
現場で実際にあった一例では、バルーンカテーテルのバッグが椅子側に残ったまま、認知症の利用者が歩こうとしました。そのままではチューブが引かれると考えて制止すると、その後に本人が不穏となり、床へ座り込みました。止めなければ危険、止めても対応が難しくなるという板挟みが表れた一場面です。
危険を防ごうとした判断まで「間違いだった」と責める必要はありません。ただ、別の介護職が歩行対応を繰り返すなかで、同じ制止を重ねるほど拒否や不穏が強まった経験からは、言い換えだけでなく、最初の一言の後に何を見るかが大切だと気づけます。表情や視線、足取りを見ないまま「戻ってください」と続けていないかを振り返ります。
この記事では、徘徊の制止で逆効果になりやすい声かけ10例を取り上げます。危険時は安全を優先し、待てる場面では本人の反応を一呼吸待つ現場で使える判断の順番を整理します。言葉を変えても反応が変わらない限界も含め、次の勤務で試せる一歩へつなげます。
この記事を読むと分かること
- 制止が逆効果になる理由
- 避けたい声かけ10例
- 声かけ前の観察点
- 危険時の判断の順序
- 失敗後の振り返り方
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
認知症の徘徊は、まず危険を分け、待てる場面で歩く理由を見る

徘徊は一律に止めません。まず危険の切迫度を分け、待てる場面では本人の目的と反応を見ます。危険時は安全を優先します。
現場では、認知症の利用者が廊下を歩き続けたり、出口や他の入居者の居室へ向かったりしたとき、事故や周囲への影響を避けようと、反射的に「戻りましょう」「行かないでください」と止める場面があります。ところが、必要な安全対応のつもりでも、声をかけた後に拒否や不穏が強まり、言葉を重ねるほど動きも口調も強くなれば、止めるべきか見守るべきか分からなくなります。止めなければ危険でも、止めた後の対応まで背負うのが現場介護士です。この章では、まず危険の切迫度を分け、待てるなら本人の反応と歩く目的を見るという判断の順番と、すべてを言葉で解決できない限界を理解できます。
現場で起きやすいケース
先の一例のように、チューブが引かれる危険を見て制止した直後、利用者が不穏になって床へ座り込むと、安全確保と次の対応が同時に必要になります。介護職には、待てない瞬間にどう動くかと、介入後の反応をどう受け止めるかが一度に押し寄せます。そこで、危険時の安全確保は否定せず、危険が去った後まで同じ制止を重ねるかを切り分けます。
危険が切迫しているかを最初に分ける

現場では、出口へ向かう、周囲と接触しそうになるなど、見過ごせない動きと向き合います。チューブ類の危険が見えた一例でも、反応を待つより先に安全を守る判断が必要だと感じました。まず、危険の有無を最初に分ける視点を確認します。
手引きは、身体拘束などの行動制限を検討する場合、「切迫性」「非代替性」「一時性」を慎重に確かめ、一時的な緊急事態に限定するとしています。これは通常の短い安全介入を身体拘束と同じに扱う記述ではありません。単に「危ない」で一律に行動を制限せず、危険の切迫度、ほかの方法、制限する時間を個別に確かめる視点として扱います。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
身体拘束は、本人の行動を、当人以外の者が制限することであり、当然してはならないことです。運営基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」の適正な手続きを経た身体的拘束等は認められています。この適正な手続きは、あくまでも「本人の尊厳を守るため」に行うものです。適正な手続きとは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たすかどうかを組織等で話し合い、かつ、それらの要件の確認等の手続きを極めて慎重に行うことです。「緊急やむを得ない場合」の対応とは、これまでにおいて述べたケアの工夫のみでは十分に対処できないような、「一時的に発生する緊急事態」のみに限定される。
危険が切迫していなければ、本人の反応を一呼吸待つ
現場では、廊下を歩く利用者に「戻りましょう」と伝え、返答を待たずに次の説明を重ねたくなります。次の業務が迫るほど、本人が見ている先や表情を確かめる間を取りにくくなります。この項目では、最初の一言の後に一呼吸待つ意味を確認します。
マニュアルでは、言葉だけでなく表情や身振りなどの非言語メッセージを使い、介護者が伝えたいことより本人の反応を待つ大切さが示されています。返事がないときも、本人の反応を一呼吸待ち、表情や身振りなどの非言語メッセージを見ます。ただし、すべての利用者に同じ待ち方が合うとは決めず、その時の反応に合わせます。
出典・根拠を確認
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
安全を確保した後は、止め続ける以外の関わりを探す
現場では、いったん危険を避けた後も、再び動くのが怖くて「ここにいてください」と伝え続けたくなります。制止後に床へ座り込まれると、次の危険まで考えて言葉が増えやすくなります。この項目では、安全を見ながら行動を止め続けない方法を考えます。
