【介護】血管性認知症の「やる気がない」「まだら症状」はなぜ?叱らず済む対応法

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「昨日はできたのに今日は動かない」というまだらな症状や、無気力な姿に「わざとでは」と疑ってしまう。血管性認知症の現場では、そんな理解不能な行動に悩み、つい強い言葉を使っては自己嫌悪に陥る方が少なくありません。

本人の性格の問題ではなく、脳の血管障害による医学的な症状かもしれません。すべてを完璧に対応しようとせず、病気の特性による「できないタイミング」があると知るだけで、不必要な衝突を減らし、心に余裕を持ちやすくなると考えられます。

この記事を読むと分かること

  • 変動が起きる医学的理由
  • 「やる気なし」は脳の症状
  • 叱らず済む現実的な調整法

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 「昨日はできた」と怒ってしまう
  • 一日中何もしない姿にイライラ
  • 認知症=物忘れだと思っていた
  • 薬でも意欲が戻らず焦っている

結論:血管性認知症は「階段状」に変化し、「意欲」が障害されることがある病気です。叱っても改善しにくいと考えられます。

男性入居者と女性介護職員の画像

現場では、「利用者のペースに合わせましょう」という理想は痛いほど理解されています。しかし、限られた人員と時間の中で業務を回さなければならない現実があり、動かない利用者を前に「なぜ今なのか」と焦りを感じてしまうことも少なくありません。

頭では「病気だから」とわかっていても、つい強い口調になってしまい、後で自己嫌悪に陥る。そんな葛藤こそが、血管性認知症ケアのリアルな悩みではないでしょうか。

「日によって違う」のは病気の特性です

血管性認知症(VaD)の最大の特徴は、症状が一定ではなく「階段状」に進行したり、日によって良かったり悪かったりする「動揺性の経過」をたどることです。

アルツハイマー型のように緩やかに進むのとは異なり、「昨日はできたことが今日はできない」という現象が起こることがあります。これは本人の気分や甘えではなく、脳血管障害に基づく医学的な症状である可能性があります。

また、手足の麻痺や感覚障害などの「局所神経徴候」を伴うことも多く、身体的な動きにくさが影響している場合もあります。これらを理解し、「今はできないタイミングなのだ」と割り切る視点が必要だと考えられます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

VaD の臨床的な特徴は,脳血管障害の存在と,痴呆の出現ないし悪化との間に時間的な関連があることであり,階段状のあるいは動揺性の経過,局所神経徴候の存在などが重要である

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

AD との鑑別点として,動揺性の経過,階段状の悪化,夜間錯乱,人格の保持,うつ状態,身体的愁訴,感情失禁,高血圧既往,脳卒中既往,動脈硬化の合併,局所神経徴候などが重要である

「やる気がない」のは脳の障害です

一日中ぼーっとしていたり、リハビリを拒否したりする姿を見て、「怠けている」と感じてしまうことがあるかもしれません。しかし、これは「アパシー(自発性の低下)」と呼ばれる症状の可能性があります。

アパシーは、アルツハイマー型よりも血管性認知症で頻度が高いと報告されています。これは前頭葉などの機能障害に関連するとされており、本人自身の意思で「やる気」を出すことが難しい状態とされています。

「頑張ればできる」という精神論で励ましたり、叱責したりしても改善は期待しにくいです。むしろプレッシャーとなり、関係性を悪化させる原因になり得ます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

アパシーは,AD よりも VaD で頻度が高いことが報告されている

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

アパシーは,前頭葉機能障害あるいは基底核障害と関連することが示唆されている

感情のブレーキが効かない「感情失禁」

些細なことで突然怒り出したり、泣き出したりする「感情失禁」も、血管性認知症で見られることがある特徴です。

これは感情をコントロールする脳の機能が障害されているために起こると考えられます。現場で「急に不機嫌になった」と感じる場面でも、本人には悪意がないケースもあります。

また、うつ状態や身体的な不調を訴えることもあり、これらも脳血管障害の後遺症として現れる症状の一つです。論理的に説得しようとするよりも、刺激を避けて落ち着くのを待つ姿勢が有効な場合があると考えられます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

皮質下性 VaD(Binswanger 病など)では,(中略)感情失禁などを呈し,緩徐な進行経過をとることがある

血管性認知症の「できない」「やらない」は、脳のダメージによる「動揺性」「アパシー」という症状と捉えられます。性格の変化とは限りません。叱っても解決しにくいため、「今日はそういう日」と割り切り、環境調整に徹することが、お互いを守る一つの策だと考えられます。


現場で頻発する「理解不能な拒否」の正体とは?

