「利用者本位」や受容が介護の理想とされる一方で、現場は人員不足や業務に追われ、一人ひとりと十分に向き合えず罪悪感を抱くことも多いのではないでしょうか。教科書通りの対応が難しい現実の中で、「優しくなれない自分」を責めてしまうこともあるかもしれません。
理不尽な暴言や要求に傷つきながらも、感情を押し殺して笑顔を作る毎日に疲弊していませんか。全てを完璧にこなそうとするのではなく、まずは自分自身の心を守る技術として、心理学的なアプローチを知ることから始めてみましょう。
この記事を読むと分かること
- 「受容」とは相手と自分を切り離す技術
- 感情を認める「自己一致」のメンタル効果
- 作り笑いが持つ「潤滑油」としての機能
- 燃え尽きを防ぐための心の守り方
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:自己犠牲ではない、自分を守るための「受容」と「自己一致」

現場では「利用者様の言葉を受け止めましょう」「受容が大切」と教わりますが、実際には認知症の方からの止まらない暴言や、理不尽な要求にさらされ、心が削られていく毎日ではないでしょうか。
「プロなんだから感情を顔に出してはいけない」と自分を律し、休憩室でため息をつく…そんなギリギリの状態で働いている方も多いはずです。教科書通りの理想論だけでは、現場の過酷さは乗り越えられません。まずは自分の心を守るために、専門的な技法の本当の意味を知ることから始めましょう。
「受容」とは相手の言いなりになることではない
介護や援助の現場で強調される「受容」について、多くの人が「相手の言うことを全て肯定し、我慢して受け入れること」だと誤解しがちです。しかし、専門的な定義における受容的態度とは、相手を批判や非難せずに接することであり、相手の言い分に同調したり、暴言を容認したりすることとは異なります。
重要なのは、相手がそのように感じているという「事実」を、評価を交えずに理解しようとする共感的理解の姿勢です。相手の「ものの見方・考え方」に沿って理解することは必要ですが、それは自分自身が犠牲になってサンドバッグになることではありません。相手の感情と自分の感情を切り離し、一歩引いて観察することが、結果的に自分を守る盾となります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
来談者中心アプローチの提唱者であるロジャース(Rogers.C.R.)は、話し手に安心感を与え心を開いてもらうため、カウンセラーに「純粋性(自己一致)」「受容的態度」「共感的理解」という3つの基本的態度を求めている。防衛的・虚勢的にならずありのままの自分を認め、批判や非難を控え、一人の人間として尊重しながら、話し手の「ものの見方・考え方」にそって理解し、その理解をフィードバックすることが重視される。
ネガティブな感情を持つ自分を認める「自己一致」
利用者に対して「腹が立つ」「苦手だ」と感じることに、罪悪感を抱く必要はありません。対人援助において重要とされる純粋性(自己一致)とは、援助者自身が心理的に安定し、ありのままの自分を受け入れている状態を指します。
無理に感情を押し殺して「良い介護職」を演じようとすると、内面の気持ちと外面の態度にズレが生じ、それが大きなストレスとなってバーンアウト(燃え尽き)の原因になります。自分のネガティブな感情を否定せず、「今、自分は傷ついているな」「怒っているな」と素直に認めることこそが、メンタルヘルスを保つための第一歩です。自分が安定してこそ、相手に対して防衛的にならず、率直に向き合うことが可能になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
純粋性(自己一致)とは、聴き手自身が心理的に安定し、ありのままの自分を受け入れている状態を指す概念として説明される。防衛的になったり虚勢的にならず、率直な気持ちと態度で話し手に向き合えていることが求められる。カウンセラーが内心の不安や葛藤を隠したまま対応すると、言動とのずれが話し手に伝わり、信頼感が揺らぐ可能性があるため、自分自身の状態を整えたうえで面談に臨む姿勢が重視されている。
「自分のフィルター」を知り、冷静さを取り戻す
私たちは無意識のうちに、自分の価値観や経験に基づいた自己のフィルターを通して相手を見ています。「感謝されるべき」「暴言は許されない」といった自分の価値観が強いほど、そこから外れた利用者の言動に対して感情が激しく動かされます。
