認知症の方がレクで落ち着かなくなるときの見立てと関わり方

レクの途中で落ち着かなくなるとき
介護現場では、レクリエーションの最中に立ち歩きや不穏が重なり、見守り安全確保の両立に悩む声が少なくありません。

理想では気持ち意思をくみ取りたいのに、現場では人員時間が限られ、対応が強くなることもあります。「全部は無理」だからこそ、レクで落ち着かなくなる場面でここだけ押さえる視点を一緒に考えます。

この記事を読むと分かること

  • レク中の行動整理
  • 介護現場での見立て方
  • 環境調整の基本
  • 声掛けの方向性
  • 無理しない対応軸

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • レク中に立ち歩く
  • 座ってもらえない
  • 注意で表情が険しい
  • 他利用者へ影響する
  • 対応後に自己嫌悪

スポンサーリンク

レクで落ち着かなくなる場面で押さえたい結論

男性入居者と女性介護職員

現場では、レクリエーションの最中に立ち歩きや不穏が重なり、 転倒リスクへの不安と進行役としての役割の間で揺れる声が多く聞かれます。

本当は一人ひとりの気持ちペースに合わせたいのに、人員不足時間の制約から、対応が強くなってしまうこともあります。
その中で「全部は無理」だからこそ、ここだけ押さえるという軸を整理しておきます。

認知症介護の目的を「生活の安定」として共有する

レク中に落ち着かなくなる行動への対応も、まずは認知症介護の目的を どう捉えるかが土台になります。

解説集では、目的を認知症者の生活安定と明確に位置づけ、そのために食事・入浴・排泄など基本的な生活行為の支援を優先的な課題としています。

本記事では、この「生活の安定」を基準に、レクでの関わりを考えます。
レクを予定どおり進めることだけを目的にせず、生活全体の安定につながるかどうかを判断のよりどころにする、という視点を共有することが結論の出発点になります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

認知症介護の目的を「認知症者の生活安定」と明確に位置づけ、生活の安定を実現するために「食事、入浴、排泄等の基本的な生活行為」に関する介護能力の養成を優先課題としている。厚生労働科学研究費補助事業により、介護困難度の高い食事・入浴・排泄の課題解決モデルを整理し、その成果として実践に役立つ「認知症介護チェック表」と「解説集」が作成されている。

尊厳残存能力に沿った声掛けを優先する

レクの途中で席を立つ、落ち着かないといった行動があるとき、 「座っていてください」と繰り返したくなる場面もあります。

解説集では、声掛けで大事なのは尊厳に配慮した声掛け残存能力に応じた声掛けであると示されています。
どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断し、できない部分だけをサポートする声を意識する姿勢です。

また、認知機能の低下が強い場合、複数の内容を一度に伝えたり、遠回しな表現を用いると、正確に伝わらず不信感につながるとされています。
レク場面でも、短く具体的な言葉で、本人の尊厳を守りながら必要な部分だけを支える、という結論を押さえておきます。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料は、「声掛けを行うにあたり大事な点は、尊厳に配慮した声掛けを行うこと、残存能力に応じた声掛けを行うこと」と明示し、「どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断して、出来ないところをサポートするような声掛け」が必要だと述べています。また「認知機能の低下が著明な場合、声かけに複数の内容が含まれていたり遠回しな表現になっていたりすると、正確に伝わらなく逆に不信感を招く場合があります。」とされ、短く具体的な伝え方の重要性が示されています。

行動だけでなく環境関係性もセットで考える

レク中の「落ち着かない」「席にいられない」行動は、 その人の性格だけでは説明できません。

食事場面のチェック表では、拒否や中断があるとき、席の位置周囲の刺激(音・光・匂い)他の入居者との関係などの環境要因を確認する視点が示されています。
同時に、スタッフとの関係声かけ内容・見守り方本人の気持ち・意思も含めて見る枠組みが整理されています。

