「夜勤明け、疲労困憊でベッドに倒れ込み、ハッと気づけば窓の外が薄暗い。『…あ、夕方だ』。」
「『明日は早番で4時起きなのに、今夜どうしよう…』。休みの日の夜に限って目が冴えわたり、焦りだけが募る。」
「夜勤明け→休み→早番」。 この“最悪のコンボ”は、介護士さんにとって最も体調管理が難しいパターンの一つです。その「早番前夜に眠れない」という悩みは、あなたの自己管理能力の問題ではありません。
一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます。
この記事は、厚生労働省や労働者健康安全機構などの公的な資料に基づき、なぜこのシフトパターンが眠れないのかという「理由」と、体内時計をリセットするための「具体的な対策」を解説します。
【この記事を知っていると】
「夜勤明け→休み→早番」のシフトで眠れなくなる科学的な理由が分かり、早番前夜に眠りやすくするための「休みの日の正しい過ごし方」を具体的に知ることができます。
結論:「休みの日」の過ごし方で決まる! 体内時計リセット術
「夜勤明けに夕方まで寝てしまう」という行動こそが、早番前夜に眠れなくなる悪循環の始まりです。ここでは公的資料に基づき、このサイクルを断ち切り、体内時計をリセットするための具体的なテクニックを解説します。

テクニック1:夜勤明けの「光」を遮断し、睡眠の質を確保する
夜勤明けの帰宅時に浴びる強い朝日は、あなたの体内時計に「朝だ」と指令を出し、これからとる睡眠の質を低下させます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、体内時計を調整する「光の作用」に言及し、「夜勤明けの朝はなるべく明るい光を避ける」ことを具体的な対策として提示しています。帰宅時のサングラス着用や、寝室の遮光カーテンを徹底する工夫が重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠ガイド 2023(参考情報:環境)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
参考情報では環境の重要性を扱い、「良質な睡眠のための環境づくりについて」を掲げる。体内時計調整では「光には体内時計を調整する作用」とし、交代勤務者向けに「夜勤明けの朝はなるべく明るい光を避ける」と具体的な光曝露のコントロールを提示する。
テクニック2:「休みの日」は活動し、夜の「睡眠圧」を高める
「夕方まで寝る」ことの最大の問題は、夜になっても「眠気(睡眠圧)」が溜まらないことです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」は、「適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。」と推奨しています。夜勤明けに(例えば昼過ぎに)一度起き、休みの日の日中に活動し、朝食(またはその日の最初の食事)を摂ることで、体内時計にメリハリがつき、夜の自然な入眠を促します。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(運動・朝食)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
第2条では「適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリ」を推奨し、「定期的な運動…良い睡眠をもたらす」とする一方、「激しい運動は…睡眠を妨げる可能性」に注意を促す。勤務前後の運動強度の調整が鍵となる。
テクニック3:早番前夜の「NG行動」を避ける(寝酒・カフェイン)
早番前夜に眠れない焦りから、お酒やカフェインに頼ることは逆効果です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」は、「睡眠薬代わりの寝酒は睡眠を悪くする」と明確に示しています。また、カフェインは覚醒作用が持続するため、早く寝たい日の夕方以降は避けるのが賢明です。焦りからの寝酒は、睡眠の質を低下させ、悪循環を強めてしまいます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(運動・食事・嗜好品)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
行動面では「定期的な運動や規則正しい食生活は良い睡眠をもたらす」とし、刺激物について「就寝前の喫煙やカフェイン摂取を避ける」、さらに「睡眠薬代わりの寝酒は睡眠を悪くする」と具体的に注意喚起している。
テクニック4:シフトの「逆循環」が根本原因だと知る
