その対応、恐怖を与えていませんか?入浴介助でやってはいけないNG行動

介護現場では、人手不足業務の多忙さから、本来寄り添いたい気持ちがあっても、つい手順優先で入浴を進めてしまう葛藤があるかもしれません。

理想通りにいかなくても、利用者に恐怖心を与えてしまうNG行動だけは避けるという、現実的なラインから見直してみましょう。

この記事を読むと分かること

  • NG行動の具体的な内容
  • 拒否する心理的理由
  • 恐怖を与えない声掛け
  • 入浴時の環境調整
  • 信頼関係の築き方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 「お風呂」で拒否される
  • 脱衣を嫌がられる
  • 無意識に急かす
  • シャワーで驚かれる
  • 無理強いしてしまう

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入浴介助の成功は「快感情」と「信頼関係」の確保が鍵

男性入居者と女性介護職員

現場では、人員配置の限界業務時間への圧迫から、つい手順を優先し、急かすような声かけになってしまいがちです。その結果、「無理強いしている」という罪悪感を抱きながら、入浴介助を苦痛に感じている介護士も少なくありません。この記事では、理想論に終始せず、時間がない中でも最低限ここだけは避けたいNG行動と、利用者の恐怖心を和らげるための具体的な方法を整理します。

拒否の裏にある「恐怖心と羞恥心」を理解する

無理強いは一番のNG行動です。入浴とは、誰にとっても羞恥心を伴う極めてデリケートな行為です。認知症の有無にかかわらず、人前で裸になることは精神的・心理的な負担感が高いという事実を理解する必要があります。

特に、認知症の人の立場から見ると、強制的に裸にされる行為は、見ず知らずの赤の他人に服を剥ぎ取られることに等しく、強い恐怖心や怒り、混乱を招く原因となります。過去の入浴で「寒い思いをした」「嫌な思いをした」といった経験が残っていると、その記憶が入浴を嫌なものとして認識させてしまいます。

このため、介護職が焦って強引に入浴を試みると、次の機会がより困難になっていくことが少なくありません。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

認知症の人にとって、入浴の意味や状況の理解が難しくなる中で人前で裸になることは、羞恥心や自分を守る意味で入浴を嫌がる原因となる。強制的な入浴は、見ず知らずの他人に服を剥ぎ取られる行為に等しく、強い恐怖心や怒り、混乱を招くため、絶対に避けるべきである。

「清潔」より「快感情」と「信頼関係」を優先する

入浴の目的は、単に皮膚を清潔に保つこと(保清)だけでなく、心身機能の維持やリラックス効果(快感情)を得ることの二つがあります。エビデンスでは、この二つの目的を同時に達成できない介護は、絶対にやめるべきと強く警告されています。

清潔保持のためだけに利用者の気持ちや事情を無視した無理強いを行うと、快感情が得られず、生活を豊かにする入浴の条件を無視することになります。介護者が焦る気持ちは本人に伝わり、不快感情を持つことにつながります。

介護の原則は、快感情を大切にすることであり、本人の気分のいいときを見計らって対応することが、結果的にスムーズな介助への近道です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

入浴介護の目的は「清潔保持」と「心身のリラックス(快感情)」の二つを同時に達成することである。利用者の気持ちを無視して無理やり入浴を強要すると、清潔保持はできても心身のリラックスは得られず、生活を豊かにする入浴の条件を無視することになる。二つの目的を同時に達成できない介護は、絶対にやめるべきである。

誘導は「目的の変換」と「なじみ」に訴える

入浴拒否が起きた時、「入浴」という言葉や行為にこだわる必要はありません。入浴に至る一連の流れが順序立てて理解しにくくなっている認知症の方に対しては、別の目的で自然に脱衣を促す工夫が有効です。

例えば、「薬を塗りたいので」や「体重を測りたいのですが」など、衣服を脱ぐことが自然に行える声かけが有効です。無理強いではなく、本人の気持ちに沿った柔軟な対応を心がけることが大切です。

