認知症に伴うBPSDの暴言の原因と対応 ― 専門ガイドラインに基づく整理

認知症に伴うBPSDの暴言の原因と対応 ― 専門ガイドラインに基づく整理 コラム

入浴前や夕方の介助で突然の暴言が出て、時間も人手も足りず対応が揺らぐ——そう感じているからいらっしゃいますよね?

この記事は、認知症ケアの現場でこんな悩みを抱えるあなたのために書きました。

一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます

  • □ 利用者の突然の暴言に、どう対応すればいいか戸惑ってしまう
  • □ BPSDの対応が自己流になっており、根拠のあるケアができているか不安
  • □ 「またか…」と精神的に疲れてしまうことがある
  • □ 薬に頼るべきか、非薬物で対応すべきか判断に迷う
  • □ チーム内で対応方法がバラバラで困っている

もし一つでも当てはまるなら、ご安心ください。 この記事では、日本精神神経学会および日本認知症学会の最新ガイドラインに基づき、BPSDによる暴言の背景要因の探し方と、現場で実践できる具体的な初動対応を分かりやすく解説します。

この記事を読めば、日々の対応への不安が、科学的根拠に基づいた「自信」に変わります。


BPSDとは?


結論:「非薬物の三手で初動を安定させる——距離・低声短文・刺激調整」

暴言が出た瞬間の初動は、非薬物療法を先に置くことを基点に、安全の確保(距離の確保を含む)低声短文刺激調整を組み合わせて落ち着きを取り戻します。以降の介入は多角的な評価に接続します。

錠剤の画像

非薬物を先に置く(安全の確保と現実的目標)

まず非薬物療法が第一選択で、要因を多角的に評価してから介入します。薬物療法は重大な危険が切迫する場合などに限り検討し、目標は安全の確保苦痛の軽減に置きます。

出典元の要点(要約)

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、BPSDへの対応の原則が以下のように示されています

  • BPSDの管理においては、薬を使わない「非薬物療法」が第一選択である 。
  • 薬物治療を検討するのは、非薬物療法を試みても症状が改善しない場合や、本人・介護者に重大な危険が及ぶ可能性がある緊急の場合に限られる 。
  • 治療における効果の評価は、本人や家族・介護者の苦痛や負担が軽減されたかという視点で行う 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

低声短文で伝える(否定は避けて安心を与える)

穏やかな口調で、短い簡単な言葉を用い、頭ごなしの否定は避けて訴えを受け止めます。安心感を与え、必要に応じて話題転換を図ります。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応では、低声短文で伝えること(否定は避けて安心を与える)が大切です。「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、コミュニケーションについて以下の原則が示されています。

  • 本人が見たり信じたりしている世界を頭ごなしに否定せず、その訴えに耳を傾けることがケアの基本となります。
  • 「それは心配ですね」のように相手の気持ちに寄り添い、安心感を与えることが重要です。
  • コミュニケーションの工夫として、穏やかな口調で、短く簡単な言葉を用い、本人の話を聞いてその感情を受け止めることが挙げられています。

https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

刺激調整で環境を整える(物理・人的環境)

照明・騒音・室温などの物理的環境や、対応の仕方といった人的環境を見直し、過剰な刺激を下げます。生活空間をシンプルに整え、予測可能な日課を提供します。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応では、刺激調整で環境を整えること(物理・人的環境)が有効なアプローチです。「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、環境要因について以下の原則が示されています。

  • 温度や騒音といった物理的環境や、介護者の言動などの人的環境が、認知症の人の症状に影響を与えることがあります 。
  • 介護者の不適切な対応(本人の言動の否定、叱責、無視、過干渉など)は、BPSDを悪化させる大きな要因となり得ます。
  • 生活空間をシンプルに整えたり、一日のスケジュールを一定にして予測可能な日課を提供したりすることが、非薬物療法の具体例として挙げられています。
  • 本人が好きな音楽を流すなど、リラックスできる環境を調整することも有効な場合があります 。

https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

この三手はすべて一次情報の記述に沿う対応です。初動で安全と安心を確保し、続く評価・計画(DICE など)へつなげることで、頻度と強度の低減を現実的に目指せます。


事例:現場でよくあるケース3選

入浴前や夕方帯、服薬の場面などは暴言が出やすい状況です。ここでは非薬物の第一選択を軸に、環境調整と受容的な対応で初動を安定させるケースを示します。

入浴前「触るな!」への対応

羞恥や不安、予告不足が背景にあると拒否が強まります。生活空間をシンプルに整え、予測できる手順にし、穏やかな口調で短い言葉を使うことが大切です。力ずくで進めるのは避け、本人の訴えを受け止めます。

女性の介護職員の画像
出典元の要点(要約)

