利用者の穏やかな表情を見守りたいのに、現実は備品や道具を探すだけで体力を使い切り、心に余裕を持てないのが現場の苦しいところです。
立派な理論よりも、まずは棚一段を整えるだけで足の疲れは変わります。全部は無理でも、自分の体を楽にする現実的な一歩から始めましょう。
この記事を読むと分かること
- 探し物を減らす5Sの基本
- 職場のイライラを削るコツ
- 身体の負担を軽くする方法
- チームで共有する整頓術
- 無理なく続く整理の仕組み
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「探し物の時間」を削ることが、ケアのゆとりを生む第一歩

現場では、「もっと利用者様とゆっくり関わりたい」という理想を持ちながらも、実際には物品を探してフロアを往復するだけで体力が削られてしまう現実があります。
人手不足や多忙さを理由に、片付けや整理は後回しになりがちですが、それがさらに自分たちを忙しくしているという悪循環に悩む声も多く聞かれます。「建前では整理が大事だとわかっているけれど、今の状況では無理だ」というリアルな葛藤がある中で、まずは自分たちの足を休めるための現実的な工夫が必要です。
職場環境の整備(5S)は「やりやすさ」の土台
介護現場での生産性向上において、最も身近で取り組みやすいのが職場環境の整備(5S)です。整理・整頓・清掃・清潔・習慣化の5つのステップを通じて、探し物や無駄な動きといった付随業務を最小限に抑えることができます。
環境を整えることは、単なる掃除ではなく、現場のやりづらさを解消し、スタッフの心身のゆとりを生み出すための重要な戦略です。これにより、本来の目的である利用者への直接的なケアに集中できる状態を整えます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
生産性向上に向けた7つの視点には、①職場環境の整備(5S)、②業務の明確化・役割分担、③手順の共通化、④情報の共有、⑤記録のデータ化、⑥見守り機器等のICTの活用、⑦教育・研修の充実が含まれる。これらを組み合わせて取り組むことが効果的である。
整理整頓から始まる「現場改善のサイクル」
職場を整える活動を継続することは、日々の不便な状況を可視化し、解決していくための経営改善のプロセスそのものです。特別な会議を開く余裕がなくても、物品の配置を見直して「使いやすさ」を確認する作業は、立派な改善活動となります。
情報の共有や手順の共通化といった他の改善策を支えるためにも、まずは物の住所を明確に決めることが先決です。目に見える環境が変わることで、チーム全体の心理的ゆとりと、前向きな働きがいの向上に繋がっていきます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
介護サービスの生産性向上とは、単なる効率化やコスト削減ではなく、介護の価値を高め、利用者の生活の質(QOL)の向上と、介護職員の心身のゆとりや働きがいの向上(人的資本の充実)を同時に実現することである。
職場環境を整えることは、忙しい毎日の中で自分の体を守り、利用者と向き合う時間を生み出すための具体的な手段です。一度にすべてを変えるのではなく、まずは探し物が多い棚一段から手をつけることで、現場のやりやすさは着実に変わっていきます。
現場で起きやすい「探し物」が負担を生んでいる3つの事例

現場では、「整理したほうがいいのはわかっているけれど、次々にコールが鳴って片付ける暇がない」という声が絶えません。忙しいからこそ後回しにしてしまい、その結果としてさらに探し物が増えるという悪循環に陥っているのが介護現場のリアルな葛藤です。
【事例1】「あれどこ?」の往復で体力を消耗するフロア
| 状況 | 共有の備品庫が整理されておらず、必要な処置セットや爪切りが定位置に置かれていない。 |
|---|---|
| 困りごと | 介助の途中で物が見つからず、フロアと備品庫を何度も往復し、本来のケアが中断される。 |
| よくある誤解 | 「数分探せば見つかるのだから、大きな問題ではない」と、探し物を業務の一部として受け入れている。 |
| 押さえるべき視点 | 職場環境の整備(5S)を行い、探し物という「付随業務」を削ぎ落として身体の負担を減らす。 |
5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣化)を徹底することは、単なる掃除ではなく、現場のやりづらさを物理的に取り除く活動です。探し物という無駄な動きを最小限に抑えることで、スタッフの心身のゆとりを生み出し、利用者と向き合う時間を確保します。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
生産性向上に向けた7つの視点には、①職場環境の整備(5S)、②業務の明確化・役割分担、③手順の共通化、④情報の共有、⑤記録のデータ化、⑥見守り機器等のICTの活用、⑦教育・研修の充実が含まれる。これらを組み合わせて取り組むことが効果的である。
【事例2】「人によって置き場所が違う」ことで起きる摩擦
| 状況 | スタッフごとに「自分が使いやすい場所」に物を置くため、シフトが交代するたびに配置が変わる。 |
|---|---|
| 困りごと | 「前はここにあったのに」という小さなストレスが積み重なり、スタッフ間の連携に支障が出る。 |
| よくある誤解 | 「自分のやり方のほうが効率的だ」と個人が判断し、チーム全体の使いやすさが後回しになる。 |