手引きにある一つの事例では、本人の動線を考えて環境を調整し、歩いているときは無理に止めず、本人が認識できる位置から話しかける方法が検討されています。これは、同じ対応なら必ず落ち着くという成功法則ではありません。安全を確保した後、制止を重ねる以外に、本人が認識できる位置や周囲の状態を調整できないかを見るための個別例です。
- 歩行を止める言葉だけでなく、本人の動線や周囲の環境から安全確保を考えたいときがあります。転倒への備えと本人の行動を必要以上に制限しない工夫を、声かけ以外の角度で整理できます。
- 詳しくは、身体拘束を減らすための転倒対策|介護士が知るべき環境調整のコツで確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
居室内での移動を安全に実施できるようにするため、家族に床に敷くジョイントマットを持ち込んでいただき、転倒した場合にも大きな怪我につながらないよう配慮した。また、居室内で落ち着いて座っていただけるよう、本人の動線を考慮して、座りやすい位置にソファを設置した。その際、ソファが本人の行動を妨げないよう工夫した。ユニット会議では、施設内で安全に過ごしていただけるよう検討を重ねた。主に、本人が歩いている場合に無理に止めないこと、本人の認識できる位置から話しかけること、本人が座ろうとしている際の介助の方法について話し合い、職員間で対応方法を統一した。内部研修でも、本人の担当職員から状況の説明、対応策の周知、多職種における連携の協力依頼を実施した。
次の歩行場面では、まず目の前の危険を分けます。待てるなら一呼吸だけ表情や視線を見て、危険を避けた後は、同じ制止を続ける以外の位置や周囲の調整を探します。言い換えだけで反応が変わらないときも、失敗と決めつけません。
認知症の徘徊で逆効果になりやすい声かけ10例

現場では、歩き続ける利用者を見た瞬間、短い禁止の言葉が先に出ることがあります。危険が切迫する場面では止める必要がある一方、制止後に拒否や不穏が強まることがあるという板挟みは、「何と声をかければよいのか」という迷いを深くします。
バルーンカテーテルを使う利用者の例では、チューブが引かれる危険から制止した後に床へ座り込み、別の対応が必要になりました。声かけだけが悪かったとは整理できない迷いが残ります。別の介護職には、他の入居者の居室へ向かう動きを止めて拒否された経験や、夜間の反復対応で口調が強くなり、後から自分を責めた経験もありました。こうした場面では、その場で対応する職員が危険時は安全を優先し、待てるときは一言の後に反応を見て、変化がなければ禁止を重ねない対応へ切り替えます。
1・2「戻りましょう」「部屋に戻ってください」―行き先を先に決める声かけ
ほかの業務が残るなか、利用者が廊下を歩き続けていると、返答を待つか、先に自室へ促すかで迷います。ある介護職は夜間の歩行対応が重なり、ほかの利用者への対応も残るなかで目を離せず、止めれば抵抗され、笑顔で関われない自分にも苛立っていました。焦って「戻りましょう」を重ねる前に、最初に気づいた職員が本人の見ている先を確かめ、一度だけ問い、反応を待つ余地をつくります。
1.「戻りましょう」は、本人の行き先を確かめる前に、職員が「戻る」と決める形になり得ます。
2.「部屋に戻ってください」は、「ください」と丁寧でも、本人が何をしようとしているかより自室への移動を先に求める言葉です。穏やかな語尾なら意思を確かめたことになる、とは限りません。
押さえたいのは、職員が伝えたいことより本人の反応を一呼吸待つことです。最初に気づいた職員は、表情・身振りを見て、「何かお探しですか」と短く問い、答えを急かしません。返答がなければ言葉を重ねず、非言語の反応から本人の意思を読みます。この問いも万能ではないため、反応に合わせて言葉の量を変えます。
- 徘徊時の制止とは場面が異なりますが、本人の反応を見る前に介助の結論を伝えてしまう悩みは、トイレ誘導の一言目にも表れます。最初の声かけを場面別に振り返りたいときに役立ちます。
- 詳しくは、トイレ誘導の一言目で拒否される原因とは|認知症ケアで必要な声かけの見直し方で確認できます。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
3・4「ダメですよ」「行かないでください」―否定と禁止だけを伝える声かけ

先の事例では、安全を守るためにまず止めざるを得ませんでした。この迷いを「声かけの失敗」だけで終わらせず、危険への対応は外さないまま、二度目の禁止より先に表情の変化を見ることが次の切り替えになります。
3.「ダメですよ」は、何が気になって歩いているのかを尋ねず、本人の行動全体を否定する形になり得ます。
4.「行かないでください」は、語尾が丁寧でも、行こうとする意思へ禁止を返す言葉です。丁寧な語尾なら否定の言葉にならない、とは限りません。
命令・否定の言葉は、自尊心を傷つけるとされ、同じ行動のたびに否定される形は気分の落ち込みや易怒性につながることがあります。担当者は二度目の禁止を言う前に本人の反応を見て、安心できる言葉への言い換えを試します。ただし、言い換えだけで必ず反応が変わるわけではなく、本人に合う言葉を探す必要があります。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.
