利用者対応の最中に、声が荒くなりそうになることがあります。拒否、暴言、不穏、頻回な訴えが重なり、夜勤明けの疲れも残っていると、優しくしたい気持ちだけでは踏ん張れない瞬間があります。
そのあとに残るのは、「手は出していないのに、こんな感情を持つ自分は介護士失格なのではないか」という自己嫌悪です。けれど、そこで自分を責めるだけでは、次の勤務で同じ場面に戻されます。
この記事では、怒りを正当化するのではなく、怒りが無視・怒鳴り・乱暴な介助へ進む前に止める考え方を整理します。全部を一人で抱えるより、まずは「離れる・交代する・共有する」仕組みに変えていきましょう。
この記事を読むと分かること
- 怒りの整理法
- 不適切ケアの手前
- 交代依頼の考え方
- チーム共有の要点
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
介護士が利用者に怒りを感じても失格ではなく、止める仕組みが必要です

怒りを感じる介護士が即失格なのではありません。ただし、その怒りが無視、怒鳴り、乱暴な介助、後回しに進む前に止める必要があります。
現場では、認知症対応や拒否、暴言、頻回な訴えが重なり、「もう無理」と感じる場面があります。優しくしたい気持ちがあるのに、限界を超えると声が強くなり、その後に自己嫌悪だけが残ることもあります。この記事では、怒りを人格の問題だけにせず、不適切ケアの手前で止まる方法として整理します。
こうした場面では、怒りを消そうと頑張るほど苦しくなることがあります。現実的な目標は、怒りが出た時点で説得をやめ、触らず、離れ、交代することです。これは逃げではなく、利用者と職員の両方を守る安全行動として扱う必要があります。
怒りは人格の問題だけでなく、限界サインとして分解する
介護職員の苛立ちは、心身状態の不調やモチベーション低下、終わらない業務への焦りと関連して起きることがあります。つまり、「怒った自分が悪い」とだけ見ると、時間帯、人員配置、介助内容、前後の業務という本当の負荷が見えにくくなります。
現場では、普段なら流せる言葉でも、夜勤明けや拒否対応の後には強く刺さることがあります。まずは怒りを性格の欠点ではなく、限界を超えかけているサインとして記録し、次に同じ場面を作らない材料に変えることが大切です。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.
不適切ケアに進む前に、説得をやめて距離を取る
問題は、怒りを感じることそのものではありません。怒りが、嫌味、ナースコールの無視、願いを聞かない介護、無言の介助、後回しなどに進むことです。声が荒くなっていると気づいた時点で、説得を続けるより、いったん対象から離れる判断が必要です。
こうした場面では、「ここで分かってもらわないと」と粘るほど、表情や手の動きが荒くなることがあります。怒りのピークで頑張るより、物品を取りに行く、記録に移る、別職員に申し送るなど、注意と場面を切り替える動きを先に決めておく方が現実的です。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
本研究における不適切な介護とは,厚生労働省が虐待行為を広く捉える視点として示している「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命,健康,財産が損なわれるような状態に置かれること」とし,具体的には「利用者に対する嫌味」「利用者のナースコールを無視」「利用者の願いを聞かずに介護」「利用者に対して無言で介護」「嫌いな利用者の順番を後回しにした」などとした.
金谷悠太・川合伸幸
怒りの制御方略に関する研究動向と展望 ――実験研究を対象とした検討.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/96/2/96_96.23402/_pdf/-char/ja
感情制御のプロセスモデルでは,情動反応が,状況・注意・評価・反応の段階を経て生成されることを前提とする.このモデルでは,感情制御方略を,状況選択,状況修正,注意配分,認知変容,反応調整と呼ばれる5つのグループに分類する.たとえば注意配分には,情動を誘発した刺激から注意を逸らす「気晴らし」が含まれる.
「今きついので交代お願いします」を安全行動にする
暴言や暴力、不穏がある場面では、認知症による言動か、ハラスメントとして扱うべき言動かを丁寧に見る必要があります。ただし、どちらの場合でも、職員の安全に配慮する必要は残ります。一人で抱え込むほど、怒りも疲労も逃げ場を失います。
現場では、交代を頼むことを弱さのように感じることがあります。しかし、怒鳴る前に抜ける、二名対応に変える、上長に共有することは、職員だけでなく次に関わる利用者も守る行動です。まずはチームで、「今きついので交代お願いします」と言えるルールを作ることから始めます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても,職員の安全に配慮する必要があることには変わりありませんから,ハラスメント対策とは別に,対応を検討する必要があります.そのため,暴言・暴力を受けた場合には,職員が一人で問題を抱え込まず,上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切です.