また、その方が生きてきた年代にとって馴染みのある「銭湯」「温泉」というイメージを使ったり、「一番風呂」といった習慣や特権を感じさせる言葉が声かけに応じてくれるきっかけになることも少なくありません。無理強いせず、本人のペースに合わせ、ゆっくり入浴できるように時間を使う工夫が必要です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「入浴」という言葉にこだわらず、別の目的で自然に脱衣を促す工夫が有効である。例えば、「薬を塗りたい」「体重を測りたい」など、衣服を脱ぐことが自然に行える声かけをすることが、入浴への誘導につながる場合がある。また、「温泉(銭湯)に行きましょう」「一番風呂」といった、利用者が生きてきた年代に馴染みのある言葉で声かけすることも、入浴に応じてくれるきっかけとなる。

この章のまとめ文章 入浴介助の成功は、テクニックよりも信頼と快感情が鍵です。無理に体や気持ちを動かそうとせず、拒否の裏にある恐怖心と羞恥心に寄り添い、安心できる声かけと環境調整から始めることが、入浴拒否を減らす唯一の確かな一歩となります。


現場でよくある「入浴拒否」3つのパターンと解決の糸口

女性の介護職員の画像

現場では、「お風呂に入りましょう」と声をかけても断られ、説得すればするほど頑なになるという悪循環がよく見られます。ここでは、多くの介護職員が直面する典型的な拒否のパターンを3つ挙げ、それぞれの背景にある心理と、エビデンスに基づいた押さえるべき視点を解説します。

ケース1:「お風呂」という言葉だけで怒り出す・拒否する

状況 「〇〇さん、お風呂の時間ですよ」と声をかけると、「入らない!」「昨日入ったばかりだ!」と強い口調で拒否される。

現場の困りごと

実際には1週間以上入浴しておらず、髪もべたついている。職員が「先週から入っていませんよ」「痒くなりますよ」と事実を説明して説得しようとすると、さらに興奮して怒鳴られてしまう。

よくある誤解

「お風呂嫌いの頑固な性格だ」「自分の不潔さを隠そうとしている」と捉えてしまいがちです。

押さえるべき視点:

言葉の意味消失と記憶障害 認知機能の低下により、「入浴」という言葉の意味自体が理解できず、得体の知れない場所へ連れて行かれる不安を感じている可能性があります。また、記憶障害により「昨日入った」という感覚が本人にとっては真実であるため、否定や説得は逆効果です。言葉ではなく視覚的な道具を見せたり、別の言葉で誘う工夫が必要です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

理解力や判断力の低下から、「入浴」という言葉の意味が届いていないことがある。タオルや石鹸、お湯を触るなど、入浴を連想させる言葉以外の工夫が必要である。「今日は温泉(銭湯)に行きましょう」や「一番風呂」といった、なじみの言葉を使うことも有効である。

厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

説明をいくらしても、本人には伝わらない。本人は悪気があってやっているわけでも、わざとしているわけでもない。

ケース2:浴室までは来たが、服を脱ごうとしない

状況 なんとか浴室まで誘導できたが、脱衣所で服をギュッと掴んで離さない。職員が手伝おうとすると手を払いのける。

現場の困りごと

「せっかくここまで来たのに」という焦りから、職員が「服を脱ぎましょうね」と言いながらボタンに手をかけたり、ズボンを下ろそうとしたりしてしまう。その結果、利用者が暴れて入浴中止になる。

よくある誤解

「服の脱ぎ方を忘れてしまった(失行)」「職員を困らせようとしている」と考えがちです。

押さえるべき視点:

羞恥心と「剥ぎ取られる」恐怖 人前で裸になることは、誰にとっても恥ずかしく無防備なことです。特に認知症の方にとって、強引な着脱介助は「見ず知らずの他人に服を剥ぎ取られる」という強烈な恐怖体験となります。入浴という目的ではなく、自然に服を脱ぐ理由を作るアプローチが有効です。