他者を完全に理解することには限界があります。だからこそ、相手を変えようとするのではなく、まず「自分はどういう価値観で物事を見ているのか」「何に感情が動くのか」を知る自己覚知が重要です。自分の心の動きを客観的に把握できれば、相手の言葉を真に受けて巻き込まれることを防ぎ、専門職として冷静な距離感を保つ助けになります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人北海道医療ソーシャルワーカー協会・独立行政法人国立病院機構北海道医療センター良好な関係を築くためのコミュニケーション技法
自己覚知が不可欠とされる理由として、対象者を知ることは「自己のフィルターを通した理解」でしかありえないという指摘がなされる。医療関係者もそれぞれ個性や価値観を持つ人間であり、自分の見方・感じ方を基準とした判断になりがちであるため、「自分はどういう価値観を持って物事を見ているのか」「どういうことに感情が動くのか」を知る必要があるとされる。他者理解には限界があることを前提にしつつも、自己覚知の意識を持つことで、より深い受容と共に課題に立ち向かうことが望まれると述べられている。
完璧な受容を目指して疲弊するのではなく、まずは「相手と自分は違う人間である」という境界線を意識しましょう。自分の感情を否定せずに認める(自己一致)ことは、わがままではなく、長くケアを続けるために必要な自己防衛の技術です。
現場でよくある「心が折れそうになる」3つの事例

介護現場では、教科書通りの対応が通用せず、真面目な職員ほど傷ついてしまう場面が多々あります。ここでは、現場で頻繁に起こる葛藤の事例を通し、エビデンスに基づいた「自分を守るための視点」を解説します。
事例1:認知症の方から「泥棒」と罵倒され、否定しても収まらない
- 状況
- 認知症の利用者様から「財布を盗んだだろう!」「泥棒!」と身に覚えのない疑いをかけられ、激しく罵倒されるケースです。
- 困りごと
- 「盗んでいません」と事実を伝えても、相手はさらに興奮してしまいます。周囲に他の利用者様がいる手前、早く沈静化させなければと焦り、精神的に追い詰められてしまいます。
- よくある誤解
- 「誤解を解くために、事実関係を正しく説明しなければならない」と思い込んでしまうことです。しかし、認知症の方にとってはその瞬間の不安感こそが真実であり、論理的な否定は「自分の訴えを聞いてくれない」という拒絶として受け取られかねません。
- 押さえるべき視点
- 事実ではなく「感情」に応答する 言葉の内容(泥棒)ではなく、その裏にある感情(大切なものがなくなって不安、怖い)に焦点を当てましょう。これを専門的には感情の反映と呼びます。「盗んでいません」と否定するのではなく、「お財布が見当たらなくて、とても心配なんですね」と相手の不安な気持ちを言葉にして返すことで、相手は「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じ、落ち着きを取り戻しやすくなります。これは相手のためだけでなく、職員が「理不尽な攻撃」をまともに受けないための防御策でもあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
感情の反映は、話し手が「今ここ」で感じている気持ちに焦点を当てていく技法と説明される。例えば「働きがいを感じて、嬉しく感じているんですね」「上司に認めてもらえないので、がっかりしているんでしょうか」などのように、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの両方を手がかりに、相手の気持ちをとらえてフィードバックする。これにより、話し手が自分の心の底にある感情や葛藤に気づく機会を得るとされる。
事例2:家族から「もっと特別扱いして」と理不尽な要求が続く
- 状況
- ご家族から「うちの親だけもっと頻繁に見に来てほしい」「専属でついていてほしい」といった、人員配置上不可能な要求を繰り返し受け、断ると「冷たい」「対応が悪い」とクレームになるケースです。
- 困りごと
- 「できません」と断れば関係が悪化し、要望を聞き入れれば他の利用者様との公平性が保てず、現場が疲弊します。板挟みになり、電話に出るのが怖くなってしまいます。
- よくある誤解
- 「受容」とは、相手の要求(リクエスト)をすべて聞き入れて「イエス」と言うことだという誤解です。しかし、クレームの背景には、要求そのものとは別に「離れて暮らす家族の心配」や「十分にしてあげられていない罪悪感」といった心情的な問題が隠れていることが少なくありません。