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
問題が起こった際には,施設・事業所内で問題を共有する場を設け,対応方法を皆で議論する場を設けること.ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が,一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん,相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないようにすることが大切です.
怒りを感じる介護士が即失格なのではありません。大切なのは、怒りが不適切ケアへ進む前に、説得をやめ、触らず、離れ、交代する仕組みを作ることです。
介護士が怒りそうになるよくある事例

現場では、ひとつの出来事だけで限界になるとは限りません。夜勤、拒否、暴言、頻回な訴え、他職員への遠慮が重なったとき、気持ちの逃げ場がなくなります。
怒鳴りたいわけではないのに、声が強くなる。手早く終わらせたいわけではないのに、介助が荒くなりそうになる。こうした場面を「気合い不足」と見ず、どこで止めるかを決めておくことが必要です。
頻回な訴えや同じ質問で業務が止まる
食事前、排泄介助、就寝前の巡視が重なる時間に、同じ訴えが何度も続くことがあります。返答しても数分後に同じ訴えが戻ると、「さっき言ったのに」と感じやすくなります。ここで勝とうとせず、対応時間や交代基準を決めておくことが現実的です。
状況としては、業務中に訴えが重なり、予定していた介助が進まない状態です。困りごとは、対応しても変化が見えず、職員が疲弊しやすいことです。よくある誤解は「自分の説明が足りないから、もっと言い聞かせるべき」と考えることです。押さえるべき視点は、繰り返しの訴えを一人で抱えず、時間帯や訴えの内容を共有し、次の勤務者も同じ判断ができる形にすることです。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.
拒否や暴言を受け、声や手の動きが荒くなりそうになる
更衣、排泄、入浴、食事介助で拒否が続くと、職員側も追い詰められます。良かれと思って準備した介助を拒否されると、自分の対応まで否定されたように感じることがあります。無理に全部終わらせるより、その日の最低ラインへ落とす判断が必要です。
状況としては、介助しようとした行為に対して、拒否や攻撃的な言動が返ってくる場面です。困りごとは、業務が止まるだけでなく、職員の感情が急に高ぶることです。よくある誤解は「拒否されたら、その場で必ず説得しなければならない」と考えることです。押さえるべき視点は、怒りが上がった状態で触れ続けないことです。更衣だけ、清拭だけなど、本人と職員の安全を守れる範囲へ下げます。
出典元の要点(要約)
徐廷美・杉本知子
介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
また,【BPSD対応に疲弊する】のカテゴリーは〈BPSDにうまく対応できないことで不全感がある〉,〈暴言・暴力に精神的なダメージを受ける〉のサブカテゴリーで表された.対象者のBPSDに対し「これ以上何も対応できないと思う」と考え,「無力感にさいなまれる」という言葉もあった.
夜勤や不穏対応で一人対応が続く
夜勤中に不穏や徘徊、頻回な呼び出しが続くと、職員は「このまま朝まで持つのか」と不安になります。応援を呼ぶほどではないと思って粘るうちに、声の圧が強くなることがあります。粘る時間、中止する基準、応援を呼ぶ基準を先に決めておくことが助けになります。
状況としては、勤務者が少ない時間帯に、認知症症状や安全確保への不安が重なる場面です。困りごとは、一人で判断する範囲が広がり、疲労と緊張が抜けにくいことです。よくある誤解は「夜勤者が最後まで抱えるしかない」と考えることです。押さえるべき視点は、夜勤中こそ、記録、申し送り、応援要請の基準を具体的にしておくことです。
出典元の要点(要約)
徐廷美・杉本知子
介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
結果:属性として【ケアの対象者にネガティブな感情を抱く】,【BPSD対応に疲弊する】,【困難なケアへの不安を感じる】,【倫理的苦悩に押しつぶされる】の4カテゴリーを抽出した.結論:介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担は「ケアの対象者に対してネガティブな感情を抱きながら,BPSD対応に疲弊し,困難なケアへの不安を常に感じている一方で,倫理的苦悩にも押しつぶされている状態」と定義した.
他職員に頼めず、交代を言い出せない
本当は交代してほしいのに、次の人の負担を考えて言い出せないことがあります。人間関係や上下関係が気になり、「自分で収めたい」と抱え込むほど、利用者対応で余裕が削られます。交代依頼を個人の甘えではなく、チームの安全ルールにすることが必要です。
状況としては、自分の業務を他職員に手伝ってもらいたくても、相手の負担を考えて一人で抱える場面です。困りごとは、その負担がさらに苛立ちを強めることです。よくある誤解は「限界まで自分でやる職員がよい職員」と考えることです。押さえるべき視点は、報告した職員が損をしない短い共有方法を用意し、次の対応へつなげることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
問題が起こった際には,施設・事業所内で問題を共有する場を設け,対応方法を皆で議論する場を設けること.ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が,一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん,相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないようにすることが大切です.
