夕方になると「早く帰らなきゃ」「子どもが待っている」と落ち着かなくなる利用者さんにどう対応すればよいか、悩んでいる方はいらっしゃいますよね? 否定も説得も通じず、不安や帰宅願望が強まる時間帯——その連続に疲れてしまうことも少なくありません。
厚生労働省のガイドラインでは、こうした現象は認知症のBPSDの一局面とされ、まず非薬物介入を第一選択としています。ここでは、その方針に沿って現場で使える声掛けの標準を整理します。
結論として、夕暮れ症候群は、主に脳の睡眠覚醒リズムの乱れ(体内時計の変化)に夕方の環境要因や残存する役割意識が重なって起こる可能性が指摘されています。そのため、夕方帯に症状が目立つ現象だと理解できます。
厚生労働省の調査研究報告書では、夕方や夜に不穏が増える傾向が示されており、この時間帯に適した否定しない・受容・安心・転導という一貫した声掛けが有効だと整理できます。認知症介護研究・研修センターの資料でも、帰宅願望への対応として否定を避け、安心を伝え、自然な転導を行う視点が強調されています。

💡この記事を読んで分かる事
厚生労働省のガイドラインでは非薬物介入を第一選択とされています。この記事では、認知症の夕暮れ症候群に対して、否定しない・受容・安心・転導を核にした声掛け5選を、現場で即実践できる形で提示します。あわせて評価→介入→再評価の流れと、環境調整の基本も明確にします。
🔷結論:「夕暮れ症候群は“否定しない・受容・安心・転導・環境調整”で和らぐ」
夕方に帰宅願望や不安が強まり、否定も説得も届かない場面で困っていませんか。ここでは公的エビデンスに基づく結論と、現場で実装できる基本手順を端的に示します。

🔶結論の要点
夕暮れ症候群は認知症のBPSDの一局面です。非薬物介入を第一選択とし、否定しない・受容・安心・転導を柱に環境調整(照度・騒音・動線)を組み合わせます。薬物は必要時のみ専門医と連携して慎重に扱い、チームで統一した声掛け台本を運用します。運用は評価→介入→再評価のサイクルで定着させます。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSD対応の基本として非薬物介入を第一選択に位置づけ、環境調整やケアの見直しを優先。薬物療法は必要最小限・短期・専門連携・減量や中止の検討を明記し、現場実装の標準を示す。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶すぐにやること(解決方法)
交代前に照度を上げ影を減らし、共用部の騒音を抑制します。玄関・廊下の動線を整理し、声掛けは『否定しない→…→自然な転導』という共通方針をチームで共有し、表現や言い回しは本人に合わせて調整します。落ち着きや安心につながる日常的活動(例:写真を一緒に見る、簡単な家事様式の活動など)へ自然に転導します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
認知症・せん妄の評価とケアの標準手順を整理。環境調整、わかりやすい説明、安心の提供など非薬物的対応を中心に、評価→介入→再評価の運用を推奨。現場の基本実装に適する。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶根拠の位置づけ
厚生労働省の調査研究報告書には夕方・夜に不穏が増える傾向が示されます。夕方は環境ストレスが重なる時間帯であり、現場の体感と量的データが合致します。したがって、人員配置・環境調整・台本運用を夕方帯前提で設計することは合理的です。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
家族等の支援ニーズとBPSDの出現状況を分析。時間帯別不穏の傾向として夕方・夜の増加が示され、夕方帯のケア設計(見守り・刺激調整・情報共有)の必要性を裏づける量的資料となる。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
夕方の山は構造的に起きやすい現象です。非薬物介入を第一選択という標準をチーム全体で共有し、今日から小さく確実に回せる手順へ落とし込みましょう。
🔷事例:「現場で起きやすいケース3選」
夕方の“山”は毎日同じ時間に訪れがちです。ここでは公的エビデンスに沿って、現場で頻出する3つのケースと再現性のある対応を端的に整理します。

