介護職が利用者にイライラするのはなぜ?我慢しても自分を責めてしまう理由

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コールと時計に囲まれた介護職員が、イライラの背景と自責を見つめ直すイラストです。

「はやくしてください!」「またトイレ?15分前に言ったでしょ?」別の利用者の介助や記録に追われる最中、何度も呼ばれると、普段なら選ばない強い言葉が出ることがあります。その場を回すのに必死だったのに、落ち着くと「こんな言い方をしたかったわけではない」という後悔が残ります。

頭では利用者にも事情があると分かっています。それでも、次のコール、終わらない業務、休む間もない疲れが重なると、感情が追いつかなくなることがあります。その瞬間のイライラだけを見て「介護士に向いていない」と決めると、強い口調の前に何が重なっていたのかを見落とします。

感情が生じたことと、実際に選んだ言葉は分けて振り返れます。全部を一度に直そうとせず、次の勤務では一場面だけ、強い言葉の直前・最中・後を確認します。もっと我慢する前に、余裕がどこで減ったのかを見ることが出発点です。

この記事を読むと分かること

  • イライラが重なる理由
  • 我慢が残す負担
  • 自責が巡る流れ
  • 振り返る三つの時点

一つでも当てはまる方に向けた記事です

  • 強い口調を後悔する
  • 頻回コールがつらい
  • 理解しても苛立つ
  • 向いていないと悩む

介護職が利用者にイライラしても自分だけを責めなくていい理由

介護職員の苛立ちに、疲れ・焦り・業務中断が重なる様子を示した図です。

現場では、別の利用者の排泄介助中にコールが重なり、止まった記録と次の対応が気になったまま目の前の介助を続けることがあります。「またトイレ?」と強く言い、その場を回した後で、言葉を何度も思い返すこともあります。利用者へ向いたように見える苛立ちには、その前の疲れや焦りが重なっている場合があります。感情だけで適性を決める前に、何が積み重なったのかを分けて捉える必要があります。

ある一人夜勤の経験では、別の介助中にコールが鳴り、「少しお待ちください」と伝えた直後にまた呼ばれました。急ぐべきか、今の介助を続けるべきか迷う一方、記録も自分のトイレも後回しになり、声に焦りが混ざりました。落ち着いてから言い方だけを責めても、その直前の負担は見えません。

イライラは利用者一人への怒りだけで起きていない

現場では、介助中のコールで手が止まり、残った記録と次の対応が同時に頭へ入ることがあります。目の前の利用者に腹を立てているように見えても、その前から続く疲れや業務への焦りまで混ざっていないかを見る必要があります。

介護老人福祉施設の常勤介護職員11名の語りを分析した研究では、心身状態の不調やモチベーションの低下があるなか、終わらない業務への焦りと利用者への苛立ちが生じ、最後には自分自身への苛立ちとなる流れが示されました。対象が限られた質的研究であるため、すべての現場へ同じ順序を当てはめるものではありません。それでも、心身状態・業務の焦り・自分への苛立ちを切り分けて見る手がかりになります。

出典・根拠を確認

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.研究方法には,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.これらには〈他職員介護による苛立ち・負担〉という苛立ちを増加させる要因があった.そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.

感情が出たことと強い言い方は分けて振り返る

介護職員が感じた苛立ちと実際に口にした言葉を分けて振り返る図です。

トイレの訴えに思わず強く返した直後、言葉を取り消せないまま次の業務へ移り、勤務後に後悔が押し寄せることがあります。ここで見失いたくないのは、イライラした感情と、実際に選んだ強い言い方は同じではないことです。

介護職員の語りを分析した研究では、利用者に苛立ったことや乱暴な口調になったことに対し、自己嫌悪や自己否定に陥る過程が記されています。これは、その言い方を正当化する根拠ではありません。一方で、感情まで「持ってはいけなかった」と消そうとすると、言い方の振り返りと、その感情が生じた背景の確認が混ざります。この記事では、出た言葉と、その直前の中断・焦りを別々に書いて確認します。