よくある事例に共通するのは、一人で抱えたまま怒りのピークに入ることです。声や手が荒くなる前に、基準を決めて交代・共有へ移すことが大切です。
なぜ介護士は利用者に怒りを感じやすくなるのか

現場では、「怒ってはいけない」と分かっていても、身体の疲れ、時間の焦り、拒否対応、他職員への遠慮が同時に来ることがあります。この背景を分解しないまま我慢だけで乗り切ると、次の場面でも同じ苦しさが残ります。
怒りは急に生まれるように見えて、実際には複数の負荷が積み重なって起きることがあります。だからこそ、怒りを反省文で終わらせず、どの条件が重なったかを見直すことが必要です。
心身状態の不調とモチベーション低下で余裕が減る
夜勤明け、腰痛、連続勤務、人間関係の不満がある日は、普段なら流せる言葉にも反応しやすくなります。これは気持ちが弱いからではなく、心身状態や勤務への不満が苛立ちやすさに関わるためです。まず「誰に怒ったか」だけでなく、「自分の状態はどうだったか」を見る必要があります。
なぜ起きるのかは、心身状態の不調やモチベーション低下が、苛立ちやすい状態につながるためです。建前では、どの日も同じように優しく対応したいものです。現実には、休憩が取れない、残業が続く、組織の協力が薄い日ほど余裕が減ります。そのズレが、普段なら対応できる場面でも声が荒くなる問題を生みます。押さえるべき視点は、怒りを「相手のせい」だけにせず、自分の体調、勤務状況、直前業務も一緒に振り返ることです。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.
終わらない業務への焦りで反応が荒くなる
「この時間までに起こす」「入浴前に排泄を終える」など、介護現場には時間で動く場面があります。そこへ拒否や訴えが重なると、利用者に向けた怒りのように見えて、実際には終わらない業務への焦りが混ざっていることがあります。
なぜ起きるのかは、予定どおりに進まない業務と、迫る時間が相互に焦りを強めるためです。建前では、利用者のペースを大切にしたいものです。現実には、限られた人員で食事、排泄、入浴、記録を同時に進める必要があります。そのズレが、「今これをやっているのに」という苛立ちを生みます。押さえるべき視点は、時間帯ごとに中止基準や応援基準を作り、怒りのピークで頑張り続けないことです。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
諸種の苛立ちが重なり,自分の中にたまり,つい利用者への対応の場面で,声を荒げてしまったり,スピーチロックをしてしまったりと,自然と自分の介護が乱れていくということである.自然にやりたくない介護をしていることで“苛立つ自分への嫌悪・否定”につながっている.
BPSD対応の疲弊や困難なケアへの不安が重なる
認知症のある利用者の暴言、暴力、拒否、同じ訴えへの対応は、理解していても消耗します。「本人の悪意ではない」と思っても、痛みや怖さ、不安までなくなるわけではありません。理解は職員を黙らせるためではなく、対応を変えるために使うものです。
なぜ起きるのかは、BPSD対応に疲弊し、困難なケアへの不安や倫理的苦悩が重なり得るためです。建前では、認知症の症状を理解し、落ち着いて関わりたいものです。現実には、暴言・暴力や夜勤中の不穏、安全確保への不安が続くと、職員も精神的なダメージを受けます。そのズレが、「もう無理」という限界サインになります。押さえるべき視点は、本人の尊厳と職員の安全を両方守るために、二名対応や担当交代を検討することです。
出典元の要点(要約)
徐廷美・杉本知子
介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
また,【BPSD対応に疲弊する】のカテゴリーは〈BPSDにうまく対応できないことで不全感がある〉,〈暴言・暴力に精神的なダメージを受ける〉のサブカテゴリーで表された.対象者のBPSDに対し「これ以上何も対応できないと思う」と考え,「無力感にさいなまれる」という言葉もあった.
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても,職員の安全に配慮する必要があることには変わりありませんから,ハラスメント対策とは別に,対応を検討する必要があります.そのため,暴言・暴力を受けた場合には,職員が一人で問題を抱え込まず,上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切です.