出典元の要点(要約)
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初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

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強制的に入浴させるということは、見ず知らずの赤の他人にいきなり服を剥ぎ取られることになる。入浴に至る一連の流れが理解しにくくなっているため、「薬を塗りたい」「体重を測りたい」など、衣服を脱ぐことが自然に行える声かけを工夫する。

厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

衣服のケアにおいて、脱がせるときは後方から脱がせない。出来なくて困っているときだけ手伝う。

ケース3:シャワーや洗髪を極端に嫌がる

状況 浴室に入り椅子には座ったが、シャワーをかけようとすると「ギャー!」と叫んだり、頭を洗おうとすると顔を覆って拒否する。

現場の困りごと

「身体だけでも清潔にしなければ」と、職員が急いで洗おうとすると、余計に抵抗が強くなる。

よくある誤解

「お湯が嫌い」「わがままを言っている」と捉えてしまいます。

押さえるべき視点:

感覚過敏と窒息への恐怖 認知症の方にとって、顔に水がかかることは視界が遮られ、呼吸ができなくなる(溺れる)ような恐怖を感じる行為です。また、感覚機能の変化により、適温のお湯でも「熱すぎる」と感じたり、冷えた体に急にお湯をかけられることで強いショックを受けることがあります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

顔に湯がかかることは、視界が遮られる、呼吸がしづらい、目や耳に水が入るなどの恐怖を感じる行為である。洗髪前にタオルで目と耳を押さえる、シャンプーハットを使うなどの工夫をする。また、いきなりお湯をかけられると実際以上に温度を高く感じてしまうため、足元からゆっくりとかける配慮が必要である。

この章のまとめ文章 拒否行動の多くは、本人の性格の問題ではなく、認知機能の低下による「不安」や「恐怖」、羞恥心から自分を守ろうとする「防衛反応」です。表面的な行動に惑わされず、その裏にある心理的・身体的な理由を理解することが、解決への第一歩です。

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なぜ「拒否」が起きるのか?そのメカニズムを知る

女性の介護職員の画像

現場では、何度説明しても拒否されたり、急に怒り出されたりすると、つい「性格が変わってしまった」「意地悪でやっているのではないか」と感じてしまうことがあるかもしれません。忙しい業務の中で理不尽な対応をされれば、そう感じてしまうのは人間として当然の反応です。しかし、その行動には、脳の病気としての明確な理由メカニズムが存在しています。

「認知機能の低下」が引き起こす不安と混乱

入浴や排泄の失敗、拒否といった行動の背景には、必ず認知機能の状態が関係しています。認知症の中核症状である記憶障害見当識障害(時間や場所がわからなくなる)、失認(対象を正しく認識できない)などが影響し、生活上のさまざまな課題を引き起こします。

たとえば、「お風呂に入りましょう」と言われても、その言葉の意味が理解できなかったり、そこがどこで何をされる場所なのか認識できなかったりすれば、誰でも不安混乱を感じます。

介護の基本は、目の前の「困った行動」だけを見るのではなく、その背景にある認知機能障害が生活にどう影響しているかを理解することから始まります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

認知症高齢者の生活は、中核症状である認知機能の低下によって色々な課題が生じる。食事を食べない、入浴しない、廊下で放尿するといった行動の背景には、記憶障害、見当識障害、失行、失認、実行機能障害などの認知機能の状態が少なからず関係している。まずは認知機能の状態をよく理解し、生活にどのような影響を及ぼしているかを把握することが最も基本的で重要である。

拒否は「自分を守る」ための必死の抵抗

周辺症状(BPSD:行動・心理症状)と呼ばれる暴言や拒否は、本人の性格だけで起きるものではありません。中核症状があるために抱えることになる心理的なストレスや、周囲の環境を本人がどう感じたかによって現れる行動です。