- 押さえるべき視点
- 要求は断っても、背景にある「心配」は受容する 要求(現実的な問題)と、背景にある気持ち(心情的な問題)を分けて考えます。「専属ではつけません」という事実は伝えつつ(純粋性)、「お母様のことが心配で、もっと見ていてほしいというお気持ちなんですね」と、家族の心配や愛情については深く共感し、肯定します。要求を断ることと、相手の気持ちを受け止めることは両立します。
出典元の要点(要約)
一般社団法人北海道医療ソーシャルワーカー協会・独立行政法人国立病院機構北海道医療センター良好な関係を築くためのコミュニケーション技法
「顧客のクレーム心理」では、顧客の抱える問題には「心情的な問題」と「現実的な問題」の二つがあるとされる。顧客は自分をわかってほしいと思っており、「心情的な問題」には背景があることが示され、その背景の解釈と理解を間違ったときにクレームが起きると説明される。また、顧客が意思を表明する時には不満だけでなく不安も持っており、「今後付き合いにくくなるかも?」「反論されたらどうしよう?」など不満と不安が渦巻いているとされる。クレーム対応では顧客心理をわかろうとする積極姿勢を見せることが絶対条件だと述べられている。
事例3:苦手な利用者の前で「笑顔」を作り続け、心が冷え切っている
- 状況
- 暴言を吐く利用者や、相性の悪い利用者に対し、プロとして「笑顔」で接し続けていますが、業務が終わるとどっと疲れが出て、表情が戻らなくなるような虚無感に襲われるケースです。
- 困りごと
- 「顔では笑っているのに、心の中では相手を嫌っている」というギャップに罪悪感を覚えたり、「自分は冷たい人間なのではないか」と自己嫌悪に陥ったりして、メンタルヘルスの不調(バーンアウト)につながりやすくなります。
- よくある誤解
- 「プロならいつでも心からの笑顔で接するべきだ」「ネガティブな感情を持ってはいけない」という思い込みです。しかし、無理に感情を抑圧することは、長期的には自分の心を壊す原因になります。
- 押さえるべき視点
- 「作り笑い」は高度な技術であり、自分の感情は別にあっていい 作り笑いには、相手の不安を軽減し、人間関係を円滑にする「潤滑油」としての社会的機能があります。これを「偽り」と責めるのではなく、「プロとしての技術を行使している」と捉え直しましょう。同時に、心の中では「私は今、無理をしている」「本当はこの対応が辛い」と自分の本音を認めてあげる(自己一致)ことが重要です。感情と行動を意識的に分けることで、心の摩耗を防ぐことができます。
出典元の要点(要約)
岩手大学作り笑いが受け手に与える影響―表出者との相互作用に着目して―
https://iwate-u.repo.nii.ac.jp/record/15847/files/cbsa-n38p33-42.pdf
群間での「敵意」上昇の差については、笑い禁止群では「相手の顔を見るのが怖かった」「ぎこちなくなった」といった感想がある一方、笑い多用群では「相手の相づちに優しさを感じた」「楽しそうに聞いてくれた」といった記述が見られたことから、作り笑いがコミュニケーションの中で潤滑油のような働きをし、ネガティブ感情を抑制した可能性があると考察している。この結果は、李ら(2011)や押見(2002)が述べた「作り笑いの社会的機能」や「心理社会的効果」を実証するものと位置づけられている。
なぜ、私たちはこれほどまでに傷ついてしまうのか

現場では「利用者の気持ちに寄り添いたい」という理想を持ちながらも、実際には業務に追われ、心ない言葉を投げかけられても「忙しいから」と感情を麻痺させてやり過ごすしかない…そんな葛藤を抱えている方が少なくありません。
傷ついてしまうのは、あなたが弱いからでも、向いていないからでもありません。そこには、対人援助職特有の心の仕組みや、現場の構造的な課題が深く関わっています。なぜ心が摩耗してしまうのか、その背景にある原因を整理してみましょう。
自分のネガティブな感情を「抑圧」しているから
「利用者にイライラしてはいけない」「プロなら常に優しくあるべき」と、自分を責めていませんか? 援助者が自分の内にある不安や怒り(葛藤)を隠したまま、表面だけで取り繕って接しようとすると、その不一致が大きなストレスとなります。
これを心理学では純粋性(自己一致)の欠如といいます。自分の感情を否定して抑え込む(抑圧する)ことは、精神的な健康を損なう要因です。ネガティブな感情を持つこと自体は悪いことではなく、それを「いけないこと」として認められない状態こそが、苦しさの根源となっています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