| 押さえるべき視点 | 手順の共通化を図り、誰がいつ見ても一目で物の住所がわかる状態をチームで作る。 |
個人の工夫をチームの仕組みに変えるのが標準化の視点です。物の配置を共通化することで、確認作業や迷う時間を削減できます。こうした小さな改善の積み重ねが、結果としてスタッフの働きがいの向上(人的資本の充実)に繋がっていきます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
介護サービスの生産性向上とは、単なる効率化やコスト削減ではなく、介護の価値を高め、利用者の生活の質(QOL)の向上と、介護職員の心身のゆとりや働きがいの向上(人的資本の充実)を同時に実現することである。
【事例3】「忙しくて片付けられない」が事故のリスクを呼ぶ
| 状況 | 処置車(ワゴン)の上にゴミや古い備品が混在し、整理されないまま介助を続けている。 |
|---|---|
| 困りごと | 必要な道具をすぐ取り出せず、焦りからミスを誘発したり、不衛生な環境がリスクとなる。 |
| よくある誤解 | 「忙しい現場では、整理整頓よりも目の前の介助を優先するのが当然だ」という思い込み。 |
| 押さえるべき視点 | 環境を整えることはケアの質を保つための不可欠な準備であると再定義する。 |
5S活動は、単なる見た目の美しさではなく、業務の安全と効率を支える経営改善ツールです。作業環境が整うことでミスが減り、スタッフは焦ることなく専門性を発揮できるようになります。これこそが生産性向上が目指す「質の高いケア」の土台です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう
https://www.mhlw.go.jp/content/000812225.pdf
PDCAサイクルとは、計画、実行、評価、改善の一連のプロセスを繰り返し行う手法である。この循環を繰り返す目的は、日頃の経営改善に役立て、生産性を向上させることにある。
現場で起きる探し物の多くは、個人の能力ではなく環境の仕組みに原因があります。5Sを通じて「やりづらさ」を一つずつ解消することは、決して遠回りではありません。自分たちの体を楽にし、安全にケアを届けるための現実的な解決策なのです。
なぜ「片付けたい」と思っていても、現場は散らかってしまうのか

現場では、「使った物を元の場所に戻してほしい」と誰もが思っています。しかし、実際には介助中にナースコールが重なったり、急ぎの対応が入ったりすることで、片付けが後回しになるのは避けられない現実です。
「落ち着いたらやろう」と考えていても、次から次へと業務が押し寄せ、結局そのままになってしまう。「自分は整理しているのに、他のスタッフがバラバラに置くから意味がない」という諦めの声も多く聞かれます。こうしたリアルな葛藤の背景には、個人の意識の問題だけではない、構造的な理由が隠れています。
1. 「動いていること=仕事」という固定観念
介護現場では、常に動き回って利用者の対応をすることが「一生懸命働いている」と評価されやすい傾向にあります。そのため、環境を整えるための計画(Plan)や準備の時間が、どこか「手を抜いている」あるいは「休んでいる」ように感じられてしまう心理的な壁が存在します。
しかし、環境が整っていない状態での「バタバタ」は、探し物や二度手間を生み出し、スタッフの心理的負担を増大させる原因となります。目に見える動きだけでなく、動線を整える時間を確保することが、結果として自分たちの心身を守ることに繋がります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
介護サービスの生産性向上とは、単なる効率化やコスト削減ではなく、介護の価値を高め、利用者の生活の質(QOL)の向上と、介護職員の心身のゆとりや働きがいの向上(人的資本の充実)を同時に実現することである。
2. 物の住所や手順が「共通化」されていない
「どこに何を置くか」が個人の判断に任されている属人化の状態も、現場が散らかる大きな要因です。
- 手順のバラつき:片付けのルールが人によって違うため、整理してもすぐに崩れる
- 情報の共有不足:新しく決めた置き場所が全員に伝わっておらず、結局探し物が発生する
これらは7つの視点のうち「手順の共通化」や「情報の共有」が不足しているサインです。仕組みとして整っていないために、善意で片付けをしても長続きせず、現場の「やりづらさ」が解消されないまま放置されてしまいます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
生産性向上に向けた7つの視点には、①職場環境の整備(5S)、②業務の明確化・役割分担、③手順の共通化、④情報の共有、⑤記録のデータ化、⑥見守り機器等のICTの活用、⑦教育・研修の充実が含まれる。これらを組み合わせて取り組むことが効果的である。
現場が整わないのは、スタッフのやる気がないからではなく、改善を回すためのPDCAのサイクルが「実行(Do)」に偏りすぎているためです。「なぜ散らかるのか」という原因を仕組みの視点で捉え直すことが、無理のない職場環境への第一歩となります。
職場環境の整備(5S)と業務改善に関するよくある疑問
「片付けをしても、どうせすぐに散らかってしまう」「今は忙しくてそんな暇はない」と感じることもあるでしょう。現場でよく聞かれる「わかっているけれど難しい」という戸惑いについて、エビデンスに基づいた解決のヒントをお答えします。
- Q毎日忙しくて、片付けをする時間さえありません。それでも「5S」をやるべきですか?