🔶ケース1:送迎前に帰宅願望が強まり玄関へ向かう
対応は、最初に否定しないで気持ちを受け止め、次に安心の提示(「ここで一緒にいます」)。続けて、写真や温かい飲み物などで自然な転導を行います。声掛けはチームで統一フレーズを使い、実施後は反応を記録して評価→介入→再評価に接続します。
※エビデンス
認知症介護研究・研修センター(東京)
帰宅願望場面における認知症ケアの考え方
帰宅願望の場面では、否定を避け、安心を伝え、日常的な活動への転導を重視する視点を整理。本人の不安の背景と対応順序(受容→安心→転導)を具体例で示し、チームでの一貫した対応を促す資料。
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/228/s_h25kaigokaisetsu_04.pdf
🔶ケース2:配膳前のざわつきと拒否が高まる
配膳直前は刺激が増えます。交代前に照度を上げて影を減らし、騒音を抑制。さらに箸並べなど小さな役割付与で関心を前向きに切り替えます。実施した環境調整と声掛けの組み合わせを記録し、翌日に再評価して調整します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
認知症・せん妄のケアは非薬物的対応を基盤に、環境調整(照明・静穏化)や分かりやすい説明、安心の提供を組み合わせることを推奨。介入は記録し、評価→介入→再評価のサイクルで最適化する実務手順を提示。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶ケース3:薄暗い廊下で人影を誤認して不安になる
夕方の薄暗さは誤認を招きます。早い時間から照度を確保し影を減らし、静かな場所へ安全に誘導。見守りの強化と短い説明で安心を支えます。時間帯の山を前提に、人員配置と環境調整を夕方仕様で設計します。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
時間帯別の不穏傾向に関する量的データを提示。夕方・夜に不穏が増える傾向が確認され、夕方帯を前提にした見守り強度、照明・静穏化など環境調整、情報共有の必要性を裏づける基礎資料。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
夕方の不穏は構造的な時間帯リスクです。否定しない・受容・安心・転導・環境調整をチームで統一し、毎日の記録と再評価で小さく確実に改善していきましょう。
🔷理由:「夕方に不穏が強まり、声掛けが効く構造的背景」
夕方は環境変化と疲労が重なる時間帯です。ここでは量的根拠とケア原則を整理し、なぜ非薬物介入が要なのかを、現場で使える理解に落とし込みます。

🔶時間帯要因と量的根拠
厚生労働省の調査研究報告書には、夕方・夜に不穏が増える傾向が示されています。夕方は照度低下、騒音・動線の混雑、日中の疲労が重なりやすく、環境調整の優先度が高まります。データに基づき、夕方帯を前提とした見守り強度と刺激設計を行うことが合理的です。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
家族等の支援ニーズとBPSDの出現状況を分析。時間帯別の不穏傾向として夕方・夜の増加を示し、夕方帯の見守り・照度・静穏化・情報共有などの設計根拠を提供する。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
🔶ケアの原則(非薬物優先)
厚生労働省のガイドラインでは、BPSD対応の基本は非薬物介入を第一選択とされています。まず環境やケアの見直し、関わりの質を整え、薬物は必要時のみ。評価→介入→再評価の運用を軸に、少量・短期・専門連携で慎重に進めます。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
非薬物介入を最優先とし、薬物療法は適応の吟味、低用量開始、短期使用、減量・中止の検討、専門医連携を明記。現場での標準的な判断枠組みを提供。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶帰宅願望と残存記憶(役割意識)
帰宅願望には、残存する長期記憶や役割意識が関与します。受容的な関わりで不安を和らげ、自然な転導へつなげる構えが有効です。否定しない・安心を伝える順序をチームで共有し、同じ台本で対応すると安定しやすくなります。
※エビデンス
認知症介護研究・研修センター(東京)
帰宅願望場面における認知症ケアの考え方
帰宅願望場面の評価と関わり方を整理。否定回避、安心提供、日常的活動への転導を重視し、対応の順序と留意点を提示。チームでの一貫対応を後押しする資料。
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/228/s_h25kaigokaisetsu_04.pdf
🔶せん妄・身体要因の並行評価
夕方の不穏には、疼痛・脱水・感染・便秘などの身体要因やせん妄が重なることがあります。国立長寿医療研究センターのマニュアルでは、非薬物的対応と同時に、簡潔な評価を併走させる手順が示され、再評価で微調整していく運用が推奨されています。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
認知症・せん妄の評価とケア手順を体系化。環境調整・説明・安心提供などの非薬物介入と、身体要因の評価を併行し、評価→介入→再評価で最適化する方法を示す。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶多職種連携と情報共有の効果
チームで統一した声掛けと環境対応は、個々の反応にばらつきを生みにくくします。東京都健康長寿医療センター研究所の報告では、非薬物的対応を多職種で共有し、家族からの生活歴情報を活かす仕組みが、BPSD緩和に資すると整理されています。
※エビデンス
東京都健康長寿医療センター研究所
BPSD緩和のための非薬物療法・対応
非薬物的介入の意義と、多職種連携・家族との情報共有の重要性を解説。生活歴の活用や一貫した対応の枠組みが、BPSD緩和に結びつくことを整理する。
https://www.tmghig.jp/research/info/cms_upload/2d4b69d315fce4fd32398eb3f18ecfd6.pdf
夕方の“山”は時間帯リスクと本人要因の重なりで生じます。非薬物介入を第一選択に据え、チームで統一した台本と評価→介入→再評価を回す——この土台づくりが、安定への最短ルートです。
🔷よくある質問:夕暮れ症候群・認知症・声掛け