純粋性(自己一致)の説明では、カウンセラー自身が不安定な状態だと、防衛的態度や虚勢が表に出て、言葉と表情・態度の不一致につながる点が示されている。その結果、相談者は違和感を覚え、安心して話せなくなるおそれがある。したがって、自己理解と自己受容を通じて自らを整えたうえで面談に臨むことが、信頼される支援者としての前提条件であると強調されている。
「受容」を「我慢すること」だと誤解しているから
多くの介護職が、「受容」の意味を誤解し、過度な自己犠牲を払っています。本来の受容とは、以下のように区別されるものです。
- よくある誤解:相手の言うこと全てに同意し、理不尽な扱いも我慢して従うこと
- 本来の受容:「相手はそう感じているのだ」という事実を、批判せずに認めること
受容的態度とは、相手を評価や審判せずに一人の人間として尊重することであり、相手の行動や言葉の内容そのものを肯定することではありません。この区別がつかないと、自分への攻撃までも「受け入れなくてはならない」と抱え込んでしまい、自尊心が傷つけられ続けてしまいます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
「受容的態度」については、「批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接すること。話し手をひとりの人間として大切に思いやること」と定義される。ここでは、話の内容の善悪判断よりも、まずその人の存在全体を尊重する姿勢が強調されており、失敗や弱さを含めて受け止めることがラポール形成の基礎になると示されている。
「時間がない」焦りが、関係づくりを阻害しているから
現場の人員不足により「時間がない」と感じる場面では、無意識に「早く終わらせたい」「早く結論を出したい」という思いが働き、相手を急かしてしまうことがあります。
このようなコミュニケーション不足や人間理解の不足は、相互の誤解や認識のずれを生む原因となります。「話を聴いてもらえない」という不満が利用者側の不安や不信感を招き、それがクレームや不穏な行動となって返ってくることで、職員がさらに傷つくという悪循環に陥っているケースも少なくありません。傷つく背景には、個人のスキル以前に、余裕のなさという環境要因も大きく影響しています。
出典元の要点(要約)
一般社団法人北海道医療ソーシャルワーカー協会・独立行政法人国立病院機構北海道医療センター良好な関係を築くためのコミュニケーション技法
「言葉が生む誤解」の解説では、言葉自体の意味の取り違えだけでなく、「時間がない」と援助者が感じた時点で関係づくりがうまくいかなくなると指摘する。時間がないと「早く終わらせたい」「早く結論を出したい」という思いが作用し、矢継ぎ早の質問や援助者側からの結論提示が増え、「満足感」という観点からは逆効果になるとされる。コミュニケーション不足と人間理解の不足が誤解を生むため、まずはしっかりと相手の話を聴くことが不可欠だと強調されている。
傷つきやすさの原因は、真面目さゆえの感情の抑圧や、受容に対する誤解、そして現場の余裕のなさにあります。これらは「あなたが悪い」のではなく、構造的・心理的なメカニズムによるものです。原因を正しく知ることが、自分を責めずに守るための第一歩となります。
よくある質問(FAQ)
- Qどうしても苦手な利用者がいて、受容できません。
- A
無理に好きになろうとする必要はありません。まずは「自分はこの人が苦手だ」と感じているありのままの自分を認めてあげてください。これを心理学では「純粋性(自己一致)」と呼びます。自分の感情を否定せずに認めることで心理的に安定し、その上で専門職としてどう関わるかを冷静に考えられるようになります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
純粋性(自己一致)の説明では、カウンセラー自身が不安定な状態だと、防衛的態度や虚勢が表に出て、言葉と表情・態度の不一致につながる点が示されている。その結果、相談者は違和感を覚え、安心して話せなくなるおそれがある。したがって、自己理解と自己受容を通じて自らを整えたうえで面談に臨むことが、信頼される支援者としての前提条件であると強調されている。
- Q暴言を吐かれると、聞き流そうとしても傷ついてしまいます。
- A