女性の介護職員の画像

「さっきと言ってることが違う」「人を見て態度を変えているのでは?」現場ではそんな疑念が渦巻くことがあります。しかし、その理解できない変化は、血管性認知症のサインかもしれません。

昨日はできたのに、今日は全く動こうとしない

状況食事や着替えなど、昨日はスムーズだった動作が、今日は介助しようとしても体が固まったように動かない。
困りごと「ふざけている」「私を困らせようとしている」と感じてイライラする。
視点これは「気分のムラ」ではなく、脳血管障害特有の「動揺性の経過」「局所神経徴候(麻痺や動作緩慢)」の波と捉えられます。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

VaD の臨床的な特徴は,脳血管障害の存在と,痴呆の出現ないし悪化との間に時間的な関連があることであり,階段状のあるいは動揺性の経過,局所神経徴候の存在などが重要である

一日中テレビの前から動かず、お風呂も頑固に拒否する

状況促しても「うるさい」「後で」と無気力な返答のみで、一日中パジャマのまま過ごす。
困りごと「怠けている」と思い込み、無理やり立たせようとして怒鳴り合いになる。
視点これは怠慢ではない可能性があり、「アパシー(自発性の低下)」という中核症状の一つである可能性があります。うつ病とも異なる場合があり、脳の前頭葉機能等の障害に関連することがあります。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

アパシーは,AD よりも VaD で頻度が高いことが報告されている

さっきまで普通だったのに、急に怒り出したり泣き出したりする

状況穏やかに話していた直後、些細なことで激昂したり、突然泣き崩れたりする。
困りごと感情のスイッチが読めず、接するのが怖くなる。
視点「感情失禁」と呼ばれる症状で、感情のブレーキが効かなくなっている可能性があります。論理的な説得よりも、刺激を減らす環境調整が必要だと考えられます。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

皮質下性 VaD(Binswanger 病など)では,(中略)感情失禁などを呈し,緩徐な進行経過をとることがある

「わがまま」に見える行動も、脳血管障害による「動揺性」「感情失禁」という症状である可能性があります。これらは本人の意思で制御しにくい場合があります。「病気のせいだ」と知ることで、イライラの矛先を変えやすくなります。


なぜ「まだら」や「無気力」が起きるのか?脳内で起きていること

女性の介護職員の画像

「昨日は着替えができたのに、今日は介助が必要」「さっきまで笑っていたのに急に怒り出した。」現場ではこうした変化に振り回され、「私のケアが悪かったのか」「本人の性格の問題か」と悩み続けています。

しかし、この不可解に見える変動には、脳血管障害特有の医学的な理由があると考えられます。理由を知ると、「相手のせい」でも「自分のせい」でもなく、「脳の構造的な問題」だと腑に落ちやすくなると考えられます。

「認知症=ゆっくり進行」という誤解

認知症といえば「年単位でゆっくり悪化する」というイメージ(建前)が一般的ですが、それは主にアルツハイマー型の特徴です。現実の血管性認知症(VaD)は、脳梗塞や出血が起こるたびに「階段状」にガクンと機能が落ちたり、日によって症状が良かったり悪かったりする「動揺性の経過」をたどります。

「昨日はできた」という事実は、今日の能力を保証しにくいです。脳の状態が物理的に変動しているため、現場のケアもその日の波に合わせる柔軟性が必要になることがあります。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

AD との鑑別点として,動揺性の経過,階段状の悪化,夜間錯乱,人格の保持,うつ状態,身体的愁訴,感情失禁,高血圧既往,脳卒中既往,動脈硬化の合併,局所神経徴候などが重要である

脳の「一部」だけが壊れているから

「認知症になれば全体的に能力が落ちる」と思われがちですが、血管性認知症は異なる場合があります。血管性認知症は異なる場合があります。血管が詰まった場所(局所)の機能だけが失われるため、「記憶力は抜群なのに、料理の手順だけ分からない」といったまだらな状態が生じることがあります。