5・6「ここにいてください」「座っていてください」―待機や着座を優先する声かけ
ある介護職の経験では、歩き続ける利用者が他の入居者の居室へ入る可能性があり、自由に歩いてもらうだけでは対応できませんでした。一方、行動を止めたり別の場所へ促したりすると、「構わないで」「ほっといて」という趣旨の拒否が返り、落ち着くまで付き合いながら、どこまで動きを制するかで迷いが続きました。その場にいてほしい職員側の事情だけで決めず、本人が動こうとする背景を、促す前に確かめる必要が見えてきます。
5.「ここにいてください」は、その場を離れようとする本人の意思を確かめる前に、待つ場所を職員が決める形になり得ます。
6.「座っていてください」は、立ち上がった理由を見る前に、姿勢を戻すことを優先する言葉です。「ください」と付ければ本人の意向と合う、とは限りません。
確認したいのは、言葉の意味が伝わっているか、本人の意思とずれていないか、不安や孤独、身体の不快・苦痛、危険を感じていないか、何かを示そうとしていないかです。最初に動きへ気づいた職員が、同じ着座の指示を重ねる前に、この候補を一つずつ見ます。一つを原因と決めつけず、様子が合わなければ指示の反復から背景の確認へ切り替えます。
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厚生労働省
介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人についてもう一度心身の状態を正確にアセスメントし、身体拘束を必要としないケアを作り出す方向を追求していくことが重要である。認知症の行動・心理症状がある場合も、そこには何らかの原因があるのであり、その原因を探り、取り除くことが大切である。認知症の行動・心理症状の原因は、本人の過去の生活歴等にも関係するが、次のようなことが想定される。したがって、こうした原因を除去する等の状況改善に努めることが重要である。(1)職員の行為や言葉かけが不適当か、またはその意味が理解できない場合(2)自分の意志にそぐわないと感じている場合(3)不安や孤独を感じている場合(4)身体的な不快や苦痛を感じている場合(5)身の危険を感じている場合(6)何らかの意思表示をしようとしている場合
7・8「どこへ行くんですか」「また歩いているんですか」―質問が詰問になる声かけ
歩き始めるたびに対応した介護職の経験では、他の入居者の居室へ入る可能性もあって目を離せず、「また止めなければならない」という焦りが重なり、本人への口調が次第に強くなり、その自分にも苛立っていました。質問の形を選んでも、答えを待てなければ、歩く理由より職員の急ぐ気持ちが先に出ます。問いを一つ置いた後、返答だけでなく表情や身振りを見る時間を取ることが、詰問になっていないかを見直す一つの目安になります。
7.「どこへ行くんですか」は、目的を尋ねる形でも、すぐ答えを求めると職員が聞きたいことを優先する問いになり得ます。
8.「また歩いているんですか」は、今の目的より「繰り返している行動」を先に示すため、本人の意思を読む問いとは分けて考えます。疑問文なら意思を尊重できる、とは限りません。
声をかけた職員は、一つ尋ねたところで一呼吸待ちます。言葉の返答だけを追わず、表情や身振りなどの非言語メッセージも見て、本人が何を行いたいかを読み取ります。反応が見えないときもすぐ次の質問へ移らず、その間の表情や動きを確かめます。短い問いで必ず目的が分かるわけではないため、見えた反応に合わせることが限界です。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
9・10「さっき説明しましたよ」「何度言ったら分かるんですか」―説明の反復で理解を責める声かけ
夜間に歩き続ける利用者へ、止めれば抵抗される対応を繰り返した介護職の経験では、ほかの利用者への対応や夜勤業務も残るなかで余裕がなくなり、関わること自体がしんどいと感じ、口調が強くなった後で自分にも腹を立てていました。本当は穏やかに対応したくても、同じ説明を繰り返す場面では言葉が崩れます。前の説明を持ち出す前に、いま目の前にある反応を見るところへ戻ることが、現実的な切り替えです。
9.「さっき説明しましたよ」は、前の説明を覚え、今回も同じように受け取れることを前提にし、現在の行動へ否定を重ねる形になり得ます。
10.「何度言ったら分かるんですか」は、伝わらない困りごとを本人の理解だけへ返す言葉です。説明回数を増やせば最後には納得する、とは限りません。
