見当識障害の入居者から同じ質問が何度も続き、丁寧に答えてもまたすぐ尋ねられ、とくに勤務終盤ほど心がすり減っていると感じている方、いらっしゃいますよね?
見当識障害の入居者から同じ質問が繰り返されるたびに、丁寧に答えても気づけば心がすり減っている。終わりが見えない対応に、勤務交代前後や夕方の時間帯ほど負担が増す。そのしんどさは、多くの現場介護士が共有する実感ではないでしょうか。
結論:見当識障害による反復質問は、否定しない姿勢で受け止め、安心を言語化し、環境の手がかりを整え、チームで対応を統一することで、介護士の疲弊を抑えつつ安定対応が可能になります。これは、「BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(厚生労働省)」で非薬物的介入の優先が示されていること、「認知症・せん妄ケアマニュアル(国立長寿医療研究センター)」で現実見当づけや環境調整が示されていること、「意思決定支援ガイドライン(厚生労働省)」で本人の意思を尊重する関わりが示されていることに基づきます。

💡この記事を読んで分かる事
「認知症の反復質問に対し、介護士が現場で再現できる声かけ・傾聴・環境整備の手順」を、エビデンスを根拠に整理します。「認知症ケアのガイドラインでは、否定を避けて安心を与える関わりと環境調整を先行させる」と言われています。
🔷結論:見当識障害の反復質問には「否定しない・安心を言語化・環境の手がかり・統一対応」を実行する
同じ質問が続く場面で介護士が疲れにくくするために、非薬物的介入を起点に、短く一貫した声かけと見やすい環境、そしてチームでの統一を結論として示します。

🔶否定しない受け止め
反論や訂正を先行させず、まず不安の受け止めを基本に据えます。非薬物的介入を優先し、短く同一のフレーズで安定して応答します。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSDへの初期対応として非薬物的介入の優先と家族・介護職との協働が示され、薬物は必要時に限定し低用量から開始し、効果と副作用を評価する枠組みを提示する。非薬物的介入の先行により、介護現場の負担軽減と安全性の両立を図る。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶安心を言語化する
「ここは安全です」「私はそばにいます」など安心の言語化を、短文かつ同じ言い回しで繰り返します。一貫性が入居者の安定につながります。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
現実見当づけを含む非薬物的ケアとして、短く分かりやすい説明、安心を与える声かけ、視覚情報の活用を体系化。言語・非言語の両面で安定したコミュニケーションを行う重要性が整理されている。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶環境の手がかりを整える
時計・カレンダー・予定ボードなど視覚的手がかりを見やすく配置し、席や動線を固定します。同じ場所・同じ表示が反復質問の減少に寄与します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
大きく見やすい時計・カレンダー、予定掲示、眼鏡や補聴器の適正使用など環境調整の基本を提示。継続的に同じ手がかりを示す一貫性が見当識の補助に有効である点をまとめている。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶チームで統一対応にする
フレーズ・提示物・誘導手順を統一対応とし、記録で共有します。同じ言葉・同じ手順が本人の安心と職員の負担軽減を両立させます。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018年)
本人の意思・選好を尊重し、関係者が継続的に支援する体制を示す。わかりやすい説明、環境整備、情報共有の手順が整理され、チームで一貫性を保つ重要性が示されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
以上の結論は、エビデンスに基づく非薬物的介入の先行と一貫性のある関わりで、入居者の安心と介護士の疲弊軽減を同時にめざす指針です。次セクションで再現性の高い手順を具体化します。
🔷事例:よくあるケースで確認する——「否定しない・安心の言語化・視覚的手がかり・統一対応」
夕方や交代前後など、同じ質問が続いて疲れやすい場面を想定し、否定しない関わりと安心の言語化、視覚的手がかり、統一対応の流れを具体化します。

🔶夕方に「家に帰れますか?」が続く