- Q夕暮れ症候群の対応は、まず何から始めればよいですか
- A
非薬物介入を基本に、夕方前から照度を確保し、騒音と動線を整えます。声掛けは「否定しない→受容→安心→自然な転導」をチームで統一し、介入後は反応を短く記録し、翌日に再評価します。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSDは非薬物介入を第一選択とし、環境調整・関わりの見直しを優先。薬物は適応を厳密に判断し、低用量・短期・減量や中止の検討、専門医連携を明確化。現場運用の標準を示す。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
- Q否定しない声掛けの具体例はありますか
- A
「帰りたい」の訴えに対し、まず気持ちを認めて安心を伝えます(例:「心配ですね。私も一緒にいます。少しここで休みましょう」)。その後、写真や飲み物など身近な活動へ自然に転導します。
※エビデンス
認知症介護研究・研修センター(東京)
帰宅願望場面における認知症ケアの考え方
帰宅願望場面の評価と対応順序を整理。否定を避け、安心の提供と日常的活動への転導を重視。チームで一貫した声掛けを運用する視点を提示し、実践に落とし込みやすい。
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/228/s_h25kaigokaisetsu_04.pdf
- Q夕方に不穏が強まるのは本当に多いのですか
- A
時間帯別の傾向として、夕方・夜に不穏が増えるデータがあります。夕方は照度低下や刺激増加、日中の疲労が重なりやすく、ケア計画を夕方仕様で設計する合理性が示されます。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
家族等の支援ニーズとBPSDの出現状況を分析。時間帯別に不穏の偏りを提示し、夕方・夜の増加傾向を示す。夕方帯の見守りと環境調整、情報共有の必要性を裏づける量的根拠。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
- Q薬物療法はいつ検討しますか
- A
非薬物介入で十分に改善が得られず、苦痛や危険が持続する場合に限り、専門医と連携して慎重に検討します。適応の吟味、低用量開始、短期運用、減量・中止の見直しを徹底します。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
非薬物優先の原則を明確化。薬物は適応を厳格に評価し、用量・期間・副作用に注意。連携体制の下で開始し、減量・中止を含む再評価を行う枠組みを提示。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
- Qせん妄や身体要因の確認はどのように進めますか
- A
疼痛、脱水、感染、便秘、薬剤の影響などを簡潔に点検し、必要に応じて医療へ連携します。評価→介入→再評価の流れを保ち、環境調整と並行して確認します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
認知症・せん妄の評価とケア手順を体系化。環境調整・説明・安心提供などの非薬物介入に加え、身体要因の点検を併走させ、評価→介入→再評価で最適化する実務プロセスを示す。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔷まとめ:「統一台本と環境調整で、夕方の山を低くする」
夕方の不穏は時間帯リスクと本人要因が重なって生じやすい現象です。対応は非薬物介入を第一選択とし、否定しない・受容・安心・転導・環境調整をチームで統一運用します。小さく始め、評価→介入→再評価を回すことで、夕暮れ症候群に伴う不安や帰宅願望を安定化しやすくなります。
🔶本記事の要点整理
夕暮れ症候群への対応は、夕方前からの照度確保、共用部の静穏化、玄関・廊下の動線整理を基盤に、否定しない・受容・安心・転導の順で声掛けを同一フレーズで実施します。薬物療法は必要時のみ専門医と連携し、短期・低用量・減量や中止の見直しを徹底します。夕暮れ症候群・認知症・声掛けの実装は、チームの一貫性が鍵です。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSD対応の基本として非薬物介入を優先し、環境調整・ケアの見直しを前提に、薬物は適応の吟味、低用量、短期、減量・中止の検討、専門連携まで手順を明確化。夕暮れ症候群を含む行動・心理症状対応の標準となる。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶今日からの実装ステップ
まず「夕方前チェック」を固定化します。①照度を上げる、②静穏化(テレビ音・通行量の調整)、③動線整理、④共通台本の最終確認、⑤転導の定番(写真・飲み物等)の準備。介入後は反応を短く記録して翌日の再評価に必ずつなげます。夕暮れ症候群・認知症・声掛けの一体運用で、再現性を高めましょう。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
非薬物的対応(環境調整・説明・安心の提供)と、身体要因・せん妄の並行評価を体系化。評価→介入→再評価で微調整する実務プロセスを提示し、日常運用への落とし込みを支える。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶データに基づく時間帯設計
夕方・夜に不穏が増える傾向が示されており、夕方帯を前提に人員配置・見守り強度・刺激設計を組み立てることが合理的です。夕暮れ症候群・認知症・声掛けの計画は、量的根拠を背景に調整します。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
家族等の支援ニーズとBPSDの出現状況を分析し、時間帯別の不穏傾向として夕方・夜の増加を提示。夕方帯の見守り・照度・静穏化・情報共有の必要性を裏づける量的根拠となる。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
出典:
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
厚生労働省
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323589.pdf
認知症介護研究・研修センター(東京)
帰宅願望場面における認知症ケアの考え方
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/228/s_h25kaigokaisetsu_04.pdf
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2025)
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
東京都健康長寿医療センター研究所
BPSD緩和のための非薬物療法・対応
https://www.tmghig.jp/research/info/cms_upload/2d4b69d315fce4fd32398eb3f18ecfd6.pdf