認知症の告知をめぐる「理想」と「現実」のギャップ
家族から「告知しないで」と口止めされ、本人に嘘をつき続けるのは苦しいものです。本当は不安に寄り添いたいのに、建前と現場の限界に挟まれて動けなくなります。
全てを一度に解決するのは難しくても、現実的な着地点はあります。まずは一人で抱えず、ガイドラインに基づいた最低限の守り方から始めてみましょう。
この記事を読むと分かること
- 告知しないリスクの構造
- 不安を和らげる声かけ術
- チームでの合意形成術
- 本人の意向を聞くコツ
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:認知症の「告知」をめぐる家族と現場の対立. 現実的な着地点とは?

現場では、ご家族から「絶対に病名は言わないで」と強く口止めされることが少なくありません。本人が「自分はどうなってしまうのか」と不安を口にしているのに、家族の意向を優先して適当にごまかさなければならない状況は、介護職にとって大きなストレスです。
建前としては本人の意思を尊重すべきだとわかっていても、現実はご家族のショックや関係悪化を恐れ、踏み込んだ対応が難しいのが実情です。ここでは、ゼロか百かの議論ではなく、現場でできる現実的な対応策をガイドラインに基づいて整理します。
支援方法に迷ったらチームで協議する
家族の意向と本人の知る権利の間で板挟みになった場合、現場の担当者だけで解決しようとするのは避けるべきです。告知をめぐる問題は、本人の今後の生活に影響する重要な要素であるため、まずは多職種で情報を共有することが第一歩となります。
「告知しない」という方針に対して現場がどのように動くべきか、関係者間で認識をすり合わせる必要があります。
| 情報の共有 | 担当者だけで抱え込まず、速やかに状況を他職種へ共有する。 |
|---|---|
| 状況の整理 | 家族の思いと本人の様子を、感情を交えず客観的に整理する。 |
| 協議の実施 | 多職種で今後の具体的な対応策を話し合う場を設ける。 |
このように、支援方法に行き詰まりを感じた場合は、決して一人で悩まず、チーム全体で協議の場を開くことが現実的な着地点の一つとなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
支援方法に困難がある場合などは、意思決定支援会議を開催し共同で考える。会議は地域ケア会議等と兼ねることが可能であり、原則として本人の参加が望ましいが、雰囲気への配慮が必要である。専門職は提供プロセスをモニタリング・記録し、質の向上に努める。
丁寧な説明と本人への確認を繰り返す
病名をはっきりと伝えられない状況であっても、本人の不安を放置してよいわけではありません。告知できない現状に悩みすぎるのではなく、今目の前にいる本人が理解できる範囲で、情報を丁寧に伝えていく姿勢が求められます。
本人がどのように感じているのかを確認しながら、安心できる環境づくりを進めることが重要です。
| 説明の工夫 | 平易な言葉や文字、図表を使ってゆっくりと説明する。 |
|---|---|
| 質問の活用 | 「今どんなことをしたいですか」と開かれた質問を投げかける。 |
| 理解度の確認 | 本人が本当に理解できているか、様子を注意深く観察する。 |
(※開かれた質問:単に「はい」「いいえ」で答えるのではなく、本人が自由に答えられる質問形式のこと)
病名を伏せているからこそ、本人の事実認識に誤りがないかをその都度確認し、本人の声に耳を傾けるプロセスが大切になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
意思形成支援では、本人が理解できる平易な言葉や文字、図表を用いて情報を丁寧に説明し、事実認識に誤りがないか確認する。「今どんなことをしたいですか」といった開かれた質問を用い、複数の選択肢を示すことが有効である。理解しているように見えても実際は理解できていない場合があるため、本人の様子を注意深く確認する。
家族からの口止めで対応に悩む場合は、担当者だけで抱え込まずにチームで会議を開き、対応方針を検討することが大切です。また、病名を伏せる場合でも、本人が理解できる平易な言葉で説明を繰り返し、不安に寄り添う姿勢が求められます。
現場で起きている「認知症の告知をしない」ことによる支援の行き詰まりパターン