あなたが眠れないのは、個人の努力不足だけでなく、「夜勤→早番」というシフトの組み方自体が、体に大きな負担をかける「逆循環」である可能性も知っておきましょう。労働者健康安全機構の資料では、体内時計に負担が少ない「交替勤務の循環方式は正循環方式(日勤⇒夕勤⇒夜勤…)が望ましい。」とされています。この逆のパターンが、リセットを困難にしている根本原因の一つです。
出典元の要点(要約)
労働者健康安全機構(JOHAS)
交替勤務とその対策 ~健康と生活への影響と管理のポイント~(産業保健21 第98号)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/98_14-17.pdf
設計上の指針として「夜勤回数はなるべく少なくし、短期交替制…望ましい。」とし、「仮眠の確保。」を明記。さらに「交替勤務の循環方式は正循環方式(日勤⇒夕勤⇒夜勤…)が望ましい。」と具体策を提示する。
この「夜勤明け→休み→早番」のコンボは、まさに体内時計との戦いです。まずは夜勤明けに「夕方まで寝ない」ようアラームをセットし、日中に活動して「睡眠圧」を高めることから試してみてください
よくある事例:「夜勤明け→休み→早番」の悪循環
このシフトパターンで、具体的にどのような「悪循環」が起きているのかを、時系列で確認します。多くの方が「これ、自分だ」と思い当たるはずです。

事例1:【1日目】夜勤明け:「夕方まで寝てしまう」日
夜勤を終え、疲労困憊で帰宅。朝9時にベッドに倒り込み、「少しだけ」のつもりが、ハッと目覚めると窓の外は薄暗い。「…やってしまった、夕方の17時だ」。 この時点で、その日の夜に眠れないことがほぼ確定し、軽い絶望感と焦りが生まれます。これは、帰宅時に浴びた強い朝日が体内時計のリセットを妨げ、質の良い睡眠をとりにくくしていることも一因です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠ガイド 2023(参考情報:環境)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
参考情報では環境の重要性を扱い、「良質な睡眠のための環境づくりについて」を掲げる。体内時計調整では「光には体内時計を調整する作用」とし、交代勤務者向けに「夜勤明けの朝はなるべく明るい光を避ける」と具体的な光曝露のコントロールを提示する。
事例2:【2日目】休み:「眠れないまま朝を迎える」日
1日目に夕方17時まで寝てしまったため、休みの日の夜(例:22時)になっても全く眠気が来ません。「明日は早番で4時起きなのに…」と焦れば焦るほど、目が冴えてしまいます。 これは、体内時計が「夜型」にズレてしまったことに加え、起きている時間が短すぎて「眠気(睡眠圧)」が溜まっていない、生理的に当然の反応です。このシフトの組み方は、労働者健康安全機構が望ましいとする「正循環方式」とは逆の、体に負担がかかるパターンです。
出典元の要点(要約)
労働者健康安全機構(JOHAS)
交替勤務とその対策 ~健康と生活への影響と管理のポイント~(産業保健21 第98号)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/98_14-17.pdf
設計上の指針として「夜勤回数はなるべく少なくし、短期交替制…望ましい。」とし、「仮眠の確保。」を明記。さらに「交替勤務の循環方式は正循環方式(日勤⇒夕勤⇒夜勤…)が望ましい。」と具体策を提示する。
事例3:【3日目】早番:「寝不足で出勤する」日
休みの日の夜にほとんど眠れないまま、朝4時や5時のアラームで強制的に起床。強烈な眠気と倦怠感(だるさ)を引きずったまま、早番の業務に向かいます。 厚生労働省の資料では、睡眠不足による「注意力が低下する」ことが示されています。最も集中力が必要な時間帯にパフォーマンスが落ち、ヒヤリ・ハットや事故のリスクを自覚しながら働く、最も辛い状況です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(事故防止)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
指針は事故リスクに触れ、「睡眠時間が 6 時間未満の者…居眠り運転の頻度が高い」ことや、睡眠不足で「注意力が低下することが示されている」と明記。夜勤明け・通勤時の安全配慮に直結する知見を提供する。
なぜ眠れない?「体内時計の逆循環」という本当の理由
なぜ、この「夜勤明け→休み→早番」というシフトパターンでは、早番前夜にこれほど眠れなくなってしまうのでしょうか。それは「気合」や「体質」の問題ではなく、「体内時計」と「シフトの順番」という、科学的な理由が明確に存在します。

理由1:夜勤明けの「長すぎる睡眠」による体内時計の固定化
