【介護】医師の「早くサインを」に板挟み。成年後見人でも医療同意できない時の、唯一のチーム対抗策

医師から「早く同意書にサインを」と迫られ、頼みの成年後見人には「権限がない」と断られる。そんな板挟みに、日々頭を抱えていませんか。

建前上は「サイン不要」でも、現場では署名がないと治療が進まないのが現実です。法的な責任と患者の命の間で、一人で決断を迫られるのは苦しいものです。

この記事を読むと分かること

  • 医師と後見人の板挟み解消法
  • 同意書なしで手術できる根拠
  • サイン代わりの「最強の記録」
  • 法的に正しい「断り方」

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 医師に「サイン頼む」と怒られた
  • 後見人に同意を断られ詰んだ
  • 私が書くしかないと追い詰められた
  • 身寄りなしの入院で絶句した

結論:「同意書へのサイン」を探し回るのはやめてください。法的な同意権限は、成年後見人にも原則として付与されていません。

女性の介護職員の画像

現場では、医師から「誰でもいいからサインをもらって」と急かされることがあります。手術や治療が遅れれば利用者の命に関わるため、「自分が書くしかないのか」と追い詰められることもあるでしょう。

しかし、その責任感が逆に自分自身を法的なリスクに晒してしまう可能性があります。「サインさえあれば解決する」というのは現場の慣習にすぎず、法的な正解とは異なります。

成年後見人であっても「医療同意権」は持っていません

もしあなたが「成年後見人ならサインできるはず」と考えているなら、それは誤解です。

医療行為を受けるかどうかの決定権は、本人だけが持つ一身専属性の高い権利とされています。そのため、法的に強い権限を持つ成年後見人であっても、医療行為に対する同意権は与えられていません。

つまり、後見人がサインを拒否するのは「冷たいから」ではなく、法的な権限がないため「書くことができない」と判断していると考えられます。医師から説得を頼まれても、この原則を知っていれば、無用な板挟みにならずに済みます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

医療行為の同意は一身専属性を有し、成年後見人等には同意権が付与されていない。本人の意思決定能力が低下した場合でも、本人の意思を推定し尊重することが求められる。

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

成年後見人等には医療同意権がないため、手術等の同意は行えない。医療機関から同意を求められた場合は、本人の意思決定支援を行う立場として、本人のこれまでの意向や心身の状況等の情報提供を行う。

サインの代わりになるのは「一枚の紙」ではなく「プロセス」です

では、同意書がないと手術はできないのでしょうか。答えはNOです。

本人の意思が確認できず、代諾できる家族もいない場合、同意書の代わりとして、多職種による話し合いのプロセスとその記録が重要であるとされています。

医療・ケアチーム(医師、看護師、MSW、介護職員など)が集まり、医学的な妥当性と本人の最善の利益を検討する。このプロセスを経た上で、決定内容とその理由を記録に残すことで、医療機関等の法的・倫理的な妥当性が担保されると考えられるとガイドラインで示されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン等を踏まえ、本人、家族等、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたプロセスを経ることが重要である。

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

本人の意思が確認できない場合、家族等がいない場合でも、医療・ケアチームの中で慎重に判断し、そのプロセスを記録に残すことで対応可能である。

現場がやるべきは「代筆」ではなく「カンファレンス」の開催

同意書へのサイン権限がない私たち介護職ができる最大の貢献は、代筆のリスクを負うことではありません。

本人の普段の様子や「昔こう言っていた」という推定意思に関する情報を、医療チームに提供することです。

「サインはできませんが、本人の意向を共有するカンファレンスを開きませんか」と提案することが、身寄りのない利用者を守るための現実的かつ適切なアクションの一つとなります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

医療機関等でカンファレンスを開催し、本人の意思決定能力や医療・ケア方針について多職種で検討を行う。ケアマネジャーや施設職員等が参加し、本人の生活状況や意向等の情報を提供する。

身寄りがない人の医療同意において、「誰かにサインさせること」をゴールにしてはいけません。法的に有効な代諾者はいないため、サイン探しは徒労に終わります。重要なのは、医療・ケアチーム全体で話し合い、その決定プロセスを記録に残すことです。これが、同意書に代わる法的な根拠の一つとなり得ます。


現場で起こる「医療同意」の困った事例:正しい対応ルートとは

女性の介護職員の画像

現場では、マニュアル通りにいかない突発的な事態が次々と起こります。「サインがないと動けない」という病院側の事情も理解できるからこそ、介護士としての立ち位置に迷う場面は多いはずです。

ここでは、実際によくある3つのケースを通して、ガイドラインが推奨する具体的なアクションを確認していきましょう。

事例1:後見人に手術の同意を拒否され、治療が止まってしまった

入院中の独居利用者が転倒し、大腿骨を骨折。急いで手術が必要になりました。医師から「成年後見人に同意書を書いてもらって」と言われましたが、後見人からは「医療同意の権限がないから書けない」と断られてしまいました。