現場では、「ご家族からの強い希望でご本人に病名を隠した結果、かえってケアが難しくなった」という葛藤が日々生まれています。
建前としてはご本人の意思決定支援が重要だとわかっていても、現実は「ご家族との関係性を悪化させたくない」「限られた時間の中で波風を立てたくない」という思いが働き、現状維持を選ばざるを得ない苦しさがあります。ここでは、告知を控えることで起こりやすい典型的な行き詰まりのパターンと、そこから抜け出すための具体的な視点を整理します。
本人が不安を抱えたまま孤立してしまうケース
ご家族がショックを恐れるあまり病名を伏せ、物忘れの検査等もごまかしてしまう場面です。ご本人は自身の変化に気づいているのに、周囲が真剣に取り合ってくれない状況に陥ります。
| 状況 | 検査後も病名を伏せ、ご本人には「年のせい」とごまかしている。 |
|---|---|
| 困りごと | ご本人が「自分はおかしいのでは」と不安を募らせ、誰にも相談できず不信感を抱く。 |
| よくある誤解 | 病名を隠して明るく振る舞えば、ご本人は傷つかず安心するはずだ。 |
| 押さえるべき視点 | ごまかすのではなく、まずは不安に配慮し、安心できる姿勢で接することが信頼関係の基盤となります。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
事例Ⅱでは、職員が荷物運びを手伝い、庭先で一緒に食事を取ることで関わりを持った。意思決定を支援する上では、まず本人との信頼関係を築くことが極めて重要である。あわせて、本人が安心できるような姿勢で接することが不可欠な要素として示されている。
家族の意向が強すぎて本人が本音を言えないケース
ご家族が今後の生活についての決定をご本人には内緒で進めたいと主張し、ご本人が同席する場で踏み込んだ話ができない場面です。ご家族への遠慮から、ご本人が本音を抑え込んでしまいます。
| 状況 | ご家族の意向が優先され、ご本人がいる場では当たり障りのない会話しかできない。 |
|---|---|
| 困りごと | ご本人の意向を確認したくても、ご家族の目が気になってご本人が遠慮してしまう。 |
| よくある誤解 | ご家族がご本人のためを思って決めているのだから、それに従うのが一番スムーズだ。 |
| 押さえるべき視点 | 同席する立ち会う人に配慮し、ご本人から直接思いを聞き出すために個別に意思を確認する工夫が必要です。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
意思決定支援者と本人との信頼関係の構築は、本人が安心して意思を表明するために不可欠である。金融機関や不動産売買の相手方などの「立ち会う人」との関係で本人が遠慮し、意思を十分に表明できない場合は、個別に意思を確認するなどの配慮が必要となる。
現場の支援者が板挟みになりケアが進まないケース
ご家族は「告知は絶対にしない」とし、ご本人は「本当のことが知りたい」と訴える中で、支援者が嘘をつき続けることに限界を感じる場面です。方針が定まらず、現場だけが疲弊してしまいます。
| 状況 | ご家族とご本人の間で板挟みになり、支援者がどう動くべきか方向性を見失っている。 |
|---|---|
| 困りごと | ケアマネジャーや介護職が一人で悩み、具体的なケアや意思決定支援が進まない。 |
| よくある誤解 | 現場の担当者だけで、ご家族を説得するかご本人をごまかすか決めなければならない。 |
| 押さえるべき視点 | 一人で抱え込まず、意思決定支援会議を開催して多職種で課題を共有し合うことが求められます。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
支援方法に困難がある場合などは、意思決定支援会議を開催し共同で考える。会議は地域ケア会議等と兼ねることが可能であり、原則として本人の参加が望ましいが、雰囲気への配慮が必要である。専門職は提供プロセスをモニタリング・記録し、質の向上に努める。
ご家族の意向で告知を控える場面では、ご本人の孤立や本音の抑制、支援者の板挟みといった行き詰まりとなる場合があります。ご本人が安心できる個別対応や、多職種での会議を通じた情報共有を取り入れることで、糸口となる場合があります。
なぜ「病名を隠す家族」と「意思決定支援」は衝突するのか?