対応の起点は否定しない受け止め。短い同一フレーズで安心の言語化を行い、「ここは安全」「私はそばにいます」を一貫して伝えます。環境は早めに明るさを確保し、視覚的手がかり(時計・カレンダー・予定掲示)を見やすく保ちます。チームで同じ言い回しを共有し、統一対応で揺らぎを減らします。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSDの初期対応として非薬物的介入の優先、家族・介護職との協働、必要時のみ薬物介入という枠組みを示す。現場では環境やコミュニケーションの調整を先行し、安全と負担軽減の両立を図る。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶食後に「薬はもう飲みましたか?」を繰り返す
安心の言語化を短文・同一表現で繰り返し、指差しなどの非言語も合わせます。視覚的手がかりとして「服薬済」の明示(掲示・ボード等)を用意し、席や保管位置を一定に保ちます。記録に残して勤務間で統一対応を維持します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
現実見当づけ、短く分かりやすい説明、視覚情報の活用、眼鏡・補聴器など感覚支援、環境の一貫性といった非薬物的ケアを体系的に整理。反復場面での安定した伝え方の重要性を示す。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶夜間に「今は何時?ここはどこ?」が続く
落ち着いた声量で否定しない姿勢を保ち、決めておいた順序で短い安心させる言葉を伝えます(例:現在の時刻→ここがどこか→自分(介護者)がそばにいることを伝える)。枕元に視覚的手がかり(見やすい時計・カレンダー)を整え、夜勤帯でも同じ導入文と手順で統一対応します。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018年)
本人の意思・選好を尊重し、わかりやすい説明と環境整備、関係者での継続的な情報共有を重視。チームで一貫性を保つ対応が安心につながることを手順として示す。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
以上のケースは、非薬物的介入を起点とした「同じ言葉・同じ場所・同じ手順」で対応の揺らぎを抑える実装例です。次のセクションで、再現しやすい文例と配置の要点を整理します。
🔷理由:なぜ見当識障害で反復質問が起きるのか――介護士が押さえるべき背景
繰り返される問いの背後には、時間見当の崩れ、不安の高まり、そして環境・対応の不一致が折り重なっています。エビデンスに基づき、介護士が理解すべき要点を整理します。

🔶時間見当の崩れが先行しやすい
見当識は時間→場所の順で揺らぎやすく、夕方など環境が変化する時間帯に混乱が強まります。短い同一フレーズでの説明と、見やすい視覚的手がかり(時計・カレンダー・予定掲示)が理解を助けます。一貫性を保つことが、反復質問の増幅を抑える土台になります。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
時間・場所の混乱に対し、現実見当づけ、短く分かりやすい説明、時計・カレンダー・予定掲示など視覚情報の活用、感覚器具の適切使用を示す。一貫性の維持が安定化に有用と整理。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔶不安が反復を駆動するため、非薬物的介入を起点にする
反復質問は不安の表出として現れます。初期対応は非薬物的介入の優先を起点に、家族・介護職と協働して環境とコミュニケーションを整えます。薬物は必要時に限定し、低用量開始と効果・副作用の評価を行います。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSDの基本対応として非薬物的介入の先行、多職種・家族との協働、原因評価の徹底を提示。薬物は重症時に限定し、低用量で開始し効果と副作用を観察、可能な限り減量・中止を検討する枠組みを示す。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
🔶一貫した環境とチーム対応が安心の土台になる
同じ言葉・同じ手順・同じ表示をチームで共有し、継続的な支援を行うことで不安が軽減します。わかりやすい説明と情報共有が、入居者の安心と介護士の負担軽減を同時に支えます。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018年)
本人の意思・選好を尊重し、わかりやすい説明、環境整備、家族・関係者との継続的な情報共有とチーム支援を位置づける。対応の一貫性が安心の基盤となることを具体的手順として示す。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
以上の背景を踏まえ、非薬物的介入の優先と一貫性の徹底が、反復質問を安定化させ、介護士の疲弊を抑える実践の核になります。次のセクションでは、再現しやすい手順を手早く実装できる形で整理します。
🔷よくある質問:見当識障害の反復質問と介護士の実践
- Q見当識障害で反復質問が続くとき、何回まで答えるべきですか?