状況緊急の手術が必要だが、家族がおらず、成年後見人が署名を拒否した。
困りごと医師から「サインがないと手術できない」と詰められ、治療が中断している。
よくある誤解成年後見人は「家族の代わり」だから、医療同意もできるはずだ。
押さえるべき視点後見人の拒絶は法的に正当。解決策は「サイン探し」ではなく「チームでの検討・判断」への切り替え

医師には「後見人に同意権がないこと」を伝え、代わりに医療・ケアチームによるカンファレンスの開催を求めます。後見人には、本人の普段の意向や金銭状況の情報提供者として参加してもらうのが正しい役割分担です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

成年後見人等には医療同意権がないため、手術等の同意は行えない。医療機関から同意を求められた場合は、本人の意思決定支援を行う立場として、本人のこれまでの意向や心身の状況等の情報提供を行う。医療・ケアチームで検討し、プロセスを記録することで対応する。

事例2:身元不明の患者。個人情報保護が怖くてカバンが開けられない

意識のない状態で発見された独居の利用者。家族の連絡先も分からず、治療方針を決めるための情報が一切ありません。職員は「勝手に本人の財布や手帳を調べるのは、プライバシー侵害になるのでは」と躊躇しています。

状況本人の意識がなく、家族の連絡先も不明。所持品を確認して情報を得たい。
困りごと個人情報保護法に抵触することを恐れ、積極的な身元確認や治療ができない。
よくある誤解いかなる理由があっても、本人の同意なく所持品を確認してはいけない
押さえるべき視点人の生命・身体の保護が必要な緊急時は、同意なしでの情報取得が法的に許容される場合がある

緊急性が高い場合は、個人情報保護法における「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」という例外規定が適用されると考えられます。躊躇せず情報を収集し、適切な医療につなげることが優先されます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

意識不明等で本人の同意が得られない場合でも、人の生命、身体又は財産の保護のために必要があるときは、個人情報保護法の例外として本人同意なしでの情報の取得や提供が可能である。家族等の特定のために所持品を確認することも「不正な手段」には当たらない。

事例3:施設ケアマネが「キーパーソン」として署名を強要された

利用者の入院手続きに付き添った際、病院の窓口で「家族がいないなら、いつも関わっているケアマネさんがサインしてください」と入院計画書を渡されました。断ると利用者が不利益を被るのではないかと不安になっています。

状況病院側から、家族代わりの「キーパーソン」として書類への署名を求められた。
困りごと署名することで、将来的な支払い責任や退院後の身元引受を負わされる恐怖がある
よくある誤解施設職員やケアマネなら、事務的な書類にはサインして良い
押さえるべき視点介護職に同意・契約の権限はない。サインは断り、代わりに「ACP情報」を提供すると

介護職には入院契約や医療同意の法的権限はありません。「私に権限はありません」と明確に伝え、署名は断り、その代わり、施設でのACP(話し合い)の記録やアセスメント情報を共有し、チームが本人の意思を推測する材料を提供することが求められる支援です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

ケアマネジャーや施設職員には医療同意や入院契約の権限はない。入院時には、緊急連絡先、ACP、金銭管理状況等のアセスメント情報を提供し、医療機関と連携して支援方針を検討する。

身寄りがない現場のトラブルで共通しているのは、「誰か一人の判断」に頼ろうとすることです。ガイドラインは、後見人も介護士もサインできないことを明確にしています。困ったときは「サインの代筆」ではなく、多職種での情報共有とカンファレンスへ誘導することが、自分と利用者を守る最善の道です。

なぜ、今も現場で「無意味なサイン」が求められ続けるのか

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「法的にサインは不要」と言われても、明日の現場ではやっぱり医師から同意書を渡されるでしょう。「法律」と「現場」の間に、なぜこれほど深いがあるのでしょうか。

その理由は、日本の医療現場に深く根付いた慣習と、病院側が抱える切実な恐怖にあります。この構造を知ることが、板挟みから抜け出す第一歩です。

医療行為への決定権は「本人だけのもの」という高い壁

そもそも法律上、手術などの体に侵襲(ダメージ)を与える行為への同意は、本人だけができる一身専属性の権利とされています。

この権利はあまりに個人的なものであるため、たとえ成年後見人であっても、他人が代わりに行使することは認められていません。つまり、「サインしたくても法的にできない」というのが、ガイドライン等に基づく一般的な解釈です。

この「法の壁」がある限り、どれだけ病院が求めても、家族以外の第三者によるサインは法的効力が認められない可能性が高いと一般的に解釈されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

医療行為の同意は一身専属性を有し、成年後見人等には同意権が付与されていない。これは、医療行為を受けるかどうかの決定が、個人の尊厳や自己決定権に深く関わるためである。