この考え方を前提にすると、レクで立ち歩く行動も、「落ち着きがないから」と片づけるのではなく、環境・人間関係・気分を含めて見直すことが、対応のスタートラインだと整理できます。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「食事拒否課題介護チェック表」では、食事を拒否する回数や量、表情・しぐさを押さえつつ、「席の位置」や「周囲の雰囲気・刺激(音・光・匂い)」「他の入居者との関係」など環境要因を確認する視点が示されている。同時に、「スタッフとの関係」「スタッフの声かけ内容・見守り方」「本人の気持ち、意志」も含めた人間関係や心理面の評価が求められ、単なる栄養問題としてではなく、環境・関係性・気分を含めて食事拒否をアセスメントする枠組みが整理されている。

レクへの参加・退出も意思決定支援としてとらえる

レクに「最後まで参加してほしい」という思いはあっても、 本人が途中で離れたがるとき、どこまで引き止めるか迷いやすいところです。

意思決定支援ガイドラインでは、認知症の人についても、本人の意思の尊重自己決定を基本に支援する姿勢が示されています。支援は、意思を形成するプロセス、表明しやすい環境づくり、実際の生活に反映する段階までを通して考えることが求められます。

レク場面でも、「とにかく参加させる」ではなく、本人の意思や選好を確認しつつ、安全面とのバランスをとることが結論としての軸になります。
そのうえで、チームで情報を共有しながら、本人の意思ができる限り生活に反映されるよう支える視点を持ちます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

本ガイドラインは、本人の意思決定形成支援、表明支援、実現支援のプロセスに沿って支援を実施することを示している。本人の意思の尊重、意思決定能力への配慮、チームによる早期からの継続的支援が基本原則である。認知症の人の自らの意思に基づいた日常生活・社会生活の実現を目指す。

レクの途中で落ち着かなくなる行動への対応は、生活の安定という目的を共有し、尊厳残存能力に沿った声掛け、環境・関係性・意思を含めた見立てを行うことで、「全部はできない」現場でも、負担を少し軽くしながら取り組める土台を整えられます。

広告

レク中に落ち着かなくなるときのよくある場面

ここでは、レクの途中で落ち着かなくなる行動を、 「性格」だけで見るのではなく、環境身体気持ちと セットで考えるための典型パターンとして整理します。

どれも食事・排泄などの場面で示されている視点を土台に、レク場面でも活用しやすい形に抽象化した事例です。

事例1:席を立って歩き回る

状況 レクの途中で立ち上がり、会場内を歩き回る。 スタッフが声を掛けても、落ち着いて座っていられない。

困りごと

  • 転倒の不安がある
  • 他の利用者の集中が途切れる
  • 進行役も気を取られてしまう

よくある誤解

  • 「落ち着きがない人」「わがままな態度」として捉えてしまう。

押さえる視点

  • 食事場面では、同じように席を離れたり中断があるとき、席の位置周囲の刺激(音・光・匂い)他の人との関係スタッフの声かけ本人の気持ち・意思を含めて多面的にアセスメントする枠組みが示されています。

レクでも、歩き回る行動だけを見るのではなく、「ここが落ち着かない環境になっていないか」を環境+関係性+気分のセットで見直す場面として捉えます。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「食事拒否課題介護チェック表」では、食事を拒否する回数や量、表情・しぐさを押さえつつ、「席の位置」や「周囲の雰囲気・刺激(音・光・匂い)」「他の入居者との関係」など環境要因を確認する視点が示されている。同時に、「スタッフとの関係」「スタッフの声かけ内容・見守り方」「本人の気持ち、意志」も含めた人間関係や心理面の評価が求められ、単なる栄養問題としてではなく、環境・関係性・気分を含めて食事拒否をアセスメントする枠組みが整理されている。