強い言葉がケアへ及ぼす影響を考える
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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“苛立つ自分への嫌悪・否定”とはʻ利用者にイライラしてしまった自分に対して嫌悪感を抱いたり,援助者としての自分を否定してしまうことʼである.「自分の中で,イライラしている自分に対してはやっぱり嫌だなって思いますし,自分で.こういう姿,自分自身が,こうやって怒っている姿があまりよくないなって思いますし」「うまくそこができないから(感情コントロール),なんで私はうまくできないんだろうっていう風な思いで悩む」介護職員は利用者に苛立ってしまったこと,そして乱暴な口調になってしまったことに対して,自己嫌悪・自己否定に陥っていた.

「向いていない」と決める前に余裕を失った背景を見る

ある介護職の経験では、利用者から感謝された日は仕事の意味を感じる一方、頻回なコールが続く夜勤では自分の関わり方がきつくなりました。その落差から、「介護士に向いていないのではないか」と迷います。一度の感情だけで、仕事への思いまでなかったことにする必要はありません。

研究では、心身状態の不調や終わらない業務への焦りから利用者への苛立ちが生じ、それが自分自身への苛立ちとなり、焦りや苛立ちが悪循環する過程が示されました。この過程が全員にそのまま当てはまるとは限りません。ただ、適性を即断する前に、「いつから余裕が減ったか」「何をしている最中に中断されたか」「後から自分へ何と言ったか」を具体的にたどれば、感情だけでは見えない重なりを振り返れます。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.研究方法には,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.これらには〈他職員介護による苛立ち・負担〉という苛立ちを増加させる要因があった.そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.

利用者への苛立ちだけを切り取らず、その前の心身状態、止まった業務、強い言葉、その後の自責までを一続きで見ます。感情だけで介護士としての価値は決められません。



介護職が利用者にイライラして自分を責めるよくある場面

強い言葉が出る前の余裕低下から、勤務後の後悔までを一つの流れで示す図です。

現場では、別の利用者を介助している間にもナースコールが続き、急がなければと思うほど声が強くなることがあります。頭では丁寧に応じたいのに言葉が先に出て、その後で自分を責める揺れに、つらさを感じることがあります。

余裕を失った瞬間、普段なら選ばない言葉が出た経験があります。その場では次の介助や記録を進めることに必死でも、落ち着くと「本当はそんな言い方をしたかったわけではない」と後悔が残ります。利用者の事情を分かっているからこそ、強く言った自分と、優しくありたい自分のどちらをどう受け止めればよいか迷います。前はここまで苛立たなかったと思うほど、「性格が変わったのでは」「自分だけなのでは」という不安まで膨らみます。

別の介助中にナースコールが何度も鳴る

介助中の職員に別室のナースコールと記録が重なり、業務が中断する図です。

ある一人夜勤の経験では、オムツ交換を進めている最中に、別の利用者から「トイレに行きたい」「まだ?」というコールが短い間隔で重なりました。待ってほしいと伝えた直後にまた鳴り、無視はできない一方で、目の前の介助も記録も止まり、自分のトイレまで後回しになります。どちらを優先しても誰かを待たせる迷いが残り、利用者一人への苛立ちだけでは説明しにくい場面です。

研究では、何かの業務中にほかの利用者の訴えや対応が生じる場面で、苛立ちが語られています。困るのは、いくつもの業務が重なり、身体面でも精神面でも追い詰められることです。「今こっちをやっているのに」という小さな苛立ちも、業務が重なった状況のなかで示されています。利用者への気持ちだけでなく、中断や同時対応も重なっていた可能性があります。振り返るときは、中断された業務と重なった訴えを分けて記します。

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介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“業務中迫られる対応への苛立ち”とはʻ何か業務をしているときに,ほかの利用者から訴えがあったり,対応しなければならないことが起き,苛立つことʼである.「なんかやっているときに,バタバタしているときに,訴えがあったりすると,やっぱりイライラしちゃいますね」「どうしても『今こっちやっているのに』っていうちょっとしたイライラは」色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.