夜勤明けに夕方まで寝てしまう行動は、あなたの体内時計を「夜型(例:17時起床・深夜活動)」のリズムに強制的にセットしてしまいます。労働者健康安全機構の資料では、交代勤務を「昼夜逆転のある不規則な就労形態」と指摘していますが、まさにこの「昼夜逆転」の状態を自ら作り出し、体に記憶させてしまうのです。この夜型リズムが、翌日の早番(朝型)への切り替えを極端に難しくします。
出典元の要点(要約)
労働者健康安全機構(JOHAS)
交替勤務とその対策 ~健康と生活への影響と管理のポイント~(産業保健21 第98号)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/98_14-17.pdf
交替勤務は「昼夜逆転のある不規則な就労形態」により「睡眠の質の問題と疲労回復の困難さ」が相乗し、影響が広範となる。「不眠や不十分な疲労回復は、事故やミス…安全面への影響」とされ、安全配慮の観点からも睡眠対策が不可欠である。
理由2:「ねむりとめざめのメリハリ」が失われる
人が自然に眠くなるためには、「日中活動している(起きている)時間」が十分にあることが必要です。しかし、夕方17時に起きると、早番のために寝たい夜22時頃まで、わずか5時間しかありません。これでは、眠るための準備が整いません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」は、「適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。」と推奨しています。夕方まで寝ることは、この「めざめ(活動)」と「ねむり」のメリハリを完全に失わせる行動なのです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(運動・朝食)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
第2条では「適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリ」を推奨し、「定期的な運動…良い睡眠をもたらす」とする一方、「激しい運動は…睡眠を妨げる可能性」に注意を促す。勤務前後の運動強度の調整が鍵となる。
理由3:体に負担をかける「逆循環」のシフトパターン
この「夜勤→早番」という流れは、体内時計の観点から最も体に負担のかかる「逆循環」と呼ばれるパターンです。労働者健康安全機構の資料では、体内時計への負担が少ないのは「交替勤務の循環方式は正循環方式(日勤⇒夕勤⇒夜勤…)が望ましい。」とされています。これは、生活リズムを少しずつ「後ろ」にずらしていく方式です。しかし、「夜勤→早番」は、後ろにずれた時計を無理やり「前」に引き戻す行為であり、体が適応できず、深刻な睡眠の問題を引き起こします。
出典元の要点(要約)
労働者健康安全機構(JOHAS)
交替勤務とその対策 ~健康と生活への影響と管理のポイント~(産業保健21 第98号)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/98_14-17.pdf
設計上の指針として「夜勤回数はなるべく少なくし、短期交替制…望ましい。」とし、「仮眠の確保。」を明記。さらに「交替勤務の循環方式は正循環方式(日勤⇒夕勤⇒夜勤…)が望ましい。」と具体策を提示する。
よくある質問(FAQ)
この「夜勤明け→休み→早番」という過酷なシフトパターンに関して、よくある疑問に答えます。
- Qこのシフト自体、職場に改善を求めることはできますか?
- A
あなたが「眠れない」と感じるのには、シフト編成自体に理由があるかもしれません。例えば、日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、職員の疲労回復と安全のため、「勤務間隔は 11 時間以上あける」(基準1)ことが望ましい基準として示されています。「遅番→早番」のように、勤務と勤務の間が極端に短いシフトは、体に大きな負担をかけます。こうした公的な基準を知っておくことは、ご自身の健康を守る上で重要です。
出典元の要点(要約)
日本看護協会
看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(勤務編成の基準)
https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/yakin_guideline.pdf
勤務設計では「勤務の拘束時間は13時間以内とする。」と上限を掲げ、「11時間以上の勤務間隔(基準1)」を基準化。運用面では「休憩と仮眠のための時間の確保」を管理ポイントに据える。
- Q早番前夜、どうしても眠れなかった時はどうすればいいですか?