事例2:他の利用者のところへ行ってしまう

状況 レク中に隣や向かいの席へ移動し、他の人の前に立ったり、 道具や用紙に手を伸ばしたりする。

困りごと

  • トラブルにつながらないか心配になる
  • 周囲の利用者が不安そうな表情になる
  • 注意してもなかなかやめられない

よくある誤解

  • 「人のものを取る」「邪魔している」とだけ見てしまう。

押さえる視点

  • 食事場面では、他の人の食事を取ってしまう行動の背景として、認知機能の低下身体状況不安他者との関係など複数の要因を日頃から把握する必要性が示されています。

レクで他の人のところへ行く行動も、「困った行動」として切り離すのではなく、不安や関心の向き先関係性今の体調などを一緒に考えるサインとして見ていきます。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

食事の過剰な要求として、「通常の食事が終わった後もすぐに食事を要求」「食事の時間以外でも常に何か食べるものをほしがる」「ほかの人の食事をとってしまう」などの行動が挙げられている。背景には認知機能の低下、身体状況、疾病や不安、他者との関係など多様な要因があるため、「疾患の確認、身体状況の確認、認知機能の程度の把握、他者との関係性の把握」を日頃から心がける必要があるとされ、行動だけでなく多因子的なアセスメントを前提としている。

事例3:急に表情が険しくなり、大きな声が出る

状況 レクの途中から表情が険しくなり、 急に大きな声や強い言葉が出る。

困りごと

  • 周囲が驚き、場が一気に緊張する
  • スタッフも戸惑い、つい強く制止してしまう

よくある誤解

  • 「不穏」「暴言」と記録し、「困った人」として扱ってしまう。

押さえる視点

  • 解説集では、大きな声や怒鳴りなどの行動は、介護者や周囲の言葉かけ・対応が影響している可能性があるとし、介護者の態度や言動を振り返ることの重要性が示されています。

レクでの急な高ぶりも、「性格だから」と決めつけるのではなく、その前にどんな声掛けや進め方があったか、自分たちの関わり方も含めて振り返る視点を持つことで、次回の場づくりや声掛けの工夫につなげていきます。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

本文では、認知症の人が大声や「暴言」を示したときに「『困った人』というレッテルを貼る場合」があると指摘しています。しかし、その行動は「介護者や周囲の人たちの無意識のうちにとっている言葉かけや対応」による影響かもしれないとし、「介護者の態度や言動を振り返り、その影響から起こっている行動・心理症状かもしれない」と考えることの重要性を述べています。

事例4:なんとなく落ち着かず、集中できない

状況 レクに参加しているが、そわそわして席をずらしたり、 周囲を見回したりして、内容に集中しにくそうに見える。

困りごと

  • 「楽しめていないのでは」と感じてしまう
  • どこまで続けてもよいか判断に迷う

よくある誤解

  • 「興味がないだけ」「レクが合わない」とだけ受け取ってしまう。

押さえる視点

  • 資料では、基礎疾患便秘などの身体状態が、不快感や疲れやすさを通じて興奮不穏などの行動・心理症状に影響することが示されています。
    また、「便秘による不快感は、興奮や不穏状態を引き起こします」とされ、訴えを適切に表現できない認知症高齢者では、表情やしぐさから不快感を推測する重要性が述べられています。

レクで「なんとなく落ち着かない」様子が続くときも、内容だけでなく、身体のつらさ不快感が背景にないかを思い出して確認する視点が大切になります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料では、基礎疾患は認知症の発症に関与し、「特に『脳血管疾患』を起因とする『血管性認知症』には大きく関わっています」と説明される。また、心疾患や腎疾患、血糖値の変化、便秘などの身体状態は、不快感や疲れやすさを通じて暴言・不満・興奮といったBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を引き起こすとされ、「基礎疾患はBPSDにも影響している」として身体状況の把握の重要性を強調している。

広告

なぜレクの途中で落ち着かなくなるのか

現場では同じレクリエーションでも、ある日は穏やかで、別の日は立ち歩き不穏が強く出ることがあります。気分の問題だけに見えても、解説集やガイドラインを見ると、背景には認知機能身体環境関係性意思など複数の要因が重なっていると整理されています。