「またトイレ?」と強く言ってから後悔する

「またトイレ?15分前に言ったでしょ?」と口にした時は、次の業務を回すことで精いっぱいでした。少し落ち着くと「あんな言い方をしたかったわけではない」と後悔し、言い方を直したい思いと「介護士に向いていないのでは」という迷いが重なります。強く言った自分だけを思い返すほど、利用者に申し訳ない気持ちと、自分への失望が勤務後まで残りました。

研究では、利用者に苛立ったことや乱暴な口調になったことに対し、自己嫌悪・自己否定に陥った介護職員の語りが整理されています。困りごとは、言い方への後悔が、援助者としての自分の否定にまで広がることです。感情をうまく整えられないため「なぜできないのだろう」と悩む語りも示されています。強い言葉を正当化せず、同時に感情だけで適性を決めないため、「感じたこと」と「口にしたこと」を書き分けます。

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日本社会福祉学会

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“苛立つ自分への嫌悪・否定”とはʻ利用者にイライラしてしまった自分に対して嫌悪感を抱いたり,援助者としての自分を否定してしまうことʼである.「自分の中で,イライラしている自分に対してはやっぱり嫌だなって思いますし,自分で.こういう姿,自分自身が,こうやって怒っている姿があまりよくないなって思いますし」「うまくそこができないから(感情コントロール),なんで私はうまくできないんだろうっていう風な思いで悩む」介護職員は利用者に苛立ってしまったこと,そして乱暴な口調になってしまったことに対して,自己嫌悪・自己否定に陥っていた.

認知症だと分かっているのに感情がついてこない

別の利用者への介助や記録が残る中、同じ質問や訴えが何度も続くと、「本人に悪気はない」「認知症の症状かもしれない」と頭では考えていても、「こんなに忙しいのに」という気持ちが先に出ることがあります。説明を繰り返すか、先の業務を急ぐか迷ううちに、分かっているのに優しくできない自分まで責めたくなります。知識の有無だけで片づけず、その時の忙しさと反復を分けて確かめます。

研究には、利用者の言動を病気の症状として理解していても、忙しい業務のなかで同じ話が繰り返されると苛立つ、という語りがあります。そこには、業務上のさまざまな焦りや苛立ちも重なっています。困りごとは、利用者の行動の背景を考えて対応すべきだと理解しながら、その瞬間の感情が一致しないことです。「分かっているなら苛立たないはず」と考えるだけでは、このズレを捉えられません。反復対応の後は、理解していたことと、その時に重なった忙しさを分けて確認します。

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“わかっていても苛立ち”とはʻ利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうことʼである.「頭ではみんな認知症なのでわからないことがある,何度も何度も同じことをいうっていう状況があって当たり前なのは頭では理解しているんだけれども,忙しい業務のなかで,何度も何度も同じ話を聞かれたりだとか,わけわからない行動をされたときに,『こんなに忙しいのに』って」頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.

同時対応、強い言葉への後悔、理解と感情のズレは、利用者だけを原因にせず、直前の業務と心身の余裕まで含めて捉えます。

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介護職が我慢してもイライラが悪循環するのはなぜ?