同じ行動のたびに否定の言葉を使うと、本人には毎回否定される形となり、気分の落ち込みや易怒性につながることがあります。対応する職員は、前の説明を繰り返す前に現在の反応を見て、安心できる言葉への言い換えを試します。反応が変わらなければ、説明や否定をさらに重ねるのではなく、表情・身振りや歩く背景を確認し、必要に応じて本人に合う短い言葉を探します。
- 徘徊対応とは別の場面ですが、拒否が続いて口調が強くなり、自分を責める苦しさはトイレ誘導でも起こります。介護士の怒りを責めずに整理し、次の関わりへ切り替える視点を確認できます。
- 詳しくは、トイレ誘導を拒否されて腹が立つ原因とは|介護士が感情的になる前に必要な視点で確認できます。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.
10の言葉は、言い方だけでなく、本人の目的より制止を先にする構造を見直す材料です。次の歩行では一言の後に反応を待ち、変化がなければ同じ禁止や説明を重ねず、表情・身振りと歩く目的の確認へ切り替えます。
介護の仕事と暮らしを、ちょっと良くする選択肢
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なぜ認知症の徘徊を制止すると不穏が強まることがあるのか?

歩き続ける利用者の先に出口や他の入居者の居室があり、チューブ類にも注意が必要なら、「まず止める」が先に出ます。安全を守ろうとしたのに反応が強まり、介護職自身も「何が正解だったのか」と揺れる背景には、伝える側と本人の間に生じる複数のずれがあります。ここでは、制止で不穏が強まることがある理由を4つに分けます。
先のバルーンカテーテルの場面では、安全を優先して制止した後に本人が床へ座り込み、その判断まで誤りだったのかと迷いが残りました。この経験から振り返れるのは、止めた判断だけを責めるより、危険を避けた後の関わりを分けて考える必要があるという点です。危険は放置せず、安全を確保した後は同じ言葉を重ねる前に本人の反応を見る、という切り替えへつなげます。
本人の目的より、職員が伝えたい「止まってほしい」が先になるから
廊下の先へ向かう利用者を見て、次の業務も迫るなか「戻りましょう」と声をかけることがあります。ところが、本人の視線や向かう先を確かめないまま言葉を重ねると、制止したい側の目的だけが会話に残り、次に何を言うか迷います。最初の一言の後は、表情・視線・身振りから何をしたいかを見るところへ切り替えます。
マニュアルでは、介護者が伝えたいことを優先するより、本人の反応を一呼吸待ち、本人の意思を読み取ることが大切だとされています。本人が何をしようとしているかを確かめてから、必要な内容を伝えることが望まれます。一方、歩行を見つけると説明や誘導を続けたくなり、本人の反応を待つ時間が抜けやすくなります。そのずれで、本人の意思を読む機会が少なくなることがあります。
押さえたいのは、言葉の巧さより反応を待つ順番です。その場で最初に声をかけた介護士が、次の言葉を足す前に一呼吸置き、表情・視線・身振りを見ます。返答がなくても非言語反応を確かめ、何を行いたいかを読み取る材料にします。そのうえで、伝える内容を続けるか、短い問いへ切り替えるかを決めます。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
命令・否定を繰り返す形になりやすいから
夜間に歩き出すたび「ダメです」「行かないでください」を繰り返し、拒否されるほど声が強くなったという介護職の経験があります。危険を避けたいのに、自分の口調にも嫌気が差し、止めるべきか黙るべきか迷います。同じ禁止語をもう一度伝える前に、本人の反応と自分の言葉の量を見直します。
命令や否定は、一回ごとの発言が短くても、同じ行動のたびに使えば本人には否定が繰り返される形になるためです。安全を伝えながら、自尊心を傷つけない関わりが求められます。ただ、歩行が続く場面では短く明確に伝えようとして、同じ禁止語を重ねやすくなります。その積み重ねは、気分の落ち込みや易怒性などにつながることがあります。
大切なのは、本人が怒ったことを介護士一人の失敗と決めず、同時に強い言葉も正当化しないことです。対応している介護士が、同じ禁止語をもう一度言う前に、今の言葉が命令や否定になっていないかを確かめます。該当するなら、安心できる言葉や言い換えへ切り替えます。ただし、言い換えれば必ず反応が変わるとは決めません。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.