情報処理の難しさと認知機能の変化

レクでは説明を聞き取り、ルールを理解し、周囲の動きも見ながら自分の番を待つなど複数の情報処理が必要です。解説集では認知機能の低下がある場合、複数の内容を含んだ声掛けや遠回しな表現は正確に伝わりにくく不信感につながると指摘されています。情報量が増えるほど混乱が起きやすく、それが落ち着きにくさとして表れやすくなるという枠組みが示されています。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料は、「声掛けを行うにあたり大事な点は、尊厳に配慮した声掛けを行うこと、残存能力に応じた声掛けを行うこと」と明示し、「どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断して、出来ないところをサポートするような声掛け」が必要だと述べています。また「認知機能の低下が著明な場合、声かけに複数の内容が含まれていたり遠回しな表現になっていたりすると、正確に伝わらなく逆に不信感を招く場合があります。」とされ、短く具体的な伝え方の重要性が示されています。

基礎疾患便秘など身体の不快感

レク中の落ち着かなさには身体のつらさが背景にあることがあります。解説集では脳血管疾患などの基礎疾患、心疾患・腎疾患・血糖値の変化・便秘などが不快感や疲れやすさを通じて興奮不穏を引き起こすと示されています。認知症高齢者は不快感を言葉で訴えにくく、表情やしぐさが手がかりになると整理されています。レクでのそわそわも身体のサインとして捉える視点が必要になります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料では、基礎疾患は認知症の発症に関与し、「特に『脳血管疾患』を起因とする『血管性認知症』には大きく関わっています」と説明される。また、心疾患や腎疾患、血糖値の変化、便秘などの身体状態は、不快感や疲れやすさを通じて暴言・不満・興奮といったBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)を引き起こすとされ、「基礎疾患はBPSDにも影響している」として身体状況の把握の重要性を強調している。

環境刺激席の位置の影響

同じレクでも座る位置や目に入るもの、音や光の強さによって感じ方は変わります。解説集では食事拒否や中断がある場合、席の位置雰囲気音・光・匂い他者との関係など環境要因を確認する視点が示されています。行動を本人だけの問題にせず「ここは落ち着きやすい場か」を見直す必要があるという考え方です。レクでの落ち着かなさも同じ枠組みで理解できます。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「食事拒否課題介護チェック表」では、食事を拒否する回数や量、表情・しぐさを押さえつつ、「席の位置」や「周囲の雰囲気・刺激(音・光・匂い)」「他の入居者との関係」など環境要因を確認する視点が示されている。同時に、「スタッフとの関係」「スタッフの声かけ内容・見守り方」「本人の気持ち、意志」も含めた人間関係や心理面の評価が求められ、単なる栄養問題としてではなく、環境・関係性・気分を含めて食事拒否をアセスメントする枠組みが整理されている。

介護者の声掛けや関わり方の影響

レク中の大声、立ち歩き、強い訴えに見える行動は、介護者や周囲の声掛け対応が影響する場合があります。解説集では、暴言や大声の背景に介護者の言動が影響している可能性があるとし、こちらの態度言葉を振り返る重要性が示されています。「困った人」と捉える前に、関わり方との相互作用を確認する視点が必要だと整理されています。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

本文では、認知症の人が大声や「暴言」を示したときに「『困った人』というレッテルを貼る場合」があると指摘しています。しかし、その行動は「介護者や周囲の人たちの無意識のうちにとっている言葉かけや対応」による影響かもしれないとし、「介護者の態度や言動を振り返り、その影響から起こっている行動・心理症状かもしれない」と考えることの重要性を述べています。

意思が伝わらないことによる負担

レクに参加したい、少し休みたいといった意思があっても、言葉で伝えにくいことが負担につながり、行動として現れる場合があります。意思決定支援ガイドラインでは、認知症の人の意思形成表明実現を支援する姿勢が示されています。席を立つ行動も単なる不参加ではなく、伝えにくい意思の表れと考えることで対応の方向性が変わります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