- A
まず、焦りは禁物です。「寝なければ」と焦ることで、かえって目が冴えてしまいます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」では、「眠くなってから寝床に就く」ことが推奨されています。もし眠れない場合は、一度寝床を離れて、リラックスできること(例:静かな音楽を聴く、難しくない本を読む)をし、再び眠気を感じてから寝床に戻る方法を試してみてください。また、勤務中の眠気対策として、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、「20~50分間の仮眠」が仕事の効率を改善する場合があると示されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(入眠儀式)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
第 7 条は「快適な睡眠は、環境づくりから」とし、騒音や光の調整に加え、「自分なりのリラックス法を」見つける(例:音楽、読書、香り)ことを推奨する。これは入眠儀式(スリープ・ルーティン)の重要性を示す。また、「眠くなってから寝床に就く」ことで、寝床と不眠を結びつけない(刺激制御法)考え方を提示。夜勤明けでもスムーズに入眠するための具体的な工夫点である。
- Qセルフケアを試しても改善しません。病院に行くべきですか?
- A
もし、この記事で紹介した対策(光の管理、睡眠のコントロール)を試しても、深刻な不眠や日中の耐え難い眠気、気分の落ち込みが続く場合は、一人で抱え込まないでください。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」は、「眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。」と強く呼びかけています。交代勤務睡眠障害(SWSD)などの可能性もあるため、「早めに専門家に相談することが重要」です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(受診・相談)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
第12条は支援活用を促し、「早めに専門家に相談することが重要」と明示。薬物療法の安全面では「薬とお酒とを一緒に飲まないことは特に重要」と具体的に注意喚起する。
まとめ
「夜勤明け→休み→早番」という過酷なシフトパターンで眠れないのは、個人の「気合」の問題ではなく、「体内時計の逆循環」と「睡眠圧の不足」という構造的な原因によって引き起こされます。しかし、これは「仕方ない」と諦めるしかない問題ではありません。
本記事のまとめ
この記事では、厚生労働省などの公的な資料に基づき、この悪循環の「理由」を解説しました。睡眠不足は「作業効率の低下…事故等の重大な結果」に繋がる可能性があり、放置すべきではありません。このサイクルを断ち切る鍵は、「夜勤明けの睡眠をコントロール」し、「休みの日の日中に活動」して、早番に備えて夜の睡眠圧(眠気)を高めることにあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠ガイド 2023(事故・安全)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
ガイドは睡眠不足が「作業効率の低下…事故等の重大な結果」に繋がるとし、予防の目的は「生活の質を高めていくことは極めて重要」とする。実装に向け「本ガイド…ツールとしての活用性」を打ち出す。
今日からできる第一歩
この記事で解説した対策をすべて一度に行う必要はありません。この悪循環を断ち切るための最も重要な第一歩は、「夜勤明けに夕方まで寝ない」ことです。まずは、夜勤明けに(例えば)昼過ぎにアラームをセットし、日中に活動する時間を作ってみることから始めてください。それこそが、早番前夜の眠気を取り戻すための最短ルートです。
睡眠の不調が続く場合は専門家へ
もし、これらのセルフケアを試しても「日中の眠気がどうしても取れない」「やる気が起きない」「気分が落ち込む」といった状態が続く場合は、一人で抱え込まないでください。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」でも、「眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。」と呼びかけています。睡眠の問題が続く場合は、早めに専門家や医療機関に相談しましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
健康づくりのための睡眠指針 2014(受診・相談)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
第12条は支援活用を促し、「早めに専門家に相談することが重要」と明示。薬物療法の安全面では「薬とお酒とを一緒に飲まないことは特に重要」と具体的に注意喚起する。
更新履歴
- 2025年10月23日:新規公開