BPSDへの対応では、入浴前の「触るな!」といったケアへの抵抗に悩む場面も少なくありません。「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、このような状況への向き合い方について、以下の原則が示されています。

  • 力ずくでケアを強行することは不適切であり、BPSDをさらに悪化させる可能性があるとされています 。
  • 対応の基本は、まず本人の言い分に耳を傾け、その背景にある要因を探り、それを取り除くアプローチが重要です 。
  • 非薬物療法の具体例として、一日のスケジュールを一定にして予測可能な日課を提供したり、生活空間をシンプルに整えたりする環境調整が挙げられています 。
  • コミュニケーションにおいては、穏やかな口調で短い言葉を使い、本人の感情を受け止めることが大切です 。


    https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

夕方「帰らせろ!」への対応

夕方は日内変動や睡眠リズムの乱れが関与しやすい時間帯です。睡眠衛生指導を基本に、夕方は照明と刺激を調整し、静かに過ごせる活動へ誘導します。薬物に頼らず非薬物療法を優先することが安定につながります。

出典元の要点(要約)

夕方の「帰らせろ!」といった強い帰宅願望への対応には、睡眠リズムを整える非薬物的なアプローチが基本となります。

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、睡眠障害への対応として以下の原則が示されています。

  • まず、睡眠衛生指導(朝の日光浴、日中の適度な運動、昼寝は30分以内に留める、カフェイン摂取の制限等)を主とした非薬物的な介入を試みます。
  • 薬物療法は、これらの非薬物療法を試みた上で検討されます。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

服薬時「毒を盛った!」への対応

服薬場面では妄想が背景になることがあります。否定は逆効果なので、本人の感じている世界を否定せず、安心を与えながら短く説明します。同時に脱水・感染症・疼痛などの身体要因を確認して背景を探ります。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応では、服薬時の「毒を盛った!」といった被害妄想が見られることもあります。「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、こうした症状への関わり方について、以下の原則が示されています。

  • 幻覚や妄想に対して、頭ごなしに否定することは逆効果になる可能性があります 。本人が信じている世界を受け入れ、その訴えに耳を傾けることが基本です 。
  • 「それは心配ですね」のように、本人の気持ちに寄り添い安心感を与えることが重要です。
  • BPSD、特に急に始まった症状やせん妄の背景には、脱水、感染症、便秘、痛み、あるいは他の服用中の薬剤の影響といった、治療可能な身体疾患が隠れていることがしばしばあります 。

https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

これらの場面は、非薬物を第一に置き環境調整受容的対応を徹底することで安定しやすくなります。次のセクションでは、背景要因を系統的に整理するアセスメントの枠組みを解説します。


理由:BPSDは中核症状と区別される——多因子の相互作用を前提にする

暴言の背景には、生物学的・心理的・環境要因が重なります。定義と射程を共有し、非薬物療法が第一選択となる理由、薬物療法の位置づけとリスク、そして評価の見える化までを一次情報で確認します。

虫眼鏡の画像

定義と射程:まず土台をそろえる

日本精神神経学会のガイドラインではBPSDは中核症状とは区別され、心理症状と行動症状から構成されます。日本認知症学会の解説では、生物学的・心理的・環境要因が相互に影響して出現すると示されます。まず用語と範囲を揃えることで、以降の対処が一貫します。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応を考える上で、まずは定義と射程をそろえること(BPSDとは何か、どのようにして起こるか)が土台となります。

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、BPSDの構成要素について、以下のように示されています。

  • BPSDとは「行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia)」のことであり、記憶障害などの中核症状とは区別されます 。
  • BPSDは、不安や抑うつといった心理症状と、興奮、攻撃性、徘徊、睡眠障害といった行動症状から構成されます 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

また、「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、BPSDが出現する背景について、以下の原則が示されています。

  • BPSDは、認知機能障害を基盤として、身体的要因、環境的要因、心理的要因などが相互に影響し合って出現すると考えられています 。
  • 環境やケアへの反応として二次的に生じるだけでなく、脳の病理的変化そのものが直接的にBPSDを引き起こす場合もあります 。

https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

非薬物優先の根拠:順序と目標を明確にする

日本精神神経学会のガイドラインでは、非薬物療法が第一選択であり、まず要因を多角的に評価してから非薬物を試みます。日本認知症学会の解説では、DICE(Describe/Investigate/Create/Evaluate)の流れが整理され、包括的アセスメントを軸に介入を創り評価する循環が示されます。目標は「安全の確保」と「苦痛の軽減」です。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応を体系的に進める上で、非薬物療法を優先する根拠と、その順序・目標を明確にすることが不可欠です。

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、対応の順序と目標について、以下のように示されています。