言葉の内容だけでなく、表情や身振りも伝わるから
「急いで戻りましょう」と丁寧な語尾を選んでも、焦って正面へ回り込み、返答を待たず話し続けることがあります。言葉は柔らかいのに本人の緊張が増すと、どの言い換えを試すべきか迷います。声を足す前に自分の表情や身振りを確かめ、本人が反応できる間を取ります。
言葉だけでなく、表情や身振りもコミュニケーションとして伝わるためです。丁寧な文言だけでなく、本人が受け取る非言語メッセージにも目を向けます。止めなければと焦る場面では、語尾は穏やかでも表情が硬くなり、本人の反応を待たずに次の言葉を続けることがあります。言い換えだけに頼ると、このずれを見落とすことがあります。
マニュアルでは、認知症の進行に伴い、非言語的コミュニケーションの重要性が増すとされています。ただし、すべての人へ一律に言葉が通じないと決める意味ではありません。声をかける介護士は、直前と直後に自分と本人の表情・身振りを見ます。一呼吸待ってから、言葉を続けるか、言葉の量を減らすかを切り替えます。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
不安・身体的不快・意思表示など、歩く背景を見落とすことがあるから
自室へ戻るよう促すことに集中し、あとで本人が何かを探すように辺りを見ていたことへ気づく場合があります。歩行が続けば止めたい一方、理由を一つに決めるのも不安です。声かけ前に表情・訴え・視線・足取りを見て、歩く背景を探る方向へ切り替えます。
歩く行動だけへ注目すると、その背景にある複数の確認候補を見落とすことがあるためです。本人の心身の状態を改めて見て、行動の原因を探る視点が必要です。一方で、現場では「徘徊を止める」が先になると、職員の言葉の意味が伝わっているか、本人の意思に合っているかを確かめる前に、同じ対応を続けることがあります。そのずれで、状況改善の手がかりが減ることがあります。
背景には、不安や孤独、身体的不快や苦痛、身の危険を感じていること、何らかの意思表示などが候補として挙げられています。これは個別の原因を決める一覧ではありません。対応する介護士が声を重ねる前に、職員の言葉の意味が伝わっているか、本人の意思に沿っているかなどを確認します。一つに断定せず、その時点で確かめられない場合は、原因を決めつけないところで止めます。
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厚生労働省介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人についてもう一度心身の状態を正確にアセスメントし、身体拘束を必要としないケアを作り出す方向を追求していくことが重要である。認知症の行動・心理症状がある場合も、そこには何らかの原因があるのであり、その原因を探り、取り除くことが大切である。認知症の行動・心理症状の原因は、本人の過去の生活歴等にも関係するが、次のようなことが想定される。したがって、こうした原因を除去する等の状況改善に努めることが重要である。(1)職員の行為や言葉かけが不適当か、またはその意味が理解できない場合(2)自分の意志にそぐわないと感じている場合(3)不安や孤独を感じている場合(4)身体的な不快や苦痛を感じている場合(5)身の危険を感じている場合(6)何らかの意思表示をしようとしている場合
制止場面では、本人の反応を待って意思を読み、命令・否定を重ねず、行動の背景に複数の確認候補があることを押さえます。危険が切迫していない場面では、最初の一言の後に反応を待ち、次の言葉を足すか切り替えます。
介護の仕事と暮らしを、ちょっと良くする選択肢
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認知症の徘徊を止める声かけで迷うときのFAQ
現場では、行動を一律に止めないよう意識していても、安全のために待てない場面があります。言い換えても怒られることがあり、どの言葉なら正解なのかと迷いやすい疑問を、判断の順番に置き換えて整理します。
- Qチューブ類や出口の危険があっても、徘徊は止めないほうがよいですか?