病院側は「訴訟リスク」を恐れてサインという「お守り」を欲しがる

では、なぜ効力がないと知りつつ、医師はサインを求めるのでしょうか。それは、万が一の医療事故やトラブルが起きた際に、訴訟になることを恐れているからです。

かつての日本では、家族がすべてを保証する慣習が当たり前でした。その名残で、今も「誰かのサインがないと不安」という心理が病院側に強く残っています。

背景には、万が一の医療事故やトラブルが起きた際に、訴訟になることを恐れている事情があると考えられます。こうした背景もあり、国は「サイン(同意)」ではなく「プロセス(話し合い)」を重視するガイドラインを策定したのです。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

医療機関では、従来、家族等が身元保証・身元引受等の役割を果たすことを前提とした運用が行われてきた。しかし、単身世帯の増加等により、従来の運用が困難になっており、医療現場が法的責任を問われるリスクへの不安を抱えている。

「話し合い」こそが、医師と介護職の双方を守る唯一の盾になる

このジレンマを解消するために国が定めたのが、「ガイドラインに基づくプロセス」です。

「一人のサイン」ではなく、「多職種チームで検討し、最善を尽くした」という記録があれば、それが法的・倫理的な正当性の根拠になります。

実は医師を訴訟リスクから守り、介護職を代筆のプレッシャーから守る、双方を守るための重要な手段となるのです。この仕組みを理解し、医師に伝えていくことが解決のカギとなります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

本人の意思決定能力が低下している場合、医療・ケアチームが本人の最善の利益を判断し、そのプロセスを記録に残すことが重要である。このプロセスを経ることで、医療機関等の法的・倫理的な妥当性が担保されると考えられる。

サインを求められるのは、病院側が「訴訟リスク」という恐怖と戦っているからです。しかし、成年後見人にも同意権がない以上、サインは解決策になりません。互いを守るための有効な手段の一つは、ガイドラインに沿った「話し合いの記録」を残すことです。

よくある質問(FAQ):現場の「迷い」に答えます

「法律の理屈は分かったけれど、明日の現場ではどう答えればいいの?」という疑問は尽きないはずです。ここでは、現場で即答に困る質問に対し、エビデンスに基づいて具体的にお答えします。

Q
Q1. 本当に後見人はサインできないのですか?医師がすごく怒るのですが。
A
A1. はい、原則としてできません。 成年後見人には法的に「医療行為への同意権」が付与されていないため、サインをしても法的な効力は生じません。医師には「ガイドラインに基づき、後見人は判断材料の提供者として参加します」と伝えてください。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

医療行為の同意は一身専属性を有し、成年後見人等には同意権が付与されていない。

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

成年後見人等には医療同意権がないため、手術等の同意は行えない。医療機関から同意を求められた場合は、本人の意思決定支援を行う立場として情報提供を行う。

Q
Q2. サインする人が誰もいない場合、手術は諦めるしかないのですか?
A
A2. 諦める必要はありません。 本人の意思決定能力がなく家族も不在の場合、医療・ケアチームで「医学的妥当性」と「本人の最善の利益」を慎重に判断し、そのプロセスを経ることで対応可能とされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf

家族等がいない場合でも、医療・ケアチームが、本人の人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン等を踏まえ、慎重に判断を行う。

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

医療同意が困難な事例において、医療機関等でカンファレンスを開催し、多職種で検討を行うことが重要である。ケアマネジャーや施設職員等が参加し、本人の意向等の情報を提供することで、チームによる意思決定支援が可能となる。

Q
Q3. 個人情報保護法が怖くて、倒れた利用者のカバンを勝手に見れません。
A
A3. 生命の危険がある緊急時は、確認が許容されると考えられます。 本人の意識がなく同意を得ることが困難な場合、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合」として、個人情報保護法の例外規定が適用されます。家族特定のための所持品確認は認められています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

意識不明等で本人の同意を得られない場合でも、人の生命、身体又は財産の保護のために必要があるときは、個人情報保護法の例外として本人同意なしでの情報の取得や提供が可能である。家族等の特定のために所持品を確認することも「不正な手段」には当たらない。

まとめ:サイン探しから「チーム作り」へ。明日からできる最初の一歩

現場の多忙さの中で、医師から求められる同意書を断るのは勇気がいることです。しかし、無理にサインをしても誰も守ることにはなりません。

明日、もし同意を求められたら、まずは「私には権限がありませんが、本人の意思を共有する場を作りませんか」と提案してみてください。

その一言が、あなた自身と、何より利用者の権利を守るための大きな一歩になります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集

https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf

医療同意が困難な事例において、医療機関等でカンファレンスを開催し、多職種で検討を行うことが重要である。ケアマネジャーや施設職員等が参加し、本人の意向等の情報を提供することで、チームによる意思決定支援が可能となる。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。


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更新履歴

  • 2026年2月5日:新規投稿

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