  • BPSDへの対応は、まず要因を多角的に評価し、非薬物療法を試みることが第一選択です 。
  • 治療の現実的な目標は、本人や介護者の苦痛を軽減することや、安全を確保することに置かれるべきです 。

「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、具体的な評価の枠組みについて、以下のように示されています。

  • BPSDの背景要因を探り、非薬物療法を中心に対処することが求められます 。
  • BPSDを評価し、その背景要因を調査し、介入計画を作成・評価するという循環的なアプローチ(DICEアプローチ)が知られています 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

薬物療法の位置づけとリスク:適応を絞る

薬物療法は、効果が不十分な場合や重大な危険が切迫する場面で検討します。抗精神病薬については、有益性と危険性のバランスを慎重に評価し、死亡リスクの上昇が報告されています。DLBでは過敏性があり、原則避ける立場が明示されます。開始後は定期モニタリングを行い、漫然投与を避けることが求められます。

出典元の要点(要約)

BPSDへの対応において、薬物療法の位置づけとリスクを理解し、その適応を慎重に絞り込むことが極めて重要です。「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、薬物療法の使用について以下の原則が示されています。

  • 非薬物療法で効果が不十分な場合や、本人や介護者に重大な危険が及ぶ可能性がある緊急の場合に、薬物療法が検討されます 。
  • 抗精神病薬の使用は、死亡リスクや転倒・骨折などのリスクを高める可能性があり、その利益と不利益を慎重に評価する必要があります 。
  • 特にレビー小体型認知症(DLB)では、抗精神病薬への過敏性が認められるため、安易な使用は避けるべきです 。
  • 薬物治療を開始した後は、効果と副作用を定期的にモニタリングし、症状が安定した場合は常に減量や中止の可能性を検討し、長期使用は避けるべきです 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

評価の見える化:尺度で客観化する

Neuropsychiatric Inventory(NPI)などの尺度を使うと、頻度・重症度・介護者の苦痛度を客観化できます。日本精神神経学会のガイドラインでも客観的な評価尺度の活用が推奨され、変化を定量的に捉えることで介入の再設計がしやすくなります。

出典元の要点(要約)

BPSDへの介入効果を判断するために、評価を見える化し、尺度を用いて客観化することが推奨されます。

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、客観的な評価について、以下のように示されています。

  • BPSDの評価には、客観的な評価尺度を用いることが望ましいとされています 。
  • 具体的な尺度として、NPI(Neuropsychiatric Inventory)、Behave-AD、CMAIなどが挙げられています 。
  • 投与前後の定量的評価尺度の利用も推奨されています 。

「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、NPIについて、以下のように補足されています。

  • NPIはBPSDの代表的な評価尺度であり、頻度、重症度、介護者の苦痛度を評価することができます 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf
https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

この前提を共有しておくと、初動の三手がなぜ安定化に寄与するかが明確になります。次のセクションでは、この土台を使いながら、よくある質問に5問5答で端的に答えます。


よくある質問(FAQ)

質問用のサイコロ画像
Q
認知症のBPSDで暴言の原因は何ですか?
A

生物学的・心理的・環境要因が重なって出現します。身体の不調(脱水・感染・便秘・疼痛・薬剤など)、心理的要因(恐怖・混乱)、環境要因(騒音・照明・温度など)が複合的に関与します。

出典元の要点(要約)

BPSD(行動・心理症状)による暴言は、単一の原因ではなく、生物学的・心理的・環境的要因が複雑に重なり合って現れると考えられています。

「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、特に治療可能な身体の不調が背景にあることが少なくないと指摘されています。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 身体的要因: 痛みや便秘、感染症、脱水など。
  • 薬剤の要因: 服用している他の薬の影響。
  • 環境的要因: 騒音などの物理的な環境や、介護者の対応といった人的な環境。
  • 心理的要因: 本人が感じている不安や混乱といった心理的な状態。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

Q
暴言が出た瞬間、最初に何をすればいいですか?
A

非薬物療法を第一に行い、要因を多角的に評価します。安全確保を最優先し、落ち着いた短い言葉や環境刺激の調整で初動を安定させます。

出典元の要点(要約)

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、BPSDへの初期対応について、以下の原則が示されています

  • 非薬物療法の優先: まずは環境調整やケアの変更、心理的介入といった非薬物的な介入を検討し、実施します 。
  • 安全の確保: 治療の目標は、本人や介護者の苦痛を軽減することに加え、「安全を確保すること」に置かれるべきです。
  • 要因の評価: BPSD様の症状を引き起こす可能性のある、せん妄や身体疾患(感染症、脱水、痛み、便秘など)、服用中の薬剤の影響などを除外することが重要です 。
  • 薬物療法の検討: 非薬物療法で効果が不十分な場合や、本人や介護者に重大な危険が及ぶ可能性がある緊急の場合にのみ、向精神薬の使用を検討します 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