- A
一律には決められません。本人の行動を制限する対応が身体的拘束等に当たる場合、厚生労働省の手引きでは「切迫性」「非代替性」「一時性」を組織等で慎重に確認し、緊急やむを得ない対応を一時的な緊急事態に限定しています。なお、この引用は身体的拘束等に当たる行動制限についてのもので、通常の短い安全介入を直接扱っていません。
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厚生労働省
介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
身体拘束は、本人の行動を、当人以外の者が制限することであり、当然してはならないことです。運営基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」の適正な手続きを経た身体的拘束等は認められています。この適正な手続きは、あくまでも「本人の尊厳を守るため」に行うものです。適正な手続きとは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たすかどうかを組織等で話し合い、かつ、それらの要件の確認等の手続きを極めて慎重に行うことです。「緊急やむを得ない場合」の対応とは、これまでにおいて述べたケアの工夫のみでは十分に対処できないような、「一時的に発生する緊急事態」のみに限定される。
- Q「何かお探しですか」と聞けば、不穏になりにくいですか?
- A
その一言だけで不穏になりにくいとは限りません。「何かお探しですか」と質問した後は、別の言葉を重ねず、本人の反応を一呼吸待ちます。表情や身振りなどの非言語メッセージを見て、本人が何をしたいか、意思を読み取ります。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
- Q本人が質問に答えないときは、何を見ればよいですか?
- A
表情や身振りなど、言葉以外の反応を確認します。返答の有無だけで判断せず、「何をしたいか」を一つに決めつけないまま、その場で見える反応を次の声かけの材料にします。
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションとは,社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達(広辞苑より引用)であり,言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがある.認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーションの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7).認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
- Q言い換えても怒られたら、声かけに失敗したのでしょうか?
- A
原因を職員の声かけ一つに決めません。穏やかに言ったつもりでも拒否された日は、言葉の意味が理解できなかった、本人の意思にそぐわなかった、不安や孤独、身体的不快や苦痛、身の危険、意思表示など、手引きに挙げられた候補を確認します。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護施設・事業所等で働く方々への 身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人についてもう一度心身の状態を正確にアセスメントし、身体拘束を必要としないケアを作り出す方向を追求していくことが重要である。認知症の行動・心理症状がある場合も、そこには何らかの原因があるのであり、その原因を探り、取り除くことが大切である。認知症の行動・心理症状の原因は、本人の過去の生活歴等にも関係するが、次のようなことが想定される。したがって、こうした原因を除去する等の状況改善に努めることが重要である。(1)職員の行為や言葉かけが不適当か、またはその意味が理解できない場合(2)自分の意志にそぐわないと感じている場合(3)不安や孤独を感じている場合(4)身体的な不快や苦痛を感じている場合(5)身の危険を感じている場合(6)何らかの意思表示をしようとしている場合
迷ったら、危険を伴う対応と待てる場面を一律に扱わないことから始めます。待てる場面では本人の反応を一呼吸待ち、言葉の意味、本人の意思、不安、身体的不快など、次に確認する対象を変えてください。
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まとめ|認知症の徘徊を見たら、まず危険の切迫度を分ける
現場では、危険を避けようと制止した後に本人が不穏となり、「止め方が悪かったのか」と迷いが残ることがあります。チューブ類など、待つこと自体が難しい危険が見える瞬間もあります。
次の勤務で試す一歩は、利用者が歩き始めたら、最初に切迫した危険の有無を見ることです。危険が切迫していない場合は、声をかけた後に一呼吸待ち、本人の反応を見ます。
言い換えても反応が変わらない日はあります。制止した自分を責め続けるのではなく、その時に見えた危険、本人の反応、言葉を重ねたかを分けて振り返ってください。最後までご覧いただき、ありがとうございます。
更新履歴
- 2026年1月21日:新規投稿
- 2026年4月15日:内容を全面的にリライト
- 2026年9月11日:内容を全面的にリライト



