがりの物性を示さないから
同じ刻み食でも、ある献立はあんとまとまり、別の献立は細かな食片が散ることがあります。「同じ刻みだから同じように介助できる」と考えると、利用者の口の中で起きている違いを見逃します。
理想は、食形態名を見れば提供時の注意が分かることです。しかし実際には、「刻み」「ミキサー」は調理手技の呼称で、できあがった食べ物のかたさやまとまりまで一律には示しません。そのずれが「刻みだから安全」という思い込みを生みます。食事終了時は刻み幅だけでなく、やわらかさ、あんの状態、口腔内の残り方を記録します。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
12.刻み食にあんかけしたものは,どの段階に入りますか? 十分にやわらかいものを小さく刻んだりほぐしたりしたものに,中間のとろみあるいは濃いとろみ程度のあんをかけたものは,コード3あるいは4に該当します.コード2―2には該当しません.刻んだものが舌と口蓋で押しつぶすことができるものはコード3,上下の歯槽堤間で押しつぶすことができるものはコード4です.なお,刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶすことができないほどかたいものや,あんのとろみの程度が薄すぎるものは,嚥下調整食としては適切ではありません.本来,「刻み」や「ミキサー」という呼称は,調理手技に過ぎません.あくまでも,できあがったものの物性で判断すべきであると考えています.
- 献立ごとのまとまり方や口の中への残り方など、その場で見えた違和感を短く記録して次の勤務者や専門職へ渡す方法があります。
- 詳しくは、ミールラウンドが続かない介護施設へ|食事介助の違和感を記録・申し送りにつなげる方法で確認できます。
咀嚼は細かくするだけでなく、食塊を作る過程だから
細かな食片が頬や歯の間に残ると、次の一口を入れてよいか迷います。噛む回数が少なく見えると「刻んであるから問題ない」と考えたくなりますが、口の中でまとまり、送り込めているかは別に見なければなりません。
理想は、細かくした時点で噛む負担が解決することです。ところが、咀嚼は食べ物を噛み砕くだけでなく、唾液と混ぜて飲み込める食塊を作る過程です。強く噛む必要が少ない食形態でも、形を整え、保持し、送り込む力は関係します。介護士は食後の口腔内を確認し、散らばりや残留、送り込みの様子を事実として残します。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
咀嚼とは,食べ物を噛み切り(咬断),噛み砕き(粉砕),すりつぶし(臼磨)を行いながら唾液と混ぜ合わせ,嚥下しうる形態,すなわち食塊を形成する過程をいう.今回用いている「咀嚼能力」という用語は,歯や補綴物を利用する場合だけでなく,上下顎の歯槽堤(歯茎)や舌と口蓋間で押しつぶす能力も含めた広い意味で用いた.そのような咀嚼能力の必要がないものでも,食塊の形状調整能力や,食塊の保持能力あるいは食塊の送り込み能力は必要であり,厳密には「咀嚼能力」ではないが,「必要な咀嚼能力」の欄の( )内に記載した.
- むせだけでなく、口腔内の残りや食べこぼし、詰め込みなどを観察すると、食べ物をどう処理しているかを考える材料が増えます。
- 詳しくは、食事介助のヒヤリハットを反省文にしない|むせ・詰め込み・姿勢崩れの報告の考え方で確認できます。
食形態の適否は食事の途中で見えるから

食事前半はむせずに進んでも、後半になると姿勢が崩れ、口の動きが遅くなる場面があります。開始時だけを見て「今日は大丈夫」と判断すると、介助者交代後の変化が申し送りから抜けます。
理想は、提供前に食形態の適否がすべて分かることです。実際の食形態検討では、食事時間、疲労、口腔内残留、湿性嗄声、咀嚼など、食べている途中の情報も見られています。そこで記録を「むせあり・なし」で終えず、次のように前後の変化として残します。
| 確認する時点 | 見る内容 |
|---|---|
| 食事前半 | 食べた食品、一口量、食べる速度 |
| 変化した時点 | むせ、疲労、姿勢、痰や呼吸の変化 |
| 食事終了時 | 口腔内残留、摂取の進み方 |
すべての利用者へ毎食詳しく書くのが難しい場合は、まず状態が気になる一人の一食に絞ります。
出典・根拠を確認
厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)研究班嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/R1_Report.pdf
食事形態のレベルアップ(またはダウン)の判断は,推奨食事形態の判断に用いた項目に加え,食事に要する時間,疲労度,口腔内残留,湿性嗄声,咀嚼の様子などにより食形態が適正かを判断していた.また,食への意欲・興味・関心,嗜好,喫食率,総摂取カロリーなど摂食行動全般と栄養に関する評価も高率に行われており,きめ細やかな観察が実施されていた.これらの評価は評価者の主観による判断であり個々の経験に委ねられている部分が大きい.経験によらず推奨食事形態を決定でき,その後の安全性を評価する方法の確立が求められる.