Q
薬物療法はどのような場合に考えますか?
A

非薬物で不十分、あるいは本人や周囲に危険が切迫する場合です。薬物は単剤・必要最小量で開始し、効果と副作用を定期的に確認しながら減量・中止も検討します。

出典元の要点(要約)

「日本精神神経学会」の「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」では、薬物療法の位置づけについて、以下の原則が示されています。

  • 非薬物療法が第一選択: BPSDへの対応は、まず環境調整やケアの工夫といった非薬物療法を試みることが原則です。
  • 限定的な使用: 薬物療法は、非薬物療法で効果が不十分な場合や、本人・介護者に重大な危険が及ぶ可能性がある緊急の場合に限って検討されます。
  • リスクの考慮: 特に抗精神病薬は、死亡リスクの上昇なども報告されており、その利益と危険性のバランスを慎重に評価し、本人・家族との合意形成(共同意思決定)が不可欠です。
  • 少量からの開始と定期的な見直し: 薬物治療を始める際は、少量から開始し、常に効果と副作用を確認します。症状が安定した場合は、減量や中止を常に検討し、漫然とした長期使用は避けるべきです。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

Q
夕方や夜に暴言が強まるのはなぜ?
A

日内変動や睡眠・覚醒リズムの乱れが関与します。まず睡眠衛生指導(日中活動、昼寝回避、規則正しい就寝)を行い、非薬物療法を優先します。

出典元の要点(要約)

「日本精神神経学会」のガイドラインなどでは、睡眠・覚醒リズムの障害への対応は、薬物療法よりもまず生活習慣を整えることが基本とされています。

  • 対応の基本は「睡眠衛生指導」: BPSDへの対応では、まず非薬物療法を行うべきとされています 。特に睡眠リズムの乱れに対しては、「睡眠衛生指導」を主とした介入が試みられます 。
  • 具体的な生活習慣の工夫: 睡眠衛生指導には、以下のようなものが含まれます。
    • 朝の日光浴
    • 日中の適度な運動
    • 昼寝を30分以内に留める
    • カフェイン摂取の制限
  • 薬物療法の位置づけ: これらの非薬物的な介入を試みた上で、睡眠薬などの使用が検討されます 。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

Q
被害妄想に基づく暴言への対応は?
A

否定せず受け入れる姿勢が大切です。本人の見ている世界を否定せず、「それは心配ですね」といった短い受容的な言葉で安心感を与えます。

出典元の要点(要約)

「日本認知症学会」の「認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSDを中心に」では、妄想などへの関わり方について、以下の原則が示されています。

  • 否定しない受容的な姿勢: 本人が見たり信じたりしている世界を否定せずに受け入れ、その訴えに耳を傾けることが基本です 。頭ごなしに否定することは、BPSDをさらに悪化させる可能性があるため逆効果です 。
  • 感情への寄り添い: 「それは心配ですね」というように、妄想の内容そのものではなく、本人が感じている不安や心配といった感情に寄り添うことが重要です 。
  • 安心感の提供: やさしい言葉をかけたり、散歩に誘ったりするなど、本人が安心して過ごせるような工夫を行うことが、不安を和らげることにつながります 。

https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf


🔷まとめ:今日から始める——初動の三手と包括的アセスメント

本記事の核は、非薬物療法が第一選択であること、背景要因を包括的に評価すること、そして現実的な治療目標(安全の確保/苦痛の軽減)を共有することです。現場の初動を安定させるための要点を、一次情報に基づいて再確認します。

要点の3行サマリ

  • 暴言はBPSDとして捉え、中核症状とは区別して評価する。
  • 初動は距離・低声短文・刺激調整の三手+包括的アセスメント
  • 薬物は非薬物で不十分または重大な危険が切迫する場合に限定し、単剤・最小量・定期モニタリング

今日からできるチェックリスト

  • 言い換え定型句を3つ用意(短く・落ち着いた口調/否定を避ける)。
  • 夕方帯の照明・騒音・室温を点検(過剰刺激の低減)。
  • せん妄/身体要因(脱水・疼痛・便秘・感染・薬剤)を系統的に確認
  • 介入前後でNPIなどの評価尺度を記録し、変化を見える化。
  • 目標は安全の確保/苦痛の軽減で共有(完全消失を前提にしない)。

出典:
日本精神神経学会
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSD に対応する向精神薬使用ガイドライン(第 3 版) 
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/BPSD_guideline.v.3.2025.pdf

日本認知症学会
認知症の症状は「分類」から「視点」への転換を~BPSD を中心に
https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p226-240.pdf

更新履歴

  • 2025年10月3日:新規投稿
  • 2025年10月9日:冒頭部分の一部修正

タイトルとURLをコピーしました