- A
回数の上限は示されていません。非薬物的介入を起点に、短く一貫したフレーズで否定しない受け止めを継続します。環境とコミュニケーションを整え、必要性を評価しながら対応を続けます。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
BPSDの初期対応に非薬物的介入を位置づけ、家族・介護職との協働と原因評価を求める。薬物は必要時に限定し、低用量開始と効果・副作用の観察、可能な限り減量・中止を検討する枠組みを示す。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
- Q事実を毎回きちんと訂正した方がいいですか?
- A
強い訂正は避け、現実見当づけを穏やかに提示します。安心を言語化した短文を同じ言い回しで繰り返し、視覚の手がかりと併用して理解を助けます。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
現実見当づけ、短く分かりやすい説明、安心の言語化、時計・カレンダー・掲示など視覚情報の活用、感覚器具の適正使用など、非薬物的ケアの基本を整理。継続的で一貫した関わりの重要性を示す。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
- Q家族から「薬で落ち着かせてほしい」と言われたらどう対応しますか?
- A
非薬物的介入を優先し、環境・コミュニケーションの調整と原因評価を共有します。薬物は必要時に限定し、専門職と連携して低用量開始・効果と副作用の確認を行います。
※エビデンス
厚生労働省
かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)
非薬物的介入の先行と、薬物の適正使用(必要時、低用量開始、効果・副作用の評価、減量・中止の検討)を明確化。家族・介護職と協働して対応方針を整えることを求める。
https://www.mhlw.go.jp/content/001518446.pdf
- Q勤務帯ごとに対応がばらつきます。どう統一すればよいですか?
- A
同じ言葉・同じ手順・同じ表示をチームで共有し、記録で継続します。継続的な支援として、わかりやすい説明と環境整備、情報共有の流れを固定化します。
※エビデンス
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018年)
本人の意思・選好を尊重し、チームで継続的に支援する体制を提示。わかりやすい説明、環境整備、家族・関係者との情報共有を組み合わせ、一貫性を保つ重要性を示す。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
- Q視覚的手がかりは何を整えると効果がありますか?
- A
時計・カレンダー・予定掲示などの見やすい視覚情報を整え、席や動線を一定にします。眼鏡・補聴器の適正使用も合わせ、一貫性を保って提示します。
※エビデンス
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版(2017初版/2025年改訂)
大きく見やすい時計やカレンダー、予定掲示、感覚支援(眼鏡・補聴器)を含む環境調整を提示。同一の手がかりを継続して示すことで、見当識の補助と不安軽減を図る考え方を整理する。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
🔷まとめ:介護士が疲弊しないために——同じ言葉・同じ手順・同じ環境をそろえる
日々の現場で続く反復質問には、非薬物的介入を起点に、一貫した声かけと見やすい環境、そしてチームの統一を重ねることが安定対応の近道です。
🔶今日から統一する3点
① 否定しない受け止め ② 安心を言語化(短文・同一フレーズ) ③ 環境の手がかり(時計・カレンダー・予定掲示)の整備。これらを記録に残し、勤務帯をまたいで同じ運用にします。
🔶記録と共有の最小単位
使用フレーズ、提示した視覚情報、反応の変化を最小限の定型で残し、日勤・遅番・夜勤へ引き継ぎます。同じ言葉・同じ手順が不安の増幅を抑え、介護士の負担を下げます。
🔶エビデンスに沿った運用
方針を厚生労働省のガイドラインと国立長寿医療研究センターのマニュアルに合わせ、必要時のみ医療と連携します。現場判断をエビデンスに接続し、運用の揺らぎを最小化します。
最後にもう一度、「否定しない・安心を言語化・環境の手がかり・統一対応」をチームで反復運用してください。小さな一貫性の積み重ねが、入居者の安定と介護士の安心を支えます。