現場では、「本人の意思決定が大切なのは建前ではわかっているけれど、ご家族が同席する場で病名に触れずに本音を聞き出すなんて、実際の人員と時間では難しい」という声が多く聞かれます。
なぜ、ガイドラインが求める「意思決定支援」と「病名を伏せたい家族の意向」は、現場でこれほどまでに激しく衝突してしまうのでしょうか。そのため、その構造的な原因を出典を踏まえて整理します。
建前は「自由な意思の表明」だが、現実は「関係者への遠慮」が先行する
建前では、ご本人が周囲を気にせず、自分の意思を自由に表明できることが理想とされます。しかし現実は、ご家族など同席する人に遠慮してしまい、ご本人が本音を言えないケースが多々あります。
| 建前(理想) | 本人が自らの意思を周囲を気にせず安心して表明する。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 家族への遠慮から、当たり障りのないことしか言えない。 |
ご家族の「告知しないで」という意向が強い場合、ご本人はますます本音を隠し、意思決定から遠ざかってしまうことがあります。そのため、立ち会う人との関係性に配慮した個別対応が必要になるのです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
意思決定支援者と本人との信頼関係の構築は,本人が安心して意思を表明するために不可欠である。金融機関や不動産売買の相手方などの「立ち会う人」との関係で本人が遠慮し、意思を十分に表明できない場合は、個別に意思を確認するなどの配慮が必要となる。
建前は「合理的な判断」だが、現実(現場)は「安心できる関係づくり」が先決
建前では、病名という事実を正しく認識したうえで、今後の生活について合理的に判断することが求められがちです。しかし現実は、病名云々よりも前に、日々の不安を打ち明けられる「安心感」がなければ何も進みにくい場合があります。
| 建前(理想) | 事実に基づいて、今後のサービスや生活を合理的に選ぶ。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 「この人なら話せる」という信頼関係がないと意思は引き出しにくい。 |
病名をどう伝えるかで悩む前に、まずはご本人が安心できるような姿勢で接し、信頼関係の土台を作ることこそが、意思決定支援の前提となります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
事例Ⅱでは、職員が荷物運びを手伝い、庭先で一緒に食事を取ることで関わりを持った。意思決定を支援する上では、まず本人との信頼関係を築くことが極めて重要である。あわせて、本人が安心できるような姿勢で接することが不可欠な要素として示されている。
建前は「スムーズな合意」だが、現実は「対立と困難な調整」が起こり得る
建前では、ご本人・ご家族・支援者が一枚岩になってスムーズに方針を決めることが理想です。しかし現実は、「病名を伏せたい家族」と「不安を抱える本人」の間で意向が対立し、現場が板挟みになることが起こりやすいです。
| 建前(理想) | 関係者全員が話し合い、一つの目標に向かってすぐに合意する。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 意向の対立が避けられず、現場担当者だけでは調整が困難になる。 |
このような、支援方法の困難は、個人のスキルだけでなく構造上起こり得るものです。そのため、現場だけで抱え込まずに意思決定支援会議を開催し、共同で考える仕組みが重要となる場合があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
支援方法に困難がある場合などは、意思決定支援会議を開催し共同で考える。会議は地域ケア会議等と兼ねることが可能であり、原則として本人の参加が望ましいが、雰囲気への配慮が必要である。専門職は提供プロセスをモニタリング・記録し、質の向上に努める。
意思決定支援が現場で衝突する背景には、ご本人を取り巻く「遠慮」、安心できる関係性の欠如、および起こり得る「意向の対立」にあります。理想通りに進まない場合があり、そのためチームでの調整が重要となる場合があります。
告知と意思決定支援に関する現場の小さな迷いへの回答
「病名を伏せる」という特殊な状況下では、日々のケアの中で「こんな時、どう答えればいいのか」と対応に迷う瞬間が多くあります。
ここでは、ご本人と接する中で生じやすい具体的な悩みに対し、エビデンスに基づく現実的な対応方法をQ&A形式でご紹介します。
- Qご家族から「病名のことは言わないで」と言われていますが、ご本人から「今後のことが不安だ」と聞かれたらどうすればよいですか?