疲労・業務の焦り・感情抑制・自責が循環して重なる関係を示した図です。

現場では、夜勤の終盤に介助とコールと記録が重なると、普段なら流せる一言に引っかかることがあります。二つの研究では、疲労や業務の焦りから自分への苛立ちへ進む過程と、感情抑制が精神的負担につながり得ることが、それぞれ示されています。我慢だけで収まりにくい背景を、四つに分けて見ていきます。

排泄介助中に次のコールが鳴り、記録も残っている時は、「今は我慢して動くしかない」と感情を押し込めがちです。目の前の介助を止めるか、コールを待たせるかで迷っても、その場から離れられず、どちらの業務にも焦りが残ります。ところが、急ぐほど口調が強くなり、勤務後にはその言葉を思い出して自分を責めることがあります。そこでさらに「次はもっと我慢しよう」と考えるだけでは、何が余裕を奪ったのかが見えません。

疲労がたまると普段なら流せる場面で余裕を失うことがある

ある介護職の経験では、夜勤の終盤や勤務が続いた時、普段なら「大丈夫ですよ」と返せる一言が妙に引っかかり、声に硬さが出ました。休む間もなく次の介助へ移り、その場を止められない中で、「同じ場面なのに、今日はなぜ受け流せないのか」と迷い、自分の性格だけを疑いました。

研究では、心身状態の不調とモチベーションの低下が相互に関連し、介護職員が苛立ちやすい状態になったと整理されています。通常なら流せることへ反応する語りや、終わらない業務への焦りのなかで介護を続ける状況も示されました。普段なら流せるときと強く反応するときの違いを性格だけの問題にすると、直前の心身状態を見落とします。強く反応した場面を一つ選び、出来事だけでなく、その直前の疲れや身体のつらさも確認します。

職員が余裕を取り戻す時間の意味
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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

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このように〈心身状態の不調〉と〈モチベーションの低下〉が相互に関連し合って,介護職員は苛立ちやすい状態になっていた.「普段だったら全然『あ,大丈夫ですよ』って流せるのが,今日はちょっと癇にさわるじゃないですけど」という語りからもわかるように,通常,対応できることができなくなってしまっている状態となっていた.

3.〈終わらない業務への焦り〉

次に,介護職員は業務のなかで“滞る業務への焦り”,“迫りくる時間への焦り”という〈終わらない業務への焦り〉のなかで,利用者への介護を実施していた.

終わらない業務への焦りが利用者への苛立ちと重なることがある

目の前の排泄介助、次のナースコール、残った記録が同時に頭へ入ると、「今これをやっているのに」と感じることがあります。すべてに丁寧に応じたい一方、どれかを進めれば別の業務が止まり、後からまた同じ訴えが重なるかもしれません。利用者に苛立っているのか、仕事の滞りに焦っているのかも分かりにくくなります。

研究では、業務中にほかの利用者から訴えがあり、複数の業務が重なるなかで、身体的にも精神的にも追い詰められて苛立つ状況が示されています。求められる対応と進行中の業務の間で焦りが重なる点を見落とさないため、強い反応の直前にしていた業務と、その時に加わった対応を分けます。苛立ちを利用者一人への感情だけで説明すると、中断と同時進行による焦りが抜け落ちるからです。

終わらない業務負担を見直す視点
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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

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“業務中迫られる対応への苛立ち”とはʻ何か業務をしているときに,ほかの利用者から訴えがあったり,対応しなければならないことが起き,苛立つことʼである.「なんかやっているときに,バタバタしているときに,訴えがあったりすると,やっぱりイライラしちゃいますね」「どうしても『今こっちやっているのに』っていうちょっとしたイライラは」色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.

「怒ってはいけない」と感情だけを抑える負担が残ることがある

穏やかに対応する介護職員の内側に、抑えた感情と残る負担を重ねて示す図です。

利用者へは優しくしなければと表情と声を整え、その場を終えても、内側には苛立ちや苦しさが残ることがあります。公平に順番に応じたい気持ちもあるため、自分の感情を優先してよいのか迷います。利用者への態度を保てても、内側の気持ちまでなかったことにすべきか分かりません。感情を認めれば怒りをぶつけることになるのでは、と考えるほど、抑えることだけに力を使いがちです。

