【介護】なぜ怒る?認知症の暴言とBPSDの原因・現場で使える対応法

※本ページはプロモーションが含まれています

「否定しないケア」ができないのは、あなたのせいではありません。

「否定してはいけない」という理想と、人員不足で余裕のない現場の限界。その板挟みで、多くの職員が孤独な葛藤を抱えています。

完璧を目指すのは無理です。まずは脳の特性を知り、自分と利用者を守るための現実的な対応から始めてみませんか。

この記事を読むと分かること

  • 暴言が起きる脳の仕組み
  • 不穏を和らげる環境調整
  • 病型別のトラブル回避法
  • 意思決定を支える接し方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立つことがあります

  • 正論で返して後悔した
  • 幻視の否定で興奮させた
  • 入浴拒否の対応が怖い
  • 同じ訴えの対応に疲弊

結論:「否定しない」は理想論?現実的な着地点は「脳の特性」と「環境調整」

介護施設で、女性介護職員がメモ帳に記録を取りながら利用者の家族から話を聞いている様子。利用者の生活状況や要望を丁寧にヒアリングし、ケア内容の共有や情報収集を行っている場面。

現場では、「すべてを受け入れるなんて、実際の人員配置では絶対無理」という悲痛な声が溢れています。

業務に追われる中で何度も同じことを聞かれれば、つい「さっき言いましたよね」と正論で返したくなるのは当然です。

しかし、その正論がさらなる不穏を招くことがあります。ここでは、現場の負担を減らすための現実的な視点をお伝えします。

暴言や拒否は「性格」ではなく「脳の故障」

認知症の症状は、多くの人にみられる中核症状と、人によって異なる周辺症状(BPSD)に分けられます。

暴言や介護拒否などのBPSDは、脳の機能低下という中核症状がベースにあります。

本人のわがままや性格の問題ではなく、病気が関係している状態だと理解することが第一歩です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
認知症の症状には、程度の差はあれすべての患者にみられる「中核症状」(記憶障害、認知障害、人格変化など)と、みられない患者もおり疾患の重症度と比例しない「周辺症状(BPSD)」(精神症状、行動障害)がある。

説得が通じない「器質的な障害」を理解する

「さっきお風呂に入った」と記録を見せて事実を伝えても、ご本人は納得してくれません。

認知症は、脳の細胞がダメージを受ける器質的な脳の障害とされています。

論理的な説明を理解する機能自体が低下しているため、正論での説得は意味を持ちにくいのです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症とは,一旦正常に発達した知能が後天的に器質的な脳の障害によって広汎に継続的に低下し,日常的な生活を営めない程度にまで衰退した状態と定義されている。

説得をやめて「環境調整」に切り替える

時間がない中で無理に説得しようとすると、お互いに感情的になり疲弊してしまいます。

BPSDへの対応として、言葉による説得よりも環境調整が行われます。

照明を明るくしたり、不快な音を減らしたりする物理的なアプローチが、結果的に現場の負担を軽くすることがあります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
神経心理学的検査から心理学的症候を捉え,身体機能評価からは転倒リスクを把握し,BPSD の評価からは症状緩和のための環境調整を行う。

暴言や拒否は「脳の器質的な障害」と関連する症状です。人員不足の現場で完璧に寄り添うことは困難ですが、無理な説得をやめて「環境調整」に切り替える視点が大切です。


現場で起きている「認知症の暴言・拒否」の典型パターンと対応の視点

介護施設の廊下で、若い女性介護職員が両手を軽く広げている様子。状況説明や選択肢提示をしている場面、あるいは「どう対応すべきか」と考えながら周囲に問いかけているイメージ。

現場では、「一人ひとりの症状に合わせて丁寧に対応したい」という理想はあっても、ナースコールが鳴り響く中では難しいのが現実です。

ここでは、頻発する3つの事例を通して、無駄な衝突を避けるためのエビデンスに基づく視点を整理します。

「部屋に知らない人がいる」と怯える幻視への対応

項目内容
状況夜間の巡回中、「部屋に男の人が立っている」と怯え、パニックになっている。
困りごと「誰もいませんよ」と説明しても納得せず、「嘘をつくな!」と激怒される。
よくある誤解事実(誰もいないこと)を伝えれば、本人は安心するはずだと考えてしまう。
視点レビー小体型認知症(DLB)でみられることがある症状です。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
レビー小体型認知症(DLB)は,幻視,妄想,注意・覚醒レベルの変動,パーキンソン症状,転倒などが主な症状であり,視覚認知・視覚構成障害が強い。

入浴や着替えでの突然の激しい暴言と拒否

項目内容
状況介助中、昨日まで穏やかだった方が突然激しく怒り出し、手を出してくる。
困りごと理由がわからず、スタッフ側も恐怖を感じてつい感情的になってしまう。
よくある誤解自分のやり方が悪い、あるいは相手が意地悪で困らせていると思い込む。
視点前頭側頭型認知症(FTD)の初期症状「脱抑制」の可能性があります。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。

「ご飯をまだ食べていない」という執拗な訴え

項目内容
状況食後すぐに「まだご飯をもらっていない」と繰り返し訴え、怒り出す。
困りごと空の食器を見せても納得せず、対応が堂々巡りになり業務が滞る。
よくある誤解単なる「もの忘れ」なので、証拠を見せれば思い出すはずだと考える。
視点生理的な加齢と異なり、食事をした体験全体が抜け落ちるとされます。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
生理的加齢によるもの忘れと認知症の違いについて,もの忘れの範囲は生理的加齢では「経験した出来事の一部を忘れる」のに対し,認知症では「経験したこと全体を忘れる」とされる。