特に、理解力が低下している状態で、自尊心を傷つけられたり、子ども扱いされたり、自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさを感じたりすると、それが強い不安不快感となります。

その結果、自分を守ろうとする防衛反応として、拒否や攻撃的な行動が現れるのです。彼らは決して介護者を困らせようとしているのではなく、不安や恐怖の中で必死に抵抗しているのだと捉える視点が必要です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

周辺症状は、中核症状があるために抱える心理的ストレスや、周囲の対応・環境を本人がどう感じ捉えるかによって現れる。

厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

認知症による心理的特徴として、能力低下や周囲の変化に対する不安や戸惑い、子ども扱いされることによる自尊心の傷つき、自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさなどがある。

不適切なケアが「BPSD」を作っている可能性

現場ではショッキングな事実かもしれませんが、不適切なケアがBPSD(行動・心理症状)を悪化させたり、作り出したりしている可能性があります。これを「作られたBPSD」と呼びます。

利用者の不安や不快感に対し、介護者が急かしたり、命令したり、無視したりといった対応をとると、利用者のストレス不安はさらに増幅します。この悪循環が、さらなる拒否や暴言を引き起こし、結果として人間関係を壊してしまいます。

「認知症だから仕方ない」と片付けるのではなく、私たちの言葉かけ態度、あるいは不快な環境が、その行動を引き起こしているのではないかと振り返る姿勢が不可欠です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

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大きな声を出したり怒鳴ったりする行動も、介護者や周囲が無意識にとっている言葉かけや対応によって影響を受けている場合がある。「認知症だから」と安易に決めつけず、介護者の態度や言動を振り返り、その影響から起こっている行動・心理症状かもしれないと考えることが不可欠である。

厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

「作られたBPSD」として、不適切なケアが利用者の不快・不安・ストレスを高め、それがBPSDとして現れる悪循環がある。これは知らず知らずのうちに人間関係を壊していく。

この章のまとめ文章 拒否や抵抗は、脳の機能低下による「不安」や、不適切なケアに対する「悲鳴」かもしれません。行動の裏にある「理由」を理解し、こちらの関わり方を変えることで、驚くほど状況が改善することがあります。

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現場の「どうしよう?」に答える Q&A

ここでは、マニュアル通りにはいかない現場のリアルな悩みについて、エビデンスに基づいた解決のヒントをQ&A形式でまとめます。

Q
どうしても入浴してくれません。業務時間も押しているのですが、諦めてもいいのでしょうか?
A

はい、無理強いしてまで入れる必要はありません。 「清潔保持」と「リラックス(快感情)」の両方が達成できない入浴介助は、絶対にやめるべきだとエビデンスでも示されています。無理やり入れることは、虐待に近い恐怖を与え、信頼関係を壊し、次回以降の拒否をさらに強固にしてしまいます。 「今日は清拭(体を拭く)だけでOK」「足浴だけしてみる」と目標を下げたり、時間をずらして再度声をかける柔軟な対応が、長期的には業務負担を減らすことにつながります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集 https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

清潔保持と心身のリラックス、この2つの目的を同時に達成できない介護は絶対にやめるべきである。無理強いせず、清拭や足浴など段階的に働きかけたり、時間を変え、人を変えてトライすることを勧める。

Q
ご家族から「必ずお風呂に入れてください」と強く要望されています。どう説明すればいいですか?
A

「無理強いが逆効果になること」を伝え、代替案を共有しましょう。 ご家族は「お風呂に入らない=不潔、ケア不足」と心配されていることが多いです。しかし、嫌がっているのに無理に入れることで、「介護への抵抗」や「BPSD(暴言・暴力)」が悪化するリスクがあることを説明する必要があります。 「今日はご本人の不安が強いため、無理強いをしてお風呂嫌いにならないよう、体を拭く対応に切り替えました」と、プロとして「入浴しない選択」をした理由と、清潔は保っていることを伝えて安心してもらいましょう。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