また、麻痺や嚥下障害などの「局所神経徴候」も病巣の場所によって現れます。能力の凸凹は「ふざけている」のではなく、脳のダメージが局所的な場所であるために起こりうる現象です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

脳梗塞巣の部位や容積に依存した認知機能障害や局所神経徴候(麻痺,感覚障害,視野障害,構音障害,嚥下障害など)を呈する

「やる気スイッチ」の回路が断線している

「励ませばやる気が出るはず」というのは、脳の機能が保たれている場合の話です。血管性認知症で頻発するアパシー(意欲低下)は、意欲を司る前頭葉基底核の回路そのものが障害されている可能性がある状態です。

これは「気持ちの問題」ではなく、物理的な「回路の断線」です。どれだけ強い言葉で叱咤しても、断線した回路は繋がりにくいです。本人の意志ではどうにもならない症状であることを理解する必要があると考えられます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

アパシーは,前頭葉機能障害あるいは基底核障害と関連することが示唆されている

「まだら」や「無気力」は、本人の性格ではなく、脳の回路が壊れているために起きる物理的な現象と考えられます。私たち介護職が「やる気を出させよう」と焦っても、断線した回路は繋がりにくいです。病気の構造を理解し、無理な励ましを手放すことが、お互いにとっての救いになり得ると考えられます。

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薬や対応に関する現場の迷いへの回答

「この症状は薬で治るのか?」「どう対応するのが正解なのか?」日々のケアの中で生まれる迷いは尽きません。ここでは、エビデンスに基づいた医学的な見解を、現場の視点に合わせてQ&A形式で解説します。

Q
「やる気」を出させる薬はないのですか?
A
現在のところ、確立された薬物療法はありません。

アパシー(意欲低下)に対して、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やメマンチンなどが試されることがありますが、明確な有効性は確立されていないとされています。薬での解決を期待しすぎず、非薬物的なかかわりが重要とされることがあります。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

ChE 阻害薬,メマンチン,抗うつ薬,精神刺激薬のアパシーに対する効果については,少数の報告はあるものの,確立されたものはない

Q
暴れたり興興したりする場合、薬で落ち着かせるべきですか?
A
薬は第一選択ではありません。まずは環境調整を行います。

BPSD(行動・心理症状)に対しては、まず非薬物療法(ケアの工夫や環境調整)を行うことが推奨されています。薬物療法は副作用のリスクがあるため、非薬物療法で効果がない場合に検討されることがあります。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf

BPSD に対しては,まずは非薬物療法を行うことが推奨される

Q
アルツハイマー型と合併することはありますか?
A
はい、合併することもあります(混合型認知症)。

アルツハイマー型認知症(AD)の病変と、脳血管障害が併存するケースは頻度が高いとされることがあります。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf

AD 病変と脳血管障害が併存する(混合型認知症)頻度は高く,特に高齢者においては高頻度である

薬で解決できることには限界があり、特に「意欲」に関しては特効薬がないとされています。まずは病気の特性を正しく理解し、非薬物療法(環境調整やケア)を優先することが、ガイドラインでも推奨されるアプローチの一つです。


まとめ:明日から「できない日」をそっと受け入れるために

現場では、「どんな時も笑顔で」「利用者のペースで」という理想が常に語られます。しかし、実際の人員配置や時間に追われる中で、その理想を貫くのは簡単ではありません。

「昨日はできたのに」と焦ってしまうのは、あなたが目の前の利用者を良くしたいと願っている表れです。だからこそ、うまくいかない時に自分を責めすぎないようにしてください。

血管性認知症の「できない」や「やらない」は、脳の回路が一時的に繋がりにくくなる物理的な現象と捉えられることがあります。どれだけ励ましても、回路が断線している時はスイッチが入りにくいと考えられます。

まずは明日、「今日は波が悪い日なんだ」と心の中でつぶやき、介護記録にそのままメモすることから始めるのはどうでしょうか?

「本人のわがまま」ではなく「脳の症状」として記録する。その客観的な一歩が、あなたと利用者を不必要な衝突から守るための一つの盾になり得ます。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、日々奮闘する皆さまの支えになれれば幸いです。


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更新履歴

  • 2025年9月15日:新規公開
  • 2025年10月21日:一部レイアウト修正
  • 2026年2月16日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。

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