認知症ケア実践者の精神的負担を扱った概念分析では、正しくあろうとし、自身の感情を抑えながら相手への共感を示そうとする姿が整理されています。多くのストレスや負担のなかで理想的なケアを保とうとすることが、精神的負担につながる可能性も示されました。そこで、実際に選んだ行動とは別に、押し込めた感情を一つ言葉にします。感情を認めることと、感情を言葉や態度でぶつけることは同じではありません。

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日本看護科学学会

介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja

また,認知症ケア実践者は多くのストレスや負担の中でも,【理想的な認知症ケアを実践しようと努力する】姿勢でいることが明らかになった.〈常に援助者として正しくあろうとする〉,〈自身の感情を抑え,ケアの対象者への共感を示さなければとならないと思う〉のサブカテゴリーが示すように,自分の感情を優先するのではなく相手への共感を示しながら,常により良いケアをしようとする姿が表されており,このことが精神的負担につながる可能性が示された.BPSDの対応に追われるような現場でも,「公平に順番に対応しなければならない」といったコードが抽出され,理想的なケアをしようと努力するケア実践者を表していた.

後悔や自責が次の苛立ちに重なる場合がある

今回扱う経験では、勤務後に「なんであんな言い方をしたのだろう」と繰り返し考え、「次はもっと我慢しよう」と決めても、次の勤務で頻回な訴えが重なると再び余裕を失いました。利用者への苛立ちだけでなく、うまく感情を整えられない自分への苛立ちまで抱えたまま出勤する苦しさもありました。後悔をなくそうとして、感情まで否定すべきか迷う場面です。

研究では、心身状態の不調や終わらない業務への焦りのなかで利用者への苛立ちが生じ、最終的に自分自身への苛立ちとなって、諸種の焦りや苛立ちが悪循環するプロセスが示されています。ただし、一つの研究で示された流れで、すべての介護職が同じ順序をたどるとは限りません。また、我慢が自己嫌悪を直接起こすとは言い切れません。強い言葉が出た場面の直前・最中・後を書き出すことは、自分への苛立ちが加わった時点を探る手がかりになります。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.研究方法には,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.これらには〈他職員介護による苛立ち・負担〉という苛立ちを増加させる要因があった.そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.

疲労、業務の焦り、感情抑制、自分への苛立ちは重なり得ます。「もっと我慢する」だけで閉じず、余裕を失った入口をたどることが大切です。

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介護職が利用者にイライラするときのFAQ

現場では、別の介助や記録が残るなかで同じ訴えが重なると、事情は分かっていても感情が追いつかず、判断に迷うことがあります。

強い言い方の後に「自分は向いていないのか」と不安になったとき、研究で確認された範囲から整理します。

Q
利用者にイライラするのは自分だけですか?
A

自分だけの経験だと決めつける必要はありません。2023年までの日英54文献を対象とした概念分析では、認知症ケア実践者の精神的負担の属性に「ケアの対象者にネガティブな感情を抱く」が含まれました。ただし、一人ひとりの状況が同じだとは限らないため、研究結果を自分の勤務すべてに当てはめないことも大切です。

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日本看護科学学会

介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja

目的:介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念を分析し,先行要件・属性・帰結による構成要素を明らかにし,概念の定義を行う.方法:2023年までの日英54文献を対象に,Rodgersの分析方法(Rodgers & Knafl, 2000)で分析した.結果:属性として【ケアの対象者にネガティブな感情を抱く】,【BPSD対応に疲弊する】,【困難なケアへの不安を感じる】,【倫理的苦悩に押しつぶされる】の4カテゴリーを抽出した.また先行要件として4カテゴリー,帰結として3カテゴリーを抽出した.