入浴してもらいたいがために無理強いした誘導は、その後のケアにも大きく悪い影響を与える。家族の口添えをもらうことで納得してもらえることもある。

厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

不適切なケアは、知らずしらずのうちに人間関係を壊し、「作られたBPSD」を引き起こす原因となる

Q
「体重を測る」と言って浴室に連れて行くのは「嘘(だまし)」になりませんか?
A

本人が自然に納得できる「目的の変換」であれば、有効なケア技術です。 明らかに事実と異なる嘘をついて騙すことは倫理的に問題ですが、「入浴」という言葉や手順が理解できずに混乱している場合、「体重測定」や「着替え」など、衣服を脱ぐ必然性のある行為へ目的を置き換えることは推奨されています。 これは騙しているのではなく、本人が理解できる・納得できる理由を提示して、恐怖心を取り除くための専門的なアプローチです。

出典元の要点(要約)

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初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「薬を塗りたい」「体重を測りたい」など、衣服を脱ぐことが自然に行える声かけを工夫する。ごまかしの対応は倫理的観点から認められないことを理解したうえで、本人の能力を見極め、ほかに方法がない時にのみ許される場合がある。

この章のまとめ文章 現場の判断に迷ったときは、「それをすることで、利用者は快い気持ちになるか? それとも不快になるか?」を基準にしましょう。清潔にこだわるあまり不快感を与えるよりも、一時の清潔を諦めてでも「安心」を守る方が、認知症ケアとしては正解です。


まとめ:入浴拒否は「関係性を見直す」チャンス。「急がば回れ」がケアの鉄則

毎日の業務の中で、一人ひとりに時間をかけて向き合うことは、現実には非常に難しいことだと思います。しかし、焦って無理強いをすればするほど、利用者の恐怖心は強まり、結果として拒否が長期化して介護者の負担も増えてしまうという悪循環に陥ります。

今回紹介したエビデンスが示しているのは、「急がば回れ」という認知症ケアの真実です。 一時の清潔さよりも、利用者との「信頼関係」「安心感(快感情)」を優先すること。それが、遠回りのようでいて、実は最もスムーズなケアへの近道です。「今日は入れなかったけれど、嫌な思いはさせなかった」と割り切ることも、立派な専門職の判断です。

明日からできる「小さな一歩」

記事の内容をすべて実践する必要はありません。まずは無理なく試せそうなことを、一つだけ選んでみてください。

「お風呂」と言わずに誘ってみる

「体重を測りましょう」「着替えましょう」など、ハードルの低い言葉に変えてみる。

断られたら「引く」勇気を持つ

粘って説得するよりも、「じゃあ、また後で来ますね」と笑顔で引き下がり、タイミングを変える。

うまくいった時の「記録」を残す

「誰が、いつ、どう誘ったらうまくいったか」を記録し、チームの成功パターンとして共有する。

利用者の「イヤ!」という言葉は、あなた個人への攻撃ではなく、不安や恐怖からのSOSです。その背景にある理由を一つでも理解できたなら、あなたのケアはすでに変わり始めています。 まずは深呼吸して、焦らず、ご本人のペースに合わせてみることから始めてみましょう。



更新履歴

  • 2025年12月4日:新規投稿

免責・安全配慮について

本記事は一般的な情報提供を目的としております。医療的な診断・治療を意図したものではなく、症状が悪化したり、急変した場合は必ず医療機関をご利用ください。

急を要する場合は 消防庁「救急車の適切利用」案内 をご参照のうえ、ためらわずに救急車をご利用ください。

個人の体質・状況により効果や経過が異なります。情報は執筆時点のものであり、その後の研究や指針の変更等で内容が古くなることがあります。

ご心配な点や判断に迷う際は、かかりつけ医や 地域包括支援センター(厚生労働省案内) など、専門の相談窓口にご相談ください。
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