【介護】後見人が「決めてくれない」のはなぜ?現場が知りたい権限と限界の正解

「医療行為の同意」を求めても断られ、「費用の支出」は認められず、緊急時には連絡がつかない。後見人に対して、そんな不満を感じたことはありませんか。

現場は今すぐ決めてほしいのに、なぜ動いてくれないのか。そこには、私たち現場が誤解しやすい「後見人の本当の役割」が関係しています。全ては無理でも、ここだけ押さえて連携を変えてみませんか。

この記事を読むと分かること

  • 後見人が「すぐに決めない」本当の理由
  • 医療同意や財産管理における「本来の権限」
  • 「代行決定」を行うための厳格なルール
  • 現場ができる具体的な「後見人を動かす連携」

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 後見人は「親代わり」だと思っている
  • 医療同意を断られて困ったことがある
  • 本人の希望より「節約」が優先されている気がする
  • 何を根拠に話し合えばいいか分からない

結論:後見人は「万能な決定者」ではありません

男性介護士と、女性の成年後人の画像

現場では、「後見人がついているなら、全て判断してくれるはず」と思いがちです。しかし実際には、「持ち帰って検討します」と言われ、決定が先送りにされることに苛立ちを感じる場面も多いのではないでしょうか。

「専門職なのになぜ?」と思うかもしれませんが、実は後見人が独断ですぐに決めないことこそが、ガイドラインで定められた本来の在り方とされています。

「代わりの決定」はあくまで最後の手段

後見人の仕事は、最初から本人の代わりに決めること(代行決定)ではありません。まずは本人が自分で決められるよう支援すること、つまり「意思決定支援」が原則です。

どんなに認知症が進行しても、支援があれば意思を示せる可能性があります。そのため、支援を尽くさずに安易に後見人が決めることは避けなければなりません。

代行決定は、どうしても本人の意思確認が困難な場合にのみ許される「最後の手段(補充的な役割)」と位置づけられています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

意思決定支援を行っても本人の意思決定が困難な場合に限り、本人の意思決定を代行(代行決定)することができます。代行決定はあくまで補充的なものであることを認識する必要があります。

厚生労働省

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

代行決定を行う場合であっても、本人の自己決定権に対する制約は必要最小限度にとどめなければなりません(第6原則)。

「最善の利益」には「本人の気持ち」も含まれる

後見人が費用の支出を渋る時、現場は「本人のためなのに」と感じます。しかし、後見人が考える「利益」と現場の感覚にはズレがあることがあります。

ガイドラインにおける「最善の利益」とは、単に財産を守ったり、身体の安全を確保したりすること(客観的利益)だけではありません。

本人が何を望んでいるか、どんな価値観を持っているかという「主観的利益」を最大限尊重した上で、総合的に判断することこそが、本当の意味での最善の利益とされています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

最善の利益の検討に当たっては、本人の意向、感情、価値観(選好)を最大限尊重することを前提に、客観的利益等も含めて総合的に考慮する必要があります。

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意思決定支援を踏なえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

支援者が「良かれ」と思って本人に勧める内容が、一般的な価値観や支援者自身の価値観に基づいた「客観的利益」に偏っていないか、本人の意向や価値観に基づく「主観的利益」が軽視されていないかを常に振り返ることが重要です。

一人では決められないからこそ「チーム」が必要

後見人は法律や財産のプロですが、本人の「日常の姿」については素人です。「何が好きか」「どういう時に拒否するか」といった情報は、現場の皆さんしか持っていません。

そのため、後見人が独断で決めるのではなく、福祉関係者等を含めた「支援チーム」で情報を共有し、検討するプロセスが不可欠です。

現場からの情報提供がなければ、後見人は「本人の意思」を推定できず、結果として判断を下すことが難しくなってしまうことがあります。

出典元の要点(要約)

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

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後見人等は、一人で支援を行うのではなく、福祉関係者や親族等と連携し、チームとして本人を支援体制(支援チーム)を構築することが重要です。

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

後見人等は、支援チームのメンバーと日常的に情報を共有し、本人の変化や支援の方向性について協議を行うことで、より適切な支援を行うことが可能となります。

現場でありがちな「すれ違い」3つの事例

現場では、「当然やってくれるはず」と思っていたことが断られたり、緊急時に動きが鈍かったりと、後見人への不信感が募ることがあります。なぜそんな対応になるのか、ガイドラインの視点で見てみましょう。