- Aまずはご本人の不安を受け止め、開かれた質問を用いてご本人が何を望んでいるかを聞くことが重要です。診断名を直接伝えられなくても、ご本人が理解できる平易な言葉で丁寧に説明を繰り返すことで、安心感につながる場合があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
意思形成支援では、本人が理解できる平易な言葉や文字、図表を用いて情報を丁寧に説明し、事実認識に誤りがないか確認する。「今どんなことをしたいですか」といった開かれた質問を用い、複数の選択肢を示すことが有効である。理解しているように見えても実際は理解できていない場合があるため、本人の様子を注意深く確認する。
- Qご家族が同席していると、ご本人がご家族に遠慮して本当の気持ちを話してくれません.
- Aご家族など立ち会う人の前では、ご本人が遠慮して意思を十分に表明できないことがあります. その場合は無理にその場で聞き出そうとせず、ご本人と個別に意思を確認するなどの配慮を行うことが重要となる場合があります.
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
意思決定支援者と本人との信頼関係の構築は、本人が安心して意思を表明するために不可欠である。金融機関や不動産売買の相手方などの「立ち会う人」との関係で本人が遠慮し、意思を十分に表明できない場合は、個別に意思を確認するなどの配慮が必要となる。
- Q病名を伏せていることもあり、ご本人が「ずっと今の家で一人で暮らす」と言って聞き入れず、ご家族と対立しています.
- Aご本人の意思が客観的に合理的でなくても、重大な不利益が生じない限りは尊重することが基本です. そのうえで、ショートステイの体験利用などの無理のない経験を提案してみましょう. 実際の経験を通じて、ご本人の意思が変わる可能性もあります.
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
表明された意思を、意思決定支援チームが多職種で協働し、社会資源を用いて生活に反映させる。形成・表明された意思が客観的合理性を欠いていても、他者を害する場合や重大な不利益が生じる場合を除き、その意思を尊重する。実際の経験(ショートステイ体験利用等)によって意思が変更されることもあるため、無理のない範囲で経験を提案することも有効である。
病名を伏せるという制約の中でも、ご本人が安心できる個別の対話や、体験を通じた緩やかな意思のすり合わせは可能です. ご本人の不安に寄り添い、少しずつ選択肢を提示していくことが、現場でできる重要な支援となります.
認知症を告知しない葛藤の中で。明日からできる意思決定支援の一歩
ご家族の意向とご本人の知る権利の間で板挟みになり、病名を告知できないままケアを続けることは、現場にとって非常に苦しい状況です。
「本人の意思決定支援が大切」という建前はわかっていても、現実にはご家族の思いや、限られた人員の中でできることには限界があります。
ゼロか百かで「告知すべきか」と思い悩む必要はありません。まずはご本人の小さな不安に寄り添い、開かれた質問で今の思いを聞き取ることこそが、立派な支援の第一歩です。
電力と、現場の担当者だけで抱え込まず、少しでも迷いや困難を感じたら、ためらわずに意思決定支援会議を開いてチームに相談してください。
ご家族への配慮とご本人への誠実な対応に悩むあなたの姿勢そのものが、すでにご本人へのあたたかいケアにつながることがあります。
最後までご覧いただきありがとうございます. この記事が、日々現場で奮闘される皆様のお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年5月28日:新規投稿