言葉の内容(事実)ではなく、その裏にある「感情」に注目してみてください。例えば「泥棒」と言われたら、「盗んだ・盗んでいない」という事実ではなく、「大切な物がなくて不安なんだな」という感情を汲み取ります。これを「感情の反映」といいます。相手の感情というボールを受け止める技術を使うことで、自分への攻撃として真に受けることを防げます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
「感情の反映」は、話し手が「今ここ」で感じている気持ちに焦点を当てていく技法とされる。「働きがいを感じて、嬉しく感じているんですね」「上司に認めてもらえないので、がっかりしているんでしょうか」などのように、言語的・非言語的コミュニケーションを手がかりに感情をとらえ、フィードバックしていく。これにより、話し手が自分の心の底にある感情に気づき、葛藤に向き合ったり自己理解を深める助けとなると説明される。
- Q心にもない「作り笑い」をすることに罪悪感があります。
- A
作り笑いは「嘘」ではなく、相手の不安を取り除き、人間関係を円滑にするための高度な「社会的スキル」です。自分の心まで無理に笑う必要はありません。「今は仕事として、相手のために笑顔という技術を使っているのだ」と割り切り、自分の本当の感情とは切り離して考えることで、心の負担を減らすことができます。
出典元の要点(要約)
岩手大学
作り笑いが受け手に与える影響―表出者との相互作用に着目して―
https://iwate-u.repo.nii.ac.jp/record/15847/files/cbsa-n38p33-42.pdf
群間での「敵意」上昇の差については、笑い禁止群では「相手の顔を見るのが怖かった」「ぎこちなくなった」といった感想がある一方、笑い多用群では「相手の相づちに優しさを感じた」「楽しそうに聞いてくれた」といった記述が見られたことから、作り笑いがコミュニケーションの中で潤滑油のような働きをし、ネガティブ感情を抑制した可能性があると考察している。この結果は、李ら(2011)や押見(2002)が述べた「作り笑いの社会的機能」や「心理社会的効果」を実証するものと位置づけられている。
- Qイライラしてしまい、つい顔や態度に出てしまいそうです。
- A
感情が動くのは人間として自然なことです。大切なのは、イライラを抑え込むことではなく、「自分は今、この言葉に怒りを感じているな」と客観的に気づくこと(自己覚知)です。自分の感情の動きを自覚し、吟味することで、感情に任せて反応するのではなく、専門職としてコントロールされた関わり(統御された情緒関与)を選択できるようになります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人北海道医療ソーシャルワーカー協会・独立行政法人国立病院機構北海道医療センター
良好な関係を築くためのコミュニケーション技法
「信頼関係を構築するには」の項では、バイステックの7つの原則が紹介される。1.個別化(対象者を個人としてとらえる)、2.意図的な感情の表出(対象者の感情表現を大切にする)、3.統御された情緒関与(援助者は自分の感情を自覚して吟味する)、4.受容(あるがままの姿を受け止める)、5.非審判的態度(対象者を一方的に非難しない)、6.自己決定(対象者の自己決定を促して尊重する)、7.秘密保持(秘密を保持して信頼感を醸成する)という、信頼関係を醸成するための基礎的な原則が整理されている。
まとめ:自分を守る「プロの技術」として、今日からできること
介護現場での対人援助は、感情労働と呼ばれるほど精神的な負荷が高い仕事です。利用者の暴言や理不尽な要求に傷ついてしまうのは、あなたが弱いからではなく、真面目に相手と向き合おうとしている証拠でもあります。
しかし、長く仕事を続けていくためには、自分自身を守る術が必要です。本記事で紹介した受容や自己一致は、単なる理想論ではなく、あなたの心を守るための実践的な「防具」となります。
まずは今日、自分の心の中に湧き上がる「辛い」「腹が立つ」という感情を否定せず、「そう感じている自分」を認めることから始めてみてください。相手の言葉を真に受けず、その裏にある感情を観察する視点を持つだけで、心の負担は少しずつ軽くなるはずです。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、日々現場で奮闘される皆様の心を少しでも軽くする一助となれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年12月16日:新規投稿