本ガイドラインは、本人の意思決定形成支援、表明支援、実現支援のプロセスに沿って支援を実施することを示している。本人の意思の尊重、意思決定能力への配慮、チームによる早期からの継続的支援が基本原則である。認知症の人の自らの意思に基づいた日常生活・社会生活の実現を目指す。

このセクションでは、レク中の「落ち着かない」行動の背景として、認知機能身体の不快感環境関わり方意思といった複数の要因が重なり合っていることを整理しました。行動だけで判断せず、これらの視点を合わせて捉えることが、次の対応を考える土台になります。


よくある質問(FAQ)

女性の介護職員の画像
Q
レク中に席を立った場合、すぐに座ってもらうべきですか?
A

すぐに強く制止するのではなく、まず環境や身体の不快感、気持ちを確認することが重要です。
エビデンスでは、席の位置、音や光、匂い、周囲の人間関係、スタッフの声かけ、本人の気持ちなど、多面的に状況を見立てる視点が示されています。
行動だけを理由に制止すると、不信感につながる場合があります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター
「初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集」
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
席の位置や刺激、他者との関係、スタッフの声かけ、本人の気持ちなど、多因子的に評価する枠組みが示されている。

Q
「座ってください」と繰り返しても伝わらないのですが?
A

指示を何度も繰り返すより、短く具体的な声かけへの切り替えが推奨されます。
エビデンスでは、認知機能の低下がある場合、複数内容の声かけや遠回しな表現は正確に伝わりにくく、不信感につながる可能性があると示されています。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター
「初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集」
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
複数の内容を含む声かけや遠回しな表現は伝わらず、不信感を招く場合があると記載されている。

Q
レクを中断するのは「やる気がない」からですか?
A

やる気の問題とは限りません。身体の不快感や疲れが背景にある場合があります。
基礎疾患や便秘などの身体状態が、不快感を通じて不穏や興奮につながることが示されています。
そわそわした様子や中断が続くときは、身体のサインとして確認する必要があります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター
「初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集」
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
基礎疾患や便秘などが不快感を引き起こし、BPSDに影響することが示されている。

Q
「もう出たい」と言われたとき、引き止めたほうがいいですか?
A

本人の意思と安全を踏まえて判断することが求められます。
意思決定支援のガイドラインでは、認知症の人にも意思があり、それを形成・表明・実現するプロセスを支援する姿勢が基本とされています。
無理に引き止めるのではなく、状況を確認しつつ意思を尊重する方向性が示されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省
「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
本人の意思の尊重、意思決定能力への配慮、表明・実現支援などのプロセスを示している。

Q
大きな声を出すのは性格が原因ですか?
A

性格だけが理由ではありません。関わり方や環境が影響している場合があります。
エビデンスでは、大声や強い言葉の背景に介護者や周囲の言動が影響している可能性があり、まずこちらの関わり方を振り返る重要性が示されています。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター
「初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集」
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
暴言や大声の背景に介護者の言動が影響する可能性があるとされ、関わり方の振り返りが重要とされている。


まとめ

女性の介護職員の画像

レクリエーションの途中で落ち着かなくなる行動は、性格や気分だけでは説明できない場合が多いとエビデンスで整理されています。背景には、認知機能の変化身体の不快感環境刺激スタッフとの関係意思の表明しづらさなど、複数の要因が重なっていることが示されています。
そのため、行動のみを基準にせず、何が負担になっているのかどこが落ち着きにくい条件なのかを見立てる視点が大切です。

すべてを整えるのは難しくても、短く伝わる声かけ落ち着きやすい席の配置身体のサインの確認意思を尊重する関わりといった小さな工夫だけでも、レク中の負担は確実に軽くできます。
まずは取り入れられるところから始めることで、利用者にとってもスタッフにとっても、安心して参加できるレクの時間に近づいていきます。

最後までお読みいただき、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年12月3日:新規投稿

タイトルとURLをコピーしました