【事例1】「手術の同意書」にサインしてくれない

入院や手術が必要になり、病院から同意書へのサインを求められて後見人に依頼したところ、「私にはできません」と断られてしまうことがあります。

現場としては「家族代わりなのになぜ?」と困惑しますが、後見人は無条件に医療同意ができるわけではありません。

他人の人生に関わる重大な決定を代行することは、本人の権利を制約する行為でもあります。そのため、本人の意思確認を経ずに安易にサインすることは、必要最小限の原則に反すると判断される可能性があります。

出典元の要点(要約)

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本人の決定が本人に見過ごすことのできない重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、本人の決定をそのまま尊重することは相当ではありません。

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代行決定を行う場合であっても、本人の自己決定権に対する制約は必要最小限度にとどめなければなりません(第6原則)。

【事例2】「本人の楽しみ」への出費を渋られる

「本人が好きなお菓子を買いたい」「外出レクに参加させたい」と提案しても、「無駄遣いだ」「財産が減る」と却下されることがあります。

現場は「本人の幸せ」を考えますが、後見人は「財産を守る義務」を意識しがちです。しかしガイドラインでは、支援者側の価値観(節約が善など)に偏っていないか、常に振り返ることが重要としています。

「最善の利益」とは、本人の意向や感情を最大限尊重したものであるべきです。単なる財産保全だけでなく、主観的利益も考慮される必要があります。

出典元の要点(要約)

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

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最善の利益の検討に当たっては、本人の意向、感情、価値観(選好)を最大限尊重することを前提に、客観的利益等も含めて総合的に考慮する必要があります。

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

支援者が「良かれ」と思って本人に勧める内容が、一般的な価値観や支援者自身の価値観に基づいた「客観的利益」に偏っていないか、本人の意向や価値観に基づく「主観的利益」が軽視されていないかを常に振り返ることが重要です。

【事例3】方針決定を「保留」や「先送り」される

ケアプランの変更や入所先の決定を急ぎたいのに、「少し考えさせてください」と返事を保留されることがあります。現場は「優優不断だ」と感じるかもしれません。

しかし、これは慎重にアセスメントを行っている可能性があります。意思決定能力は「ある・なし」ではなく、支援によって変動するものです。

「今は決められないだけかもしれない」と考え、環境を変えたり時間を置いたりして可能性を探ることは、拙速な代行決定を避けるために必要なプロセスです。

出典元の要点(要約)

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

意思決定能力は、あるかないかという二者択一的なものではなく、支援の有無や程度によって変動するものであるため、本人に意思決定能力がないと決めつけることなく、4要素を満たすことができるように後見人等を含めた支援チーム全体で支援をすることが必要です。

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

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課題が生じてからいきなり意思決定支援をしようとしても容易ではなく、日頃から日常的な事柄について本人が自ら意思決定をすることができるような支援がされ、そのような経験が蓄積されるという環境が整備されている必要があります。

なぜ後見人との連携は「うまくいかない」のか?

男性介護職員の画像

「連携してください」と研修で言われても、実際には後見人と顔を合わせる機会すら少ないのが現実ではないでしょうか。

お互いに「本人のため」を思っているはずなのに、なぜか話が噛み合わない。その背景には、個人の資質以前に、構造的なすれ違いが存在している可能性があります。

「親代わり」という思い込みによるズレ

現場の介護職は、後見人を「家族の代わりになんでも決めてくれる存在」として期待しがちです。しかし、後見人の法的な役割は、あくまで「補充的なもの(最後の手段)」とされています。

後見人は「自分で決められるよう支援する」ことが第一義であり、現場が期待する「即座の代行決定」を行うことには、法的な慎重さが求められるのです。

この役割認識のギャップが、現場に「何もしてくれない」「冷たい」という印象を与えてしまう要因の一つになっていると考えられます。

出典元の要点(要約)

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意思決定能力は、あるかないかという二者択一的なものではなく、支援の有無や程度によって変動するものであるため、本人に意思決定能力がないと決めつけることなく、4要素を満たすことができるように後見人等を含めた支援チーム全体で支援をすることが必要です。

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意思決定支援を行っても本人の意思決定が困難な場合に限り、本人の意思決定を代行(代行決定)することができます。代行決定はあくまで補充的なものであることを認識する必要があります。

「安全」と「自由」の価値観の対立

現場や後見人は、責任感からつい「安全」「健康」「財産保全」といった客観的な利益を優先してしまいがちです。

一方で、本人が望むのは「好きなものを食べたい」「自由に出かけたい」といった主観的な利益であることが多く、これらは時にリスクを伴います。

支援者が「良かれと思って」自分の価値観を優先し、本人の希望を軽視してしまうと、双方の正義が衝突し、いつまでも平行線をたどってしまうことがあります。

出典元の要点(要約)