- A
探し物をする時間は、利用者へのケアに直接繋がらない「付随業務」です。職場環境を整えてこの無駄を削ることは、結果としてあなた自身の足の疲れや時間のロスを減らし、心身のゆとり(余力)を生み出すために不可欠なステップです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
介護サービスの生産性向上とは、単なる効率化やコスト削減ではなく、介護の価値を高め、利用者の生活の質(QOL)の向上と、介護職員の心身のゆとりや働きがいの向上(人的資本の充実)を同時に実現することである。
- Q「整理・整頓」と「PDCAサイクル」は、具体的にどう関係しているのですか?
- A
物の最適な配置を考え(計画)、実際に置いてみて(実行)、使い勝手が良くなったかを確認し(評価)、それをチームのルールにする(改善)という流れそのものが、改善のサイクル(PDCA)を回す練習になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう
https://www.mhlw.go.jp/content/000812225.pdf
PDCAサイクルとは、計画、実行、評価、改善の一連のプロセスを繰り返し行う手法である。この循環を繰り返す目的は、日頃の経営改善に役立て、生産性を向上させることにある。
- Q一人で片付けても、他のスタッフが元に戻してくれません。定着させるコツはありますか?
- A
「情報の共有」や「手順の共通化」が重要です。自分だけのルールにするのではなく、誰が見ても一目で戻す場所がわかるラベルを貼るなど、仕組みとして整えることで、チーム全体の「やりづらさ」を解消し、改善を習慣化させることができます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省、株式会社TRAPE令和6年度 介護現場の生産性向上に関する普及加速化事業一式 生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向け ビギナーセミナー2024
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2024_biginner_trape.pdf
生産性向上に向けた7つの視点には、①職場環境の整備(5S)、②業務の明確化・役割分担、③手順の共通化、④情報の共有、⑤記録のデータ化、⑥見守り機器等のICTの活用、⑦教育・研修の充実が含まれる。これらを組み合わせて取り組むことが効果的である。
業務改善と聞くと身構えてしまいますが、まずは「今、自分が困っている探し物」を一つなくすことからで構いません。職場が整うことで、自分自身のイライラが減り、利用者との穏やかな時間を取り戻せるようになります。少しずつ、あなたの体が楽になる環境を作っていきましょう。
まとめ:探し物を減らす一歩が、あなたと利用者のゆとりを作る
「整理整頓」と聞くと、単なる片付けや掃除のように感じられるかもしれません。しかし、介護現場における職場環境の整備(5S)は、スタッフの動きをスムーズにし、探し物という「ケアではない時間」を物理的に削ぎ落とすための確かな戦略です。
この記事で紹介した内容の要点は以下の通りです。
- やりやすさの土台作り:5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣化)を整えることは、生産性向上における最も基本的で効果の高い視点である。
- 心身のゆとりを生む:探し物や無駄な往復を減らすことで、スタッフの身体的・心理的な負担を軽減し、本来やりたかったケアに集中する余力を作る。
- 仕組みで解決する:個人の努力に頼るのではなく、物の住所を決め、手順を共通化することで、誰がいつ働いてもスムーズに動ける現場を目指す。
一度にすべての棚を整理する必要はありません。まずは今日一日の業務の中で、最も「あれどこ?」と探し回った物一つ、あるいは共有棚の段一段から手をつけてみてください。環境が整うことで生まれる「わずかな時間のゆとり」が、利用者への穏やかな関わりと、あなた自身の働きがいを守ることに繋がります。
日々の過酷な現場の中で、自分自身の体を楽にするための「仕組み作り」を大切にしてください。小さな改善の積み重ねが、結果として質の高い介護を支える大きな力となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年1月3日:新規投稿