Q
強い口調になったら介護士に向いていませんか?
A

介護老人福祉施設の常勤介護職員11名を対象にした研究では、利用者への苛立ちや乱暴な口調に対して自己嫌悪・自己否定に陥った語りが整理されています。職業適性を判定した研究ではないため、この結果だけで適性は判断できません。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“苛立つ自分への嫌悪・否定”とはʻ利用者にイライラしてしまった自分に対して嫌悪感を抱いたり,援助者としての自分を否定してしまうことʼである.「自分の中で,イライラしている自分に対してはやっぱり嫌だなって思いますし,自分で.こういう姿,自分自身が,こうやって怒っている姿があまりよくないなって思いますし」「うまくそこができないから(感情コントロール),なんで私はうまくできないんだろうっていう風な思いで悩む」介護職員は利用者に苛立ってしまったこと,そして乱暴な口調になってしまったことに対して,自己嫌悪・自己否定に陥っていた.

Q
「怒ってはいけない」と我慢しているのに、なぜ苦しさが残るのですか?
A

理想的なケアを目指して感情を抑えること自体が、精神的負担につながる可能性があります。研究では、正しくあろうとする姿勢と感情抑制が、同じ負担の文脈で整理されています。

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日本看護科学学会

介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja

また,認知症ケア実践者は多くのストレスや負担の中でも,【理想的な認知症ケアを実践しようと努力する】姿勢でいることが明らかになった.〈常に援助者として正しくあろうとする〉,〈自身の感情を抑え,ケアの対象者への共感を示さなければとならないと思う〉のサブカテゴリーが示すように,自分の感情を優先するのではなく相手への共感を示しながら,常により良いケアをしようとする姿が表されており,このことが精神的負担につながる可能性が示された.BPSDの対応に追われるような現場でも,「公平に順番に対応しなければならない」といったコードが抽出され,理想的なケアをしようと努力するケア実践者を表していた.

Q
イライラする直前には、どのような状態が重なっていましたか?
A

介護老人福祉施設の常勤介護職員11名を対象にした研究では、心身状態の不調と、滞る業務・迫る時間への焦りが、苛立ちやすい状態のなかで整理されています。普段なら流せることへ反応した語りもありました。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

このように〈心身状態の不調〉と〈モチベーションの低下〉が相互に関連し合って,介護職員は苛立ちやすい状態になっていた.「普段だったら全然『あ,大丈夫ですよ』って流せるのが,今日はちょっと癇にさわるじゃないですけど」という語りからもわかるように,通常,対応できることができなくなってしまっている状態となっていた.

3.〈終わらない業務への焦り〉

次に,介護職員は業務のなかで“滞る業務への焦り”,“迫りくる時間への焦り”という〈終わらない業務への焦り〉のなかで,利用者への介護を実施していた.

強い言葉の前には、心身の不調、滞った業務、迫る時間が重なっていることがあります。言い方は振り返りながらも、感情だけで介護士としての価値まで決めないことが大切です。


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まとめ|利用者にイライラした自分だけで介護士の価値を決めない

現場では、別の介助中にコールが重なり、記録も残っているなかで、普段なら選ばない強い口調が出ることがあります。落ち着いた後に、「こんな言い方をしたかったわけではない」と自分を責めてしまう場面です。

イライラは、利用者一人への怒りだけで起きるとは限りません。心身の疲れ、終わらない業務への焦り、繰り返される対応、感情を抑え続ける負担が重なっている場合があります。

感情が生じたことと実際に選んだ言葉や行動を分けて振り返り、「介護士に向いていない」という自分全体の否定まで広げないことが大切です。

次の一歩は一つです。次の勤務後、口調が強くなった一場面だけを選び、「直前に重なっていた負担」「その場で起きた中断や焦り」「後から自分へ向けた言葉」を短くメモしてください。

すべての勤務を記録する必要はありません。「もっと我慢する」以外に、どこで余裕が減ったのかを見るところから始めてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。


更新履歴

  • 2026年1月8日:新規投稿
  • 2026年3月27日:内容を全面的にリライト
  • 2026年9月11日:内容を全面的にリライト

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