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最善の利益の検討に当たっては、本人の意向、感情、価値観(選好)を最大限尊重することを前提に、客観的利益等も含めて総合的に考慮する必要があります。

厚生労働省

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

支援者が「良かれ」と思って本人に勧める内容が、一般的な価値観や支援者自身の価値観に基づいた「客観的利益」に偏っていないか、本人の意向や価値観に基づく「主観的利益」が軽視されていないかを常に振り返ることが重要です。

「情報不足」で動けなくなっている

後見人は日常的に本人と一緒にいるわけではありません。そのため、判断の根拠となる「本人の今の気持ち」や「生活の様子」を知る手段が限られています。

現場からの具体的な情報提供がなければ、後見人は「推定意思」を構築することができず、結果として判断を保留せざるを得なくなります。

「決めてくれない」のではなく、「決めるための材料(情報)がない」という状況に陥っているケースもあると考えられます。

出典元の要点(要約)

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後見人等は、一人で支援を行うのではなく、福祉関係者や親族等と連携し、チームとして本人を支援する体制(支援チーム)を構築することが重要です。

厚生労働省

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

後見人等は、支援チームのメンバーと日常的に情報を共有し、本人の変化や支援の方向性について協議を行うことで、より適切な支援を行うことが可能となります。

うまくいかないのは、誰かのせいではなく「役割の誤解」や「情報不足」が原因かもしれません。まずはお互いの立場の違いを知ることが、解決への第一歩となります。

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現場の「迷い」を解消するQ&A

後見人の動きが鈍いと感じる時や、家族との意見が合わない時、現場はどう動くべきでしょうか。ガイドラインの原則に基づき、判断のヒントを整理しました。

Q
Q1. 後見人なら医療同意書にサインできますか?
A
原則として、後見人の独断でサインすることは慎むべきとされます。代行決定は「見過ごすことのできない重大な影響」がある場合に限定され、必要最小限にとどめる必要があるからです。
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本人の決定が本人に見過ごすことのできない重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、本人の決定をそのまま尊重することは相当ではありません。

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代行決定を行う場合であっても、本人の自己決定権に対する制約は必要最小限度にとどめなければなりません(第6原則)。

Q
Q2. 家族と後見人の意見が対立したら、どちらに従うべきですか?
A
誰の意見かではなく、「本人の意思(または推定意思)」が最優先と考えられます。後見人は家族の意向(客観的利益)のみで決めるのではなく、本人の価値観(主観的利益)を最大限尊重して検討する必要があります。
出典元の要点(要約)
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本人の意思決定が困難な場合であっても、まずは明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意思)に基づき行動することを基本とします(第4原則)。

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支援者自身の価値観や、家族等の意向(客観的利益)のみに基づいて決定するのではなく、本人の意向、感情、価値観(主観的利益)を最大限尊重することを前提に検討する必要があります。

Q
Q3. 意思疎通が全くできない場合、後見人が決めてくれますか?
A
即座に決めるのではなく、まずは「推定意思」の探索を行います。過去の言動や生活歴などの根拠に基づき、チームで合理的に推定するプロセスを経た上で、代行決定へと移行します。
出典元の要点(要約)
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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

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本人の意思決定が困難な場合であっても、まずは明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意思)に基づき行動することを基本とします(第4原則)。

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意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

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本人の意思決定や意思確認が困難と評価された場合、後見人等を含めた支援チームが集まって、本人の日常生活の場面や事業者のサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録、これまでの生活史、人間関係等様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら本人の意思及び選好を推定することを試みることが必要です。

後見人が「動かない」背景には、本人の権利を守るためのルールがあります。独断ではなく、チームで根拠(推定意思)を積み上げるプロセスこそが、後見人の判断を支える力になるでしょう。

まとめ:後見人を「動かす」のは現場の力です

後見人との関係は、「決めてもらう側」と「決める側」という対立構造になりがちです。しかし、本来は本人の意思を実現するための「同じチームの一員」のはずです。

遠い存在のように感じる後見人を、現場の力で巻き込んでいくことは十分に可能と考えられます。明日から、以下のような具体的なアクションで連携を深めてみませんか。

  • 「決めてください」と迫るのではなく、「本人は普段こう言っています」という情報を提供する
  • ケアカンファレンスに後見人を招き、顔を合わせて「チーム」としての意識を共有する
  • 日々のケア記録に、本人の拒否や好みの変化を具体的に残し、アセスメントの証拠にする

現場職員こそが、後見人が適切な判断をするための「目」であり「耳」となる重要な存在と言えるでしょう。皆さんの情報提供が、後見人との連携を深め、結果として本人の生活を豊かにすることにつながるでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。



更新履歴

  • 2026年1月31日:新規投稿

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