- 食事の途中で見える声や呼吸、食べ方の変化まで確認すると、「むせた・むせない」だけでは拾えない違和感を整理できます。
- 詳しくは、食事中のむせ判断で迷う介護士へ 見るポイント整理で確認できます。
一人の観察だけでは見えない範囲があるから
むせた後に「誰の介助だったか」だけを問われると、介助者は自分の技術不足だと感じます。責任への恐怖が強いほど、見えた変化を話すより、失敗しない食形態名を探す方へ気持ちが向きます。
理想は、介助者が見れば原因まで分かることです。しかし、摂食嚥下運動は体外から一部しか観察できず、観察判断には経験差もあります。だから介護士は、分からないことまで断定せず、見た事実を記録します。食事終了時に記録し、次の提供前に看護師や管理栄養士など必要な職種へ渡すと、介助者一人の責任から、食形態を検討する材料へ変えられます。
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厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)研究班嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/R1_Report.pdf
摂食嚥下運動は体外からはその一部しか観察することができない.観察による評価は評価者の主観による判断となり,その判断は個々の経験に委ねられている部分が大きい.経験によらず推奨食事形態を決定でき,その後の安全性を評価する方法の確立が求められる.本アンケートで明らかにした経験者の判断の視点は,推奨食事形態決定のための評価手段の作成に重要な情報である.
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一般社団法人 日本健康・栄養システム学会令和3年度介護報酬改定対応:介護サービスにおける栄養ケア・マネジメントの実務の手引き(初版)
管理栄養士は,日々のミールラウンドでの課題を解決するために多職種からの情報収集を行いますが,職種により視点や注意するポイントも異なり課題解決のために得られる情報も異なります.多職種が様々な視点から観察し,解決方法を提案し合うことよって,より迅速に具体的な栄養ケア計画を立案し,効果的な介入に繋げることが必要です.また,多職種により密度の濃い協働を通じて,専門性の違いから意見の対立を生じることもあります.
- むせや食事中の変化を個人の介助ミスだけで終わらせず、食形態、姿勢、口腔状態、疲労など複数の条件から共有する視点があります。
- 詳しくは、食事介助のヒヤリハットを反省文にしない|むせ・詰め込み・姿勢崩れの報告の考え方で確認できます。
細かさだけでは、物性、食塊形成、食事後半の変化、観察できない範囲を説明できません。介護士は一食の前後を記録し、分からない部分を独断で埋めないことが重要です。
介護の仕事と暮らしを、ちょっと良くする選択肢
働き方を見直したいときや、毎日の負担を減らしたいときに役立つサービス・商品を紹介します。
刻み食とむせに関するよくある質問
現場では、「今のまま食べてもらってよいのか」「変えないと事故になるのでは」と迷います。ここでは、刻み食の名前だけで結論を出さないための考え方を確認します。
- Qむせたら、すぐ刻み食へ変えた方がよいですか?
- A
介護士一人で即変更するのではなく、まずむせた食品・タイミング・実物の状態を記録します。「何も変えないのが怖い」と感じる場面でも、刻みという呼称だけでは物性を判断できません。できあがったやわらかさやまとまり、口腔内残留を専門職へ伝え、食形態の検討材料にします。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
12.刻み食にあんかけしたものは,どの段階に入りますか? 十分にやわらかいものを小さく刻んだりほぐしたりしたものに,中間のとろみあるいは濃いとろみ程度のあんをかけたものは,コード3あるいは4に該当します.コード2―2には該当しません.刻んだものが舌と口蓋で押しつぶすことができるものはコード3,上下の歯槽堤間で押しつぶすことができるものはコード4です.なお,刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶすことができないほどかたいものや,あんのとろみの程度が薄すぎるものは,嚥下調整食としては適切ではありません.本来,「刻み」や「ミキサー」という呼称は,調理手技に過ぎません.あくまでも,できあがったものの物性で判断すべきであると考えています.