自己嫌悪だけで終わると悪循環が残る
怒鳴らなかったとしても、強い怒りを感じた後に「自分は最低だ」と責めることがあります。けれど、自己嫌悪だけでは次の勤務の条件は変わりません。どの場面で限界を超えたかを短く記録し、再発防止の材料に変える必要があります。
| 見る項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 時間帯 | 夜勤、食前、入浴前など負荷が集中していたか |
| 介助内容 | 拒否や暴言が起きやすい介助だったか |
| 人員配置 | 一人対応が続き、交代しにくかったか |
| 直前業務 | 記録、排泄、コール対応などが重なっていたか |
なぜ起きるのかは、苛立った自分を責めることで、再び苛立ちやすい状態へ戻りやすくなるためです。建前では、反省すれば次は優しくできると思いがちです。現実には、同じ時間帯、同じ介助、同じ人員配置が続けば、同じ限界が来ます。押さえるべき視点は、感情を反省文にせず、チームで使える情報に変えることです。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
諸種の苛立ちが重なり,自分の中にたまり,つい利用者への対応の場面で,声を荒げてしまったり,スピーチロックをしてしまったりと,自然と自分の介護が乱れていくということである.自然にやりたくない介護をしていることで“苛立つ自分への嫌悪・否定”につながっている.
怒りは一つの原因だけで起きるとは限りません。体調、業務量、BPSD対応、チーム状況、自己嫌悪の循環を分けて見ることが、次の予防につながります。
介護士の怒りで迷ったときのFAQ
現場では、「怒りを感じた時点で失格なのか」「どこまで我慢すべきか」と迷うことがあります。ここでは、事実根拠で説明できる範囲に絞って整理します。
- Q利用者に怒りを感じたら介護士失格ですか?
- A
怒りを感じるだけで、すぐに介護士失格とはいえません。介護職員の苛立ちは、心身状態の不調、モチベーション低下、終わらない業務への焦りなどと関連して生じることがあります。ただし、怒りが嫌味、無視、乱暴な介助、後回しに進む前に止める必要があります。
出典元の要点(要約)
藤江慎二
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.
- Qキレそうなときも説得を続けるべきですか?
- A
怒りが強くなっているときは、無理に説得を続けるより、いったん注意や場面を切り替える判断が必要な場合があります。怒りの制御方略では、状況や注意を扱う考え方が整理されています。介護現場では、触らない、離れる、交代を頼むなど、行動に出る前の安全行動として使います。
出典元の要点(要約)
金谷悠太・川合伸幸
怒りの制御方略に関する研究動向と展望 ――実験研究を対象とした検討.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/96/2/96_96.23402/_pdf/-char/ja
感情制御のプロセスモデルでは,情動反応が,状況・注意・評価・反応の段階を経て生成されることを前提とする.このモデルでは,感情制御方略を,状況選択,状況修正,注意配分,認知変容,反応調整と呼ばれる5つのグループに分類する.たとえば注意配分には,情動を誘発した刺激から注意を逸らす「気晴らし」が含まれる.
- Q認知症の暴言や暴力は全部受け止めるべきですか?
- A
認知症等に起因する言動は、ハラスメントとしてだけでなくケアとして検討する必要があります。一方で、暴言・暴力がある場合でも職員の安全配慮は必要です。一人で抱え込まず、上長や施設内で報告・共有し、対応を検討することが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても,職員の安全に配慮する必要があることには変わりありませんから,ハラスメント対策とは別に,対応を検討する必要があります.そのため,暴言・暴力を受けた場合には,職員が一人で問題を抱え込まず,上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切です.
- Q怒鳴った後はどう振り返ればいいですか?
- A
「自分は最低だ」で終わらせず、どの条件が重なったかを分けて見ます。時間帯、介助内容、人員配置、直前業務、利用者の状態を短く残すと、次の勤務者も同じ場面に備えやすくなります。目的は責めることではなく、不適切ケアへ進む前の逃げ道を作ることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
問題が起こった際には,施設・事業所内で問題を共有する場を設け,対応方法を皆で議論する場を設けること.ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が,一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん,相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないようにすることが大切です.
FAQで大切なのは、怒りを責めるだけで止めようとしないことです。限界の前兆を見つけ、離れる・交代する・共有する形に変えます。
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介護士の怒りは「今きついので交代お願いします」から扱い直す
現場では、優しくしたい気持ちがあるのに、拒否や暴言、頻回な訴えが重なって限界に近づくことがあります。そこで怒りを完全になくそうとすると、自己否定だけが増えやすくなります。
まず決めたい一歩は、「今きついので交代お願いします」と言えるルールです。これは弱さではなく、怒りが無視、怒鳴り、乱暴な介助、後回しに進む前に止めるための安全行動です。
怒りを感じた自分を責めるだけで終わらせず、どの場面で限界を超えたのかをチームで見直していきましょう。本人の尊厳と職員の安全は、どちらか一方ではなく、両方守る必要があります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
更新履歴
- 2026年1月1日:新規投稿
- 2026年5月9日:内容を全面的にリライト