本人の見ている世界を否定して正論で説得するのではなく、病気による症状として捉える視点が大切です。


なぜ「正論」が通じず暴言・拒否が起きるのか?脳の仕組みと環境の壁

介護施設の廊下で、若い女性介護職員が顎に手を当てて考え込んでいる様子。ケア方法の選択や家族対応、記録の書き方などについて思案している場面を想起させるイメージ。

現場では、「何度説明してもわかってもらえない」と、徒労感に襲われることが少なくありません。

それはあなたの説明不足でも、ご本人のわがままでもありません。背景には、脳の機能低下という構造的理由があります。

「器質的な脳の障害」により理屈が届かない

視点内容
建前(理想)本人の気持ちに寄り添い、理解し合えるまで言葉を尽くす。
現実(現場)理不尽な要求に対し、つい常識や理屈で言い返してこじれる。
根本原因脳の細胞がダメージを受けた器質的な障害により、論理的な理解力が低下しています。
出典元の要点(要約)

厚生労働省
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
認知症の症状には、程度の差はあれすべての患者にみられる「中核症状」(記憶障害、認知障害、人格変化など)と、みられない患者もおり疾患の重症度と比例しない「周辺症状(BPSD)」(精神症状、行動障害)がある。

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症とは,一旦正常に発達した知能が後天的に器質的な脳の障害によって広汎に低下した状態と定義されている。

「環境要因」が言葉にできない不快感を生む

視点内容
建前(理想)時間をかけてゆっくりと心を落ち着かせるケアを提供する。
現実(現場)人手不足により、目の前の興奮を抑え込むことに必死になる。
根本原因不快な環境を言葉で伝えられず、BPSDとして現れることがあります。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
神経心理学的検査から心理学的症候を捉え,BPSD の評価からは症状緩和のための環境調整を行う。

業務優先の「代理決定」が防衛反応を招く

視点内容
建前(理想)本人の意思を最大限に尊重し、納得した上でケアを進める。
現実(現場)業務を回すために、スタッフの都合で強引に誘導してしまう。
根本原因意思決定支援の視点が求められます。
出典元の要点(要約)

厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
そのプロセスは、本人が意思を形成することの支援と、意思を表明することの支援を中心とし、意思を実現するための支援を含む。

これらの構造を理解し、正論での説得から「環境調整」や「意思の尊重」へ視点を向けることが重要です。


「認知症の暴言・拒否」に関する現場の小さな迷いへのQ&A

「この対応で本当にいいのだろうか」と悩みながらケアにあたっているのは、あなただけではありません。

現場での切実な疑問に対し、エビデンスに基づいた視点で回答します。

Q
検査やケアを強く拒否されている時でも、業務上無理に進めるべきでしょうか?
A
まずは落ち着いた環境を作り、不安を取り除くことが最優先とされています。強引に進めるとかえって不穏を招き、お互いの負担が増す可能性があるため、まずは環境を整えて安心できる状況を作ることから始めてみてください。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版 https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf 検査は落ち着いた環境で行い,被験者の不安を取り除く説明を行う。
Q
昨日までは穏やかだったのに、今日は突然暴言を吐かれました。急に病状が進行したのでしょうか?
A
日によって症状にムラがあるのは、病状の急激な進行ではなく、環境や体調に影響される周辺症状(BPSD)の変動によるものと考えられます。認知症の症状は、みられる中核症状と、人によって出方が大きく変わるBPSDに分けられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 認知症ケア法ー認知症の理解 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf 認知症の症状には、程度の差はあれすべての患者にみられる「中核症状」(記憶障害、認知障害、人格変化など)と、みられない患者もおり疾患の重症度と比例しない「周辺症状(BPSD)」(精神症状、行動障害)がある。
Q
言葉でうまく伝えられない方の意思決定は、どう支援すればよいでしょうか?
A
言葉だけでなく、身振りや表情から意思を読み取る努力が求められます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf 身振りや表情からも意思を読み取る努力が求められ、他者を害する場合や本人にとって見過ごすことのできない重大な影響が生ずる場合を除き、示された意思は尊重される。

現場での迷いは尽きませんが、エビデンスという根拠を持つことで、「なぜその対応が必要なのか」を納得して選択できるようになることがあります。完璧を目指さず、まずはできる範囲で環境調整や意思の尊重を取り入れてみてください。


まとめ:完璧を目指さない「否定しないケア」の第一歩

「否定してはいけない」とわかっていても、現実には過酷です。まずは、理想の自分と今の自分を切り離して考えてみてください。

認知症の言動は器質的な脳の障害によるものであり、正論で対抗しても解決しにくいです。説得を諦めることは、決して「手抜き」ではないのです。まずは今日、環境調整として照明を調節したり、相手の身振りや表情に意識を向けてみたりすることから始めてみませんか。

その小さな変化が、利用者の不安を和らげ、結果としてあなた自身の心を守ることに繋がることがあります。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。


関連コンテンツ


更新履歴

  • 2025年10月3日:新規投稿
  • 2025年10月9日:冒頭部分の一部修正
  • 2026年2月19日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。
  • 2026年3月10日:最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。

タイトルとURLをコピーしました