- Q刻み食なら窒息しにくいですか?
- A
刻み食という食形態だけで窒息リスクがなくなるとは言えません。刻みなら見守りを外せると思いたくなる忙しい場面でも、覚醒の変化や、溜め込み、詰め込み、丸のみなどの食べ方を見ます。見続けられなかった時間があれば、その事実も申し送ります。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
窒息を回避する摂食嚥下障害の基準を明確に定めることは難しいと考えます.口腔機能や咽頭機能を評価し,適切な食事形態を選択した上で,窒息のリスクを回避するためには,覚醒度の変動や認知機能にも配慮する必要があります.特に,認知症,精神疾患,高次脳機能障害など摂食行動の異常(ペーシング,溜め込み,詰め込み,咀嚼を必要とする食品の丸のみなど)を認める場合は,いかなる食事形態であっても窒息のリスクは生じうるため,より安全な食事形態の選択を検討するとともに摂食場面の観察を十分に行うことが重要です.
- Qとろみは濃いほど安全ですか?
- A
濃いほどよいとは一律に言えません。事故が怖いと強くしたくなりますが、とろみが強いと味や摂取量に影響し、種類によってはべたつきが強く、飲み込みにくくなる場合も示されています。介護士だけで濃さを変えず、実際の飲み方を記録して個別に検討します。
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日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?2025-0221
水分のとろみは濃いほうがいいのでしょうか? とろみの程度が強いと,味が劣化して嫌がられたり,全体の摂取量は少なくなったりします.また,使用したとろみ調整食品の種類によっては,べたつきが強くなり,飲み込みにくくなることもあります.その症例に適した,とろみの程度を選択するようにしてください.また,食事の際の汁物のとろみは,機能回復の比較的後の段階まで必要であることが多いですが,食間の飲水については,より早期にとろみなしを許可できる可能性もあります.
- Q介護士は何を記録すればよいですか?
- A
食事時間、むせた食品と時点、口腔内残留、食事後半の疲労、咀嚼、痰や呼吸の変化など、見た事実を残します。項目が多くて書けない日は、気になる利用者一人について、食事前半と後半で変わったことを一つ記録します。
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厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)研究班
嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/R1_Report.pdf
食事形態のレベルアップ(またはダウン)の判断は,推奨食事形態の判断に用いた項目に加え,食事に要する時間,疲労度,口腔内残留,湿性嗄声,咀嚼の様子などにより食形態が適正かを判断していた.また,食への意欲・興味・関心,嗜好,喫食率,総摂取カロリーなど摂食行動全般と栄養に関する評価も高率に行われており,きめ細やかな観察が実施されていた.これらの評価は評価者の主観による判断であり個々の経験に委ねられている部分が大きい.経験によらず推奨食事形態を決定でき,その後の安全性を評価する方法の確立が求められる.
むせた直後ほど変更を急ぎたくなりますが、食形態名だけでは決められません。食品・時点・食べ方の変化を記録し、独断で上げ下げせず、必要な専門職の検討へつなげます。
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現場では、むせた瞬間に「もっと細かくしなければ」と焦ります。事故後の怖さが残り、次にスプーンを持つ手が震えるようなときに、すべてを完璧に観察するのは難しいものです。
刻み食は、それだけで安全を示す名前ではありません。できあがった物性、口の中でのまとまり、食事時間、疲労、残留など、利用者が実際にどう食べていたかを見て初めて、検討に使える情報になります。
明日からの一歩は、次の食事終了時に「何を食べたとき、いつ、何が変わったか」を一件だけ記録することです。全員分を詳しく書くのが難しければ、気になる利用者一人・一食に絞り、食形態の変更はその記録を必要な専門職へ渡してから検討します。
最後までご覧いただきありがとうございます。
更新履歴
- 2025年12月26日:新規投稿
- 2026年5月19日:内容を全面的にリライト
- 2026年9月6日:内容を